表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊者は絆を断ち切らない  作者: 唐紅 那智
『銀の少女』
16/53

1-14 本当の自分


「……ったんです」

「ん?」

 セフィがぽつりと何か言ったが、前半が聞き取れなくて聞き返す。また押し黙るかと思いきや、すぐに答えは返ってきた。

「信じられなかったんです」

「何が?」

「ティアさんが…終焉属性だということが」

「ああ…」

 無理もないと思い、ティアは苦笑する。人間扱いされていない、生まれてすぐに殺されるのがほとんどの終焉属性が、大手を振って街の中を歩いてたのだから。

「残念ながら、オレは確かに終焉属性だ。証拠ならホラ、この通り」

 フードを取り払い、銀の目を曝すと、セフィがまた息を呑む。

「口調も、本当はこの通り。改めて自己紹介でもしようか?」

「『ティア』さん…じゃ、ないんですか?」

 どうやら、違う意味に受け取られたらしく、ティアはまた口の端を歪める。

「姓は違う。本当の姓は、『クルストーラ』」

「クルストーラ…?」

 セフィは呟いて何かを思い出すように首を傾げる。

「『レヴィン=クルストーラ』なら知ってるか? 『浄焔のレヴィン』。一応、有名人だしな」

 思い当たったように頷くセフィ。当代最強と名高いレヴィンのことは、やはり知っていたらしい。少しだけ誇らしい気分で、ティアは告げた。

「一応、オレの師匠にして養い親だよ。…オレの本名は、アストランティア=クルストーラ。闇と終焉の魔戦士」

 そう自己紹介すると、セフィは視線を彷徨わせて黙った。そして、ぽつりと言う。

「……どうして…」

 躊躇って、口に出して、それで言葉を止める。何が言いたいのか、はっきりとは解らないが、ティアは何となく予想がついた。

「何が『どうして』だ?

 どうして隠してたのか? どうしてここにいるのか? それとも…どうして生きてるのか?」

 口調は、自分でも意外なほどに穏やかだった。言っていて腹が立つこともない。いい加減度胸も据わってきたのか、と、少々物悲しいような呆れたような心境になりつつも、続ける。

「隠してた理由は、わかるだろ? 言えるはずないし。名前に関していうのなら、師匠は結構有名だから、かな? 『クルストーラ』の姓を出せば、簡単に師匠に行き着く。そうすれば、自然とオレにも行き着くだろうよ。

 ここにいる理由は、この組織が気に入らないから。目的は変わってない。

 どうして生きてるかって? 目的があるから、生きてるんだよ」

 つらつらと並べた答えに、セフィの顔が少し歪む。この中に言いたいことがあったのだろう。

薄い笑みを浮かべると、目を伏せてティアは歩き出す。

「で? 用がないならどいてよ、セフィ。オレはこの奥に用があるんだ」

 セフィは、動かない。ティアは一息つくと、セフィの横を通り抜けようとして…

「…って、何すんのさ、セフィ!?」

 瞬間、セフィに腕を掴まれた。

(…って、掴む!? 触れるも汚らわしい、ってなるんじゃないのか? 気を使って少し離れてたのに…)

予想外の事態に、掴まれた腕を凝視していると、上から声が降ってきた。

「ひとつだけ、聞かせてください」

 顔を上げると、セフィと視線が交わる。

「…何をだ?」

「さっきの言葉の意味です」

「さっきの、って…?」

「『終焉属性に破壊以外の道を見出すまで、死ねない』というのです」

「ああ…聞いてたのか」

 少々驚きながらも、ティアは凛と宣言する。

「そのままの意味だよ。オレの夢だ」

「そんなこと…不可能でしょう?」

「誰が決めたんだ? そんなこと。オレは、自分で試さないと気がすまない性質なんでね」

 一度は、ティア自身不可能だと諦めかけた。しかし、だからこそ今それはより強い決意として存在している。しかし、セフィは納得できていないようだ。

仕方ない、と、ふと微笑み、そして…

「まあ、普通そんなこと考えないだろうな。でも、オレは……知ってるから」

 そう言って、ティアは口ごもった。それからしばらく躊躇って、覚悟を決めたように口を開く。

「…聞きたいか? 理由」

「え?」

「長い話になる上に、あまり楽しい話じゃない。ほとんどオレの身の上話だ。それでも、聞きたいか? …オレの、理由を」

 セフィは、しばし戸惑うように視線を彷徨わせた後、小さく、しかしはっきりと頷いた。

「…知りたい、です」

「わかった」

そして、ティアは近くの部屋の扉を開く。誰もいない事は気配で確認していた。扉を閉めて気配霍乱の術をかけた上で、ティアは置いてあった椅子に腰掛けた。セフィも、椅子を持ってきて座る。

 思い出す。懐かしい面影を。

「今から、ざっと11年くらい前。オレが物心ついて数年たったころの話だ」


 ティアは思い出す。レヴィンに出会う前の…そして、彼と出会うきっかけとなった事件を。

 そして…あのときは気付かなかった、小さな、しかし驚くべき、あの『奇跡』を……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ