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幸と恵の物語  作者: リンダ


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見えない傷

『幸と恵のものがたり』

 第46話 見えない傷


 昭和二十年八月十六日。


 戦争が終わった翌朝。


 長崎の町には、戦勝を祝う声も、終戦を喜ぶ声もなかった。


 聞こえていたのは。


 負傷者のうめき声。


 家族の名前を呼ぶ声。


 瓦礫を動かす音。


 そして、遠くで何かが燃え続ける音だった。


 戦争は終わった。


 だが、二つの町を襲った惨劇は終わっていなかった。


 広島でも。


 長崎でも。


 一度は助かったと思われた人々が、次々と高熱を出し始めていた。


 傷口から血が止まらない。


 歯茎から出血する。


 皮膚に紫色の斑点が浮かぶ。


 髪が抜ける。


 体から力が失われていく。


 爆風を受けていない者。


 熱線による火傷のない者。


 原爆が落ちたときには、町の外にいた者にまで。


 不可解な症状が現れ始めていた。


 だが、この時。


 その原因を知る者は、ほとんどいなかった。


 一 恵の熱


 寺の本堂。


 臨時救護所。


 龍弥は、恵の手を握ったまま朝を迎えた。


 一睡もしていなかった。


 夜の間。


 恵は何度も目を覚ました。


 水を求め。


 父と母の名を呼び。


 幸の手紙を胸へ抱いた。


 そして明け方。


 再び高い熱を出した。


「恵さん」


 龍弥は、濡らした布を額へ置いた。


「聞こえる?」


 恵のまぶたが、わずかに動く。


「龍弥……さん……」


「ここにおるよ」


「暑か……」


「今、布ば替えるけん」


 龍弥は桶を見る。


 水は、あとわずかしか残っていなかった。


 救護所に運ばれる負傷者は増え続けている。


 水も。


 薬も。


 包帯も。


 何も足りない。


 龍弥は布を絞り、恵の額へ戻した。


「ごめんね」


 恵が、かすかに言った。


「何が?」


「龍弥さん……寝とらん……」


「今は恵さんが寝ると」


「また……大丈夫って……言いよる……」


 龍弥は首を横へ振った。


「大丈夫やなか」


 正直に答えた。


「怖くて、眠れん」


 恵は、ほんの少しだけ笑った。


「それで……よか……」


 二 医師にも分からない


 医師が恵の状態を確認した。


 胸の音。


 脈。


 瞳。


 傷。


 左脚の腫れ。


 皮膚の火傷。


「熱が高いですね」


 龍弥が尋ねる。


「傷が化膿したとですか」


「その可能性もあります」


「薬は?」


 医師は答えに詰まった。


「ほとんど残っていません」


「何かあるでしょう」


「消毒液も足りない」


「解熱剤もありません」


 龍弥は拳を握った。


「なら、どうしたら」


「水を飲ませて」


「体を冷やして」


「できるだけ休ませるしかありません」


「それだけですか」


 医師は、疲れ切った目で龍弥を見る。


「私たちにも、何が起きているのか分からないんです」


 周囲では。


 同じように高熱を出す者が増えていた。


 昨日まで話せた人が。


 朝になると、起き上がれなくなる。


 火傷が軽かった者が。


 急に血を吐く。


 傷がないはずの救護員が。


 体のだるさを訴える。


「同じ爆弾を受けた人たちに」


 医師が呟く。


「何か、これまで見たことのない症状が出ています」


 三 髪の毛


 本堂の隅。


 一人の少女が泣いていた。


 母親が、少女の髪へ触れている。


 指の間に。


 髪の毛が大量に残った。


「お母ちゃん」


 少女が震える。


「髪が抜ける」


 母親は何も言えない。


 もう一度触れる。


 また抜ける。


 少女には、大きな火傷はなかった。


 爆発の瞬間。


 厚い壁の陰にいた。


 助かったと思われていた。


 それなのに。


 数日後。


 高熱が出て。


 歯茎から血がにじみ。


 髪が抜け始めた。


 龍弥は、その姿を見た。


「何が起きとるとですか」


 医師は首を横へ振った。


「分かりません」


 その答えしか返らなかった。


 四 救援に入った人々


 原爆投下のあと。


 長崎市外から、多くの人々が市内へ入っていた。


 救援隊。


 消防隊。


 軍人。


 警察官。


 鉄道員。


 医師。


 看護師。


 家族を探しに来た者。


 知人の安否を確かめるため、瓦礫の町を歩いた者。


 龍弥も、その一人だった。


 爆発の瞬間。


 佐世保にいた。


 熱線も受けていない。


 爆風にも遭っていない。


 だから。


 自分は被爆していないと思っていた。


 だが。


 長崎へ入ったあと。


 龍弥は何度も爆心地に近い地域を歩いた。


 大村家。


 篠田家。


 造船所。


 救護所。


 燃えた建物。


 崩れた工場。


 灰。


 土埃。


 黒い雨で濡れた道。


 水を求めて川へ集まった人々。


 そのすべての中を。


 妻を探して走り続けた。


 誰も。


 そこに目に見えない危険が残っているとは知らなかった。


 五 龍弥の鼻血


 昼前。


 龍弥は、恵へ水を飲ませようとしていた。


 そのとき。


 鼻から血が落ちた。


 恵の頬へ。


 赤い滴。


「龍弥……さん……」


 龍弥は慌てて拭う。


「ごめん」


「血……」


「走り回ったけん」


 鼻を押さえる。


 だが、なかなか止まらない。


 伊藤が近づいた。


「篠田」


「大したことなかです」


「見せろ」


「本当に」


「その言葉ば使うな」


 伊藤は布を渡した。


 龍弥は鼻を押さえる。


「昨日から、体きつくないか」


「寝とらんけんです」


「頭痛は」


「少し」


「吐き気は」


 龍弥は答えなかった。


 伊藤の表情が変わる。


「あるとやな」


「恵さんのそばにおりたい」


「それと、倒れることは別たい」


「離れません」


 龍弥は、はっきり言った。


「何があっても」


 六 伊藤の紫斑


 伊藤もまた。


 腕を負傷した部分とは違うところに、紫色の斑点が現れていた。


 最初は打撲だと思った。


 瓦礫の中を歩き。


 負傷者を運び。


 何度も転んだ。


 その痣だと。


 だが。


 胸元。


 腹。


 脚。


 ぶつけた覚えのない場所へも増えていた。


「伊藤さん」


 原田が気づく。


「それ、何ですか」


「痣やろ」


「多すぎませんか」


「瓦礫の町を歩いたけん」


 伊藤は笑おうとした。


 だが、すぐに咳き込む。


 口元へ当てた布。


 そこに血がついた。


 原田の顔が曇る。


「医者に見せんば」


「今は恵さんが先たい」


「伊藤さんまで倒れたら」


「倒れん」


 原田が睨む。


「大丈夫って言ったら怒りますよ」


 伊藤は、少し笑った。


「お前も同じこと言うとやな」


 七 原田の家族


 原田の妻・紀江。


 長男・英二。


 次男・正三郎。


 三人も高熱を出していた。


 紀江の傷は、なかなか塞がらない。


 英二は腕を骨折していたが。


 それとは別に、歯茎から血が出始めた。


 正三郎は、朝から何度も吐いている。


 原田が家族の救護所へ戻ると。


 紀江が弱い声で尋ねた。


「恵さんは……」


「龍弥君がそばにおる」


「そう……」


「紀江」


 原田は妻の額へ触れた。


「熱が上がっとる」


「皆……同じね……」


「何が」


「昨日まで……話しよった人が……」


 紀江は、隣の布団を見る。


 前日まで生きていた女性が。


 朝には息をしていなかった。


「戦争、終わったとに……」


 紀江の目から涙が流れる。


「何で、まだ人が死ぬと……」


 原田は答えられなかった。


 八 見えない火


 爆弾の火は消えた。


 町を焼いた炎も、少しずつ弱くなった。


 だが。


 人々の体の中では。


 目に見えない何かが、命を壊し続けていた。


 熱線のように熱くない。


 爆風のように音を立てない。


 瓦礫のように目で確認できない。


 だから。


 逃げることもできない。


 避けることもできない。


 どこに残っているのか。


 何に触れてはいけないのか。


 何を飲んではいけないのか。


 誰にも分からない。


 救うために町へ入った人が。


 家族を探した人が。


 負傷者を背負った人が。


 数日後。


 次々と倒れ始めた。


 九 広島でも


 広島でも。


 同じことが起きていた。


 八月六日のあと。


 家族を探しに入った者。


 負傷者を救助した者。


 線路を復旧するため市内へ入った鉄道員。


 水道を直そうとした職員。


 救援物資を運んだ者。


 彼らの中にも。


 高熱。


 倦怠感。


 嘔吐。


 出血。


 脱毛。


 不可解な症状が現れ始めていた。


「爆弾には遭っていない」


「市内へ入っただけ」


 そう話していた人が。


 突然、倒れる。


 藤原重治を探し続けた妻・澄子も。


 何日も機関区跡や救護所を歩いていた。


 身重の体で。


 灰を踏み。


 黒い雨の跡が残る道を通り。


 夫の名を呼び続けた。


 十 澄子の体調


 広島。


 藤原澄子は、救護所の前でふらついた。


「お母ちゃん!」


 長女・美代子が支える。


「大丈夫?」


 澄子は額へ手を置く。


「少し、気分が悪うなっただけじゃ」


「休んで」


「お父ちゃんを探さんと」


「赤ちゃんもおるんよ!」


 美代子の声が強くなる。


 澄子は、大きな腹へ手を置いた。


「分かっとる」


「なら休んで!」


 次女の啓子も、母の袖をつかむ。


 正人は泣きながら父の写真を抱いている。


 澄子は、近くの壁へ座り込んだ。


 鼻から、わずかに血が流れる。


「お母ちゃん……」


 美代子の顔が青ざめる。


「何で血が」


「乾燥しとるけえよ」


「嘘」


 娘には分かった。


 澄子もまた。


 体の異変を隠そうとしている。


 十一 入っただけなのに


 広島の救護所。


 医師は、澄子へ尋ねた。


「八月六日は、どこにいましたか」


「市の外れです」


「爆風は?」


「少し窓が割れたくらいです」


「火傷は」


「ありません」


「いつ市内へ入りました」


「六日の昼過ぎ」


「どこまで」


「広島機関区」


「何日くらい入りましたか」


「毎日です」


 医師の表情が変わった。


 だが。


 その医師にも、確かな説明はできなかった。


「市内に入った人の中にも」


「同じ症状が出ています」


 澄子が驚く。


「爆弾には遭うとらんのに?」


「はい」


「夫を探しに行っただけです」


「分かっています」


「助けに行っただけです」


「はい」


「それで、この子まで」


 澄子は腹へ手を置く。


 声が震える。


「どうなるんですか」


 医師は答えられなかった。


 十二 長崎へ入った救援隊


 長崎でも。


 佐世保から来た救援隊の中に。


 体調を崩す者が増えていた。


 中村浩一も。


 高熱を出した。


「中村君」


 龍弥が声をかける。


「昨日まで元気やったやろ」


「少し、だるいだけです」


「鼻血も出とる」


「疲れですよ」


「俺も同じ症状がある」


 二人は顔を見合わせた。


 爆発のとき。


 二人とも佐世保にいた。


 直接、原爆を受けてはいない。


 それなのに。


 なぜ。


 医師も。


 上官も。


 答えを持っていなかった。


「町の中に」


 中村が呟く。


「何か残っとるとですかね」


 龍弥は、恵を見る。


 もしそうなら。


 妻を探すために歩いた道。


 大村家。


 篠田家。


 救護所。


 すべてが。


 危険だったということになる。


「でも」


 龍弥は言う。


「行かん選択はなかった」


 中村もうなずく。


「はい」


「家族がおったけん」


「はい」


 十三 妻のそばを離れない


 龍弥の熱も上がり始めた。


 伊藤が言う。


「少し横になれ」


「嫌です」


「篠田」


「恵さんが起きたとき」


 声が震える。


「俺がおらんかったら」


「俺が見る」


「伊藤さんも血ば吐いとるやろ」


「まだ動ける」


「俺もです」


 二人は、互いに譲らない。


 原田が間へ入る。


「交代で休んでください」


 龍弥は首を横に振る。


「もう、妻ば一人にせんって決めたんです」


 恵が、薄く目を開けた。


「龍弥……さん……」


「ここにおるよ」


「休んで……」


「恵さんまで」


「倒れたら……怒る……」


 龍弥は、泣きながら笑った。


「分かりました」


「少しだけ休む」


 恵の隣。


 手を握ったまま。


 龍弥は横になった。


 十四 原子爆弾という名前


 この時点で。


 人々はまだ、何が起きたのか正確には知らなかった。


 新型爆弾。


 特殊爆弾。


 一発で町を壊滅させる兵器。


 噂は広がっていた。


「原子の力を使った爆弾らしい」


 そう話す者も現れ始めた。


 だが。


 原子とは何なのか。


 放射線とは何なのか。


 なぜ、爆発後に町へ入っただけの人まで病気になるのか。


 一般の市民には分からない。


 医療関係者にも。


 十分な知識も。


 測定する道具も。


 治療法もなかった。


「毒が残っとる」


「悪い空気を吸った」


「焼けた町の煙にやられた」


「水が腐っとった」


 人々は、それぞれに理由を考えた。


 だが。


 見えない放射線は。


 噂や理解を待つことなく、人々の体を壊し続けた。


 十五 黒い雨の水


 救護所には。


 黒い雨に濡れた者もいた。


 喉が渇き。


 道端の水を飲んだ者。


 井戸水を口にした者。


 川の水を飲んだ者。


 雨水を受けた者。


 その水が安全かどうか。


 誰にも分からなかった。


「水を飲ませて」


 医師は言う。


 だが。


 水そのものが汚れている可能性を。


 当時、どれほどの人が理解できただろう。


 飲まなければ、渇きで死ぬ。


 飲めば、別の危険があるかもしれない。


 選ぶことなどできなかった。


 十六 藤原重治の消息


 広島から。


 新たな名簿が届いた。


 広島機関区。


 八月六日の朝。


 機関区内で亡くなったと推定される職員。


 その中に。


 藤原重治の名が記されていた。


 遺体の確認はできない。


 だが。


 勤務記録。


 目撃情報。


 被害の位置。


 生存者の証言。


 それらから。


 生還の可能性は極めて低いと判断された。


 原田は、その報告を見た。


 長い間。


 紙から目を離せなかった。


「藤原さん」


 勝男を広島で育てた機関士。


 厳しく。


 だが、若い者を守った男。


 勝男も。


 藤原も。


 同じ機関区で亡くなった。


「家族へ」


 山崎が言う。


「伝えんばならん」


 原田は、紙を握った。


「奥さん、もうすぐ出産って」


「ああ」


「三人の子どもも」


「ああ」


「どう伝えるとですか」


 山崎は答えられなかった。


 十七 修司の名


 木村修司の名も。


 生存者の中にはなかった。


 八月六日の朝。


 修繕庫付近。


 若い見習いへ火床の見方を教えていた。


 その後。


 姿を見た者はいない。


 焼けた手で。


 もう一度、鉄道員として生きようとしていた青年。


 母へ。


『怖いですが、生きています』


 と手紙を書いた。


 その直後。


 原爆によって。


 再び命を奪われた可能性が高かった。


 原田は紙へ手を置く。


「一度、戦争に手ば焼かれて」


「それでも生きようとしたとに」


 涙が落ちる。


「何で、また奪うとですか」


 十八 恵へ伝えられない


 恵は。


 幸と勝男の帰りを、まだ待っていた。


「龍弥さん」


「何?」


「戦争……終わったなら……」


「うん」


「汽車……動く?」


「少しずつ」


「幸姉ちゃんたち……帰れる?」


 龍弥は、答えられない。


「原田さんが……迎えに……行く?」


「うん」


 嘘ではない。


 原田は、行けるなら広島へ行くつもりだった。


 だが。


 迎えに行っても。


 連れて帰れる二人はいない可能性が高い。


「帰ってきたら……」


 恵が続ける。


「お姉ちゃん……絶対……文句言う……」


「何て?」


「広島まで……迎えに来るの……遅かって……」


 龍弥は、涙をこらえて笑った。


「言いますね」


「勝男さんは……謝る……」


「はい」


「原田さんは……怒る……」


「はい」


 恵は、幸せそうに目を閉じた。


 龍弥は。


 その夢を壊せなかった。


 十九 救う人まで


 原爆は。


 爆発の瞬間に町を破壊した。


 だが、それだけではなかった。


 爆発後。


 町へ入った人々。


 救援に来た人々。


 家族を探した人々。


 水を運んだ人々。


 瓦礫をどけた人々。


 遺体を収容した人々。


 線路を直した人々。


 彼らの体にも。


 後から症状が現れた。


 救うために入った人が。


 次に救われる側へ回る。


 家族を探しに来た人が。


 その家族と同じ救護所へ運ばれる。


 新たな惨劇が始まっていた。


 二十 知らずに歩いた道


 龍弥は。


 妻を探すため。


 長崎の町を何度も歩いた。


 灰の中。


 瓦礫の中。


 煙の中。


 黒い雨の跡が残る道。


 危険だとは知らなかった。


 知っていたとしても。


 行かなかったとは思えない。


「あのときに戻っても」


 龍弥は伊藤へ言った。


「また長崎へ入ります」


 伊藤が答える。


「俺もたい」


「危険って分かっとっても?」


「ああ」


「恵さんがおった」


「うん」


「父さんと母さんも」


「うん」


「行かん選択はなかった」


 伊藤は、紫色の斑点が増えた腕を見る。


「それでも」


 声が震える。


「助けに来た人間まで傷つける爆弾なんて」


 拳を握る。


「何のために作ったとやろな」


 龍弥は、恵の手を握った。


 答えはなかった。


 次回予告


 爆発の瞬間には、長崎にいなかった龍弥。


 造船所の伊藤。


 佐世保から来た中村。


 家族捜索や救援のため、市内へ入った彼らの体にも異変が現れ始める。


 鼻血。


 高熱。


 紫色の斑点。


 激しい倦怠感。


 だが、当時はまだ、その原因が放射線であるとは分からない。


「妻を探しに来ただけです」


「負傷者を助けただけです」


 救うために町へ入った者たちが、次々と倒れていく。


 一方、広島では。


 夫・藤原重治を探し続けた澄子にも高熱と出血の症状が現れる。


 出産まで、あと二か月。


 三人の子どもたちは、母とまだ生まれていないきょうだいを守ろうとする。


 そして長崎。


 恵は、父と母の死を正式に告げられる。


 さらに原田は。


 広島機関区と鉄道官舎の記録から。


 幸と勝男が、八月六日の朝に亡くなった可能性が極めて高いことを伝えなければならない。


 次回、第47話。


「姉は帰ってこない」


 戦争が終われば。


 汽車に乗って帰ってくる。


 そう信じていた姉の席は。


 永遠に空いたままだった。

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