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CHANGE!  作者: ヒ日
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7


 蓮のドッペルゲンガーは何故、蓮といるところをすみれに見られていたのにも関わらず、消えることがなかったのか。


 最も納得できそうな理由としては、すみれもドッペルゲンガーの一人だから、というものがある。


 彼女もその内の一人なら、確かにドッペルゲンガーがドッペルゲンガーを見たところで消えることはないというのは、完全に納得とまでは言わないとしても、頷ける話だし、今まですみれのドッペルゲンガーが一度も現れなかったことを考慮すると、その点にも辻褄が合っているように思える。


 しかし、この説では、普通にすみれが僕達と会話できていたことには説明がつかない。


 ドッペルゲンガーは、これまでの考察によれば、人間と極力会話をしない生物だったはずだ。実際、菊乃のドッペルゲンガーを捕まえた時も、彼女は一言も発しはしなかった。


 なのに、すみれはずっと僕達と自然に会話をしていた。


 いや、もちろん、菊乃や蓮のドッペルゲンガーが意図的に僕達を無視していた可能性もあるにはある。

ただ、それを抜きにしたとしても、すみれだけではなく、僕にもドッペルゲンガーがいなかったことを考えれば、一概にすみれをドッペルゲンガーとして扱うことはできないし、


 それにこの説に従えば、ドッペルゲンガーのいない僕も、ドッペルゲンガーということになってしまう。


 しかし、では、すみれがドッペルゲンガーでないのなら、何故、蓮のドッペルゲンガーは消えなかったのか。


 ヒントは、消す方ではなく、消される方に隠されていた。


 より具体的に言えば、ドッペルゲンガーによって何が消されて、何が消されないのか、ということだ。


 ドッペルゲンガーに消された人間の情報は、この世界から全て消え失せる。


 その人間の体も、その人に関する記憶も記録も、持ち物も、その人の情報が含まれるものの何から何まで。


 それはひまわりの例でも、蓮の例でも、菊乃の例でもはっきりしていること。


 だけど、その中でたった一つだけ、おかしなことがあった。


 例外が、あった。


 ――すみれがスクショして菊乃に送って見せた、あの蓮からすみれに送られた、LINEのメッセージ履歴を映した写真だ。


 あれを僕は最初、蓮のスマホからすみれのスマホに送られたメッセージを、すみれのスマホでスクショしたものだから、あのスクリーンショットは消えなかったんだと思っていた。


 蓮のアカウントから発せられた、蓮の意思の乗ったメッセージの方が消えたならともかく、それをすみれのスマホで収めた写真であれば、それはあくまですみれのものだから。


 だから、消えなかったんだと、そう思い込んでいた。

 

 だけどよくよく考えれば、そこには違和感がある。

 

 ひまわりが消えてしまったことが発覚した時。

 

 その時僕たちは当然、昔グループみんなで撮った写真や、女子同士で撮った写真、蓮とひまわりのツーショットの写真など、とにかく一ミリでもひまわりが映っていたであろう写真を各々全てチェックした。

 

 しかし、そこにひまわりの姿は、情報は、少なくとも僕のスマホには一つも映っていなかった。


 皆も声を揃えて映っていない映っていないと言っていたはずだ。


 それほどまでにその法則は憎らしいほどに完璧に働いていたはず。


 なのに。


 なのに――蓮の存在が分かってしまうそのスクリーンショットを、その法則が見逃すことがあるだろうか?

 

 あったかもしれない。


 けど、もし、そこに何か理由があるとしたら。


 消えない理由があったとしたら。


 『その持ち主がすみれだったからこそ』、消えなかったんだとしたら。


 ……そして、さっきすみれにスマホを見せてもらったことで、僕は自分の予測が正しかったことを知った。



 ――もし、そもそも既にすみれが、消えたひまわりや蓮や菊乃同様、この世界にいない存在だったんだとすれば、これまで消えたひわまりや蓮、菊乃の写真やLINEのアカウント、電話番号は全て、すみれのスマホに残っているはずだという予測を。



 ……ドッペルゲンガーによって消された人間の情報は全て削除される。この法則はほぼ絶対のはずだ。

しかし、もし、もし、その情報の所有者が、本来いないはずの人間なのだとすれば。


 いないはずの人間がスマホを所有して、そのスマホに消えるべき人間の情報を蓄えていたとしたら。


 その法則は、作用するだろうか?


 無理だと思った。


 なぜならそれは、悪魔の証明に近い。


 いない者をいると決めつけ、その者が持つ情報を削除する。


 存在しない者が持つ、スマホの中にある写真を削除する。


 無理だ。


 物を利用するということは、利用する者がいるということだ。その者がいない以上、その物は利用されているとは言えない。


 さながらドーナツの穴があっても、そのドーナツがなければ、穴は見えないように。


 だからスマホも写真も、それ自体は存在していたとしても、そのスマホを操っていたすみれを発見することができなかったから、その法則は働かなかった。


 写真を保存しているカメラがあっても、そのカメラ自体が見つからなければ、その写真データを破壊することなど、できるはずもない。


 そして、それじゃあ、その存在しない者の正体とはなんなのか。


 これも悪魔の照明みたいになってしまうけれど、仮にすみれがそんな存在しない者だとすれば、それは何なのか。


 第一にやはりドッペルゲンガーという可能性が出てくる。


 だけどそれはさっき否定したように有り得ない、と言うより現実的ではない。


 やっぱり僕にもドッペルゲンガーがいなかったこともあるし、すみれは普通に対話できていた。


 それにすみれがドッペルゲンガーで僕達を消すことが目的なら、何故わざわざ箱根まで僕達が逃げることに賛成したのかも分からない。もっと効率的に消すよう誘導する方法だってあったはずだ。


 では、すみれの正体はなんなのか。


 ドッペルゲンガーではないが、この世に本来存在しないはずの存在。


 本来存在しないのに、生前と同じ姿で、僕たちと話せるような、そんな存在。


 いくら考えても。


 いくら否定しても。


 そんな存在はそれ以外、僕には思いつかなかった。

  

 ああ、そうだ。


 そうなんだ。


 ――佐倉すみれは、幽霊だ。


ご一読ありがとうございました。よろしければ感想などいただけますと幸いです。

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