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「ごめんなさい……私、私のせいで……!」
菊乃が泣いていた。
場所はもう、正直見慣れてしまったとも言える例の病室。
デジタル時計に記されている日付も、もちろん1月1日の午後17時。
そして、ひまわり、蓮と同じように、菊乃もベッドで寝ている誰かに向かい、泣き叫び続けている。
「絶対に、私はもっともっと上手くなる。そして、絶対に最高の物語を書いて、皆と一緒に作ったゲームを×××に届ける!」
蓮と喧嘩している時以外、普段は絶対に冷静な顔を崩さない菊乃が号泣しているところを見て、僕は心を痛めながら、そんな彼女が泣くほどの相手は誰なのか、僕はベッドで寝ているその人物が誰なのか確かめようと、覗き込む。
夕日に赤く照らされた病室。
それとは正反対な、美しいとまで言えるコントラストを描いている、ベッドのヘッドボードの陰に隠れた顔。
その顔を見て、僕は――
「……さね! 累! 起きて! 累!」
ゲームやマンガやアニメなんかで割と見かける、美少女に肩を揺さぶられて起きるという、思春期男子が聞けば肉の骨を前にした犬のように涎を垂らしながら飛びついてくるであろう、そんなシチュエーションで、僕は二日連続起床した。
しかし、昨日とは違うところが一つあって、
「……累! 菊乃が消えちゃった!」
「…………」
僕の肩を掴んでいるのは菊乃ではなく、すみれだという点だ。
眠気眼をこすりながら立ち上がり、僕は部屋を見渡す。
まだ太陽さえ仕事していない早朝。デジタル時計に記されている時間は昨日よりずいぶん早い、午前4時。
すみれの言う通り、一緒に部屋にいたはずの菊乃はおらず、部屋には僕とすみれの二人きりだ。
……けど、そんな大惨事とも呼べる状況にあっても、僕の心の波は凪のままだった。
「……累?」
そんな僕を不審に思ったのだろう。すみれは僕の肩に小さい手をそっと置いて、心配そうにそう問うてくる。
「ねぇ、すみれ」
「何?」
僕は振り返り、そんなすみれに微笑みながら、言った。
「ちょっと、散歩にでも行かない?」
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