核撃魔法と戦友
「コルト、久しぶりの実家はどうだった?」
「それはもう、最高でしたよ。久しぶりに両親の飯を食えて、色んな話をして……」
「そりゃよかった。」
俺とコルトは休暇を終え、軍のバスで戦場へ向かっていた。
ちなみに、ガレスは前回の作戦で負った右腕の負傷の治療をすることになったらしい。
「いやぁ〜もう軍のレーションじゃ満足できない舌になっちゃったかもしれません……」
「それは困るな……戦場に両親を連れてくるわけにもいかないだろ?」
「そんなことしませんよ! それよりアルトくん、少し柔らかくなったというか……少し、士官学校時代を思い出します。」
コルトはバスの窓から外を覗く。
鬱蒼と木々が生い茂る森の中を、バスは大きく揺れながら走る。
空は、少し暗かった。
「士官学校時代は良かったですよ。死の危険なんてなかったですし、今思えばあそこは天国でした。」
「まぁ、そうかもな……」
なぜか、俺の頭にはアリシアのことが浮かんだ。
『第73歩兵部隊、コルト・レイ少尉。歩兵待機キャンプへ到着した。出撃準備をしろ。』
「了解。じゃあ先に武装して待っておきますね。」
コルトはバスから降り、テントへ走っていった。
「あ、あいつ、懐中時計忘れてるじゃん。後で渡すか……」
俺は、コルトが忘れた懐中時計を胸ポケットに入れた。
その後、俺を乗せたバスは、歩兵キャンプから5キロほど離れた後方拠点へ向かった。
「なるほど、了解致しました。」
「では頼むよ、レガリア中尉。」
俺たちの上官は交代になり、モーリスの弟子を名乗る男が務めることになった。
作戦の説明を聞き終えた俺は、テントから出ようとする。
その時、テントに取り付けられていた魔力反応装置が、警報を鳴らす。
【強大な魔力反応、防護壁を展開します。】
テントの周辺5メートルほどに、魔術による透明な壁が出来上がる。
「何事だ!」
上官は叫び、他の隊の隊長が魔導無線で各隊員と連絡を取っている。
俺も、コルトと連絡を取ろうと無線に手をかけた。
その瞬間、凄まじい爆音と衝撃波が、全身を襲った。
テントはいとも簡単に吹き飛び、俺は地面に転がった。
「一体何が……!?」
俺はそこで、衝撃的なものを見た。
歩兵部隊のキャンプから、キノコのような雲が生えていたのだ。
「これは……まさか核撃魔法か……?!」
上官が叫ぶ。
俺も、その魔法の存在は知っていた。
士官学校でその魔術は、自身の魔素を暴走させることで、強力な爆発を起こす魔法だと教えらた。
そしてその魔法は、王国を含める多くの国で禁術として扱われているはずだ。
だが、目の前にあるキノコ雲は、明らかに核撃魔法の跡だった。
「――ッ!? コルトは!?」
無線をコルトに繋げる。だが、コルトからの返信はなかった。
「嘘……だろ……?」
雲は天へ昇ってゆく。
「いや、まだ生きてる……そうだ……」
俺は、キャンプへ向かおうとした。
「やめなさい、レガリア中尉!」
上官が、護衛に俺を邪魔させる。
「なぜ、止めるんですか!」
「あの魔法は魔力汚染を起こす。あなたも習ったでしょう?」
上官は冷静に言い放つ。
「ですが、仲間が!」
「諦めなさい、レガリア中尉。おそらく、助からないでしょう。」
俺は拳を固く握りしめる。
「ですが!」
「勇気と蛮勇は違います。あなたは今、とても愚かな選択をしようとしている。」
「……」
「あなたが生きること、それがあなたの使命です。」
俺は膝をつき、拳を地面に打ち付けた。
なぜなんの罪もないコルトが殺されなければならない!
なぜだ!
なぜ……!
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」
俺は、コルトの懐中時計を握りしめた。




