再会と恋、そして……
「やっほ〜 1年ぶり?」
「1年半ぶりだと思うけど?」
「1年半か。やっぱり時間の流れは早いね〜」
作戦終了に伴い兵士には1週間の休暇が与えられた。
俺はその休暇で、帝都内のとあるカフェである人物と会っていた。
栗色の髪に青緑色に輝く瞳を持つ、彼女の名はアリシア・ノーヴェン。
俺とコルト、ガレスの士官学校時代の同期だ。
「本当に、アルは変わらないな〜」
「それはいい意味と捉えておくよ。」
俺とアリシアは少し、境遇が似ていた。
アリシアは幼い頃に病気で母を、中等学校の頃に事故で父親を亡くし、幼い妹を養うために軍へ志願したらしい。
「コルは元気してる? アルと同じ部隊って聞いたけど……」
「コルトは元気だよ。今は両親に会いに行ってるってさ。」
「へぇ〜 それにしても、アルが歩兵部隊に配属になるなんてね〜」
俺は、魔導師団に入れてもおかしくない魔術適性を持っていた。
士官学校の魔術演習では、なかなかの好成績を出していたし、周りからも魔道士団に入れるだろうと言われていた。
だが、俺は入れなかった。
王国の純血である俺が魔導師団に入ることなど許されていなかったのだ。
「全く、軍は全くわかってないよね!」
「まぁまぁ。あ、そういえば歩兵小隊はガレスも同じ部――」
「あのクソ一匹オオカミの話はやめて。あとあのイキリストーカーの話も。」
「あ〜マルシウス君のこと?」
アリシアとガレスはよく喧嘩していて、犬猿の仲だった。
よく仲裁に入ったコルトが、逆に二人からボコボコにされていたことを思い出す。
あとリディ・マルシウスは簡単に言うと成金貴族の息子で、アリシアのストーカーだ。
「あのストーカー、名前すら聞きたく――」
「やぁ、愛しのマイレディ。そこにいる汚い捨て駒のことなんか捨てて、俺とアフタヌーンティーでもどうだい?」
声のした方に振り向くと、そこには今丁度話していたリディ・マルシウスの姿があった。
アリシアの顔色が急激に変化し、勢いよく席から立ち上がった。
周りの客の視線が、俺とアリシアに向けられる。
その光景だけを見れば、俺がアリシアを怒らせたかのように見えるだろう。
誠に遺憾だ。
アリシアの拳が握り締められ、少し血管が浮き出る。
「ちょっと、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
アリシアは、マルシウスを連れて店から出ていった。
数分後、アリシアがハンカチーフで手を念入りに拭きながら帰ってきた。
そのハンカチーフには血のようなものがついており、俺は何があったかを察した。
野暮なことは聞かないほうがいいだろう。
「おかえり。スッキリした?」
「あいつ……私に殴られて喜んでたわよ……? あんなのが魔導師なんてもうおしまいね。」
マルシウスは一応、魔術適性が同期の中でも1、2番目に高く、第4魔導師団に配属されている。
ちなみに、アリシアは後方で医療部隊と技術開発部隊を掛け持ちしている。
「なんであんな変態が魔導師団で、なんでアルみたいなかっこよくて優しい人が……あっ!」
アリシアはしまったという顔で口を抑え、頬を赤らめる。
「今のはっ、今のは違……くはないけど違うから!」
「ま、まぁ褒め言葉として受け取っておくよ。」
「ンン〜!!」
アリシアが全力で顔を左右に振りながら呻く。
俺は、アリシアを微笑ましく、温かい目で見ていた。
そのまま数分呻き続けたあと、アリシアはようやく冷静さを取り戻し、俺達は店を出た。
「今日は楽しかったよ、アル。」
「あぁ、俺も。楽しかったよ、ありがとう。」
そう言って、俺はアリシアに微笑みかけた。
アリシアは、耳を真っ赤にして後ろを向いた。
「じゃあ、またね。」
「うん、じゃあまた。」
俺達は別れ、逆方向へ歩き出した。
一応、俺もアリシアのことは好きだ。
だが、俺の両親の復讐と、兄を見つけ出すまで、迷惑をかけるかもしれない。
だから、すべてが終われば、俺は……
そうして、俺は空を見上げる。
空は、澄み切った青色だった。
「はぁ……俺も、少し恥ずかしいな……」
次に俺がアリシアと会ったのは、2週間後、コルトの葬式でだった。




