表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REGALIA'S CODE  作者: 素白
3/12

参謀総長と不死身の盾

衛兵に捕らえられ、独房に入れられた俺は、命令違反とブタとの件について、会議に呼び出された。

「アルト・レガリア中尉、だね?」

「はっ!」

この銀髪の軍人が、この軍の参謀総長……

【最優の参謀長】モーリス・ヴァイスマン上級将軍――軍のNo.2だ。

「君の命令違反、そして上官への反逆行為は聞いている。今日はその話をするために来てもらった。」

参謀総長が口を開いた瞬間、場の空気が一気に固まる。

会議に出席している他の幹部も皆、俺の方を睨むように見る。

その顔ぶれは、東部戦線総司令官や参謀本部の幹部など、錚々たるものだった。

まるで、獰猛な狼の群れに睨まれているようなプレッシャーが身を襲った。

「早速だが、君の刑はもう決まっている。」

「はっ!」

降格や謹慎ならまだいい。最悪の場合、反逆行為は極刑になる……

「君の刑は……」

心臓が跳ねる。額に冷や汗が流れ、頬まで伝った。

「3ヶ月の減給のみだ。良かったねぇ!」

参謀総長の声がいきなり和らぎ、場の空気が一気に柔らかになる。

彼の秘書らしき人が、つけられていた手錠を外す。

「なっ……なぜですか?! 私は極刑もあり得る罪を――」

「おや、君は自ら死にたいと?」

参謀総長は、またもや険しい声色になって問う。

「いえ、そういうわけでは……」

「ならいいじゃないか。みんな、彼を責めないでくれよ?」

「わかっております、総長。」

「この会議に出席しているもので、彼を極刑になどと考えている者はおりません。」

会議に参加していた軍の幹部が口を開く。

「ボクはいい部下を持ったなぁ。では、[軍法第2条に則り、会議に出席した者の中で最も権力が高い者、および出席したものの3分の2が賛同したため、アルト・レガリア中尉の刑罰は3ヶ月間の減給のみとする。]いいね?」

「「「もちろんです。」」」

会議に出席していた幹部たちが、一斉に返事をする。

「じゃあ、これでボクは行くよ。」

参謀総長は、会議室の扉に手をかけた。

「ヴァイスマン参謀総長殿!!」

俺は、部屋を去ろうとする参謀総長を呼び止めた。

「おっと、なんだい? レガリア中尉。」

「私は……なぜこんな軽い刑で済んだのでしょうか……?」

「ハァ……」

参謀総長は深くため息を付き、俺の方を向く。

「私も暇ではないのだけれどね……ついて来なさい。」

「はっ!」


俺と参謀総長は、基地の屋上に来ていた。

参謀総長は柵によりかかり、空を眺めながら言う。

「レガリア中尉。」

「はっ!」

「君の両親は、王国出身らしいね。」

参謀総長は振り向き、こちらを見る。

俺は頭を下げ、目線を逸らした。

「君は王国の純血というわけだ……」

参謀総長はこちらに歩み寄り、俺の顔を下から見つめる。

「君は、王国をどう思う?」

その目は、俺だけを見つめていた。

参謀総長の瞳孔に、自分の顔が反射して映る。

「私は……王国を憎んでいます。王国は、両親を……兄を……」

俺は10年前、両親を何者かに殺され、兄と生き別れた。

燃える家と、母の悲鳴だけを薄っすらと覚えている。

両親はもともと王国の人間で、この帝国へ亡命してきたのだ。

きっと、王国は自国の民が敵国に逃げたことを許さなかったのだろう。

両親の死体には、王国の魔法による痕跡が残っていたらしい。

そして、兄は王国に連れ去られた。

その兄を救い、また一緒に過ごすために、俺は軍に志願した。

兄の後ろ姿が思い出される……

俺の声は震えていた。

頬に、涙が伝う。

「なるほど……君は帝国を裏切る気はないと。」

参謀総長は再び空を見上げた。

「はい……私は、帝国軍人ですから。」

俺は、涙を軍服の裾で拭い、答えた。

「安心したよ。君の噂はよく耳にするからね。」

「私の……噂ですか……?」

俺の噂? 王国からのスパイやらなんやらの話だろうか?

そんな根も葉もない噂を参謀総長が信じるとはとても思えないが……

「【不死身の盾】……」

参謀総長が葉巻を懐から取り出し、ライターで火を付ける。

「幾度の戦場を越え、最小限の被害で生還する。君の良い噂はよく耳にするよ。」

「不死身の……盾……ですか。」

「ま、君の噂は悪いものばかりじゃないってわけだ!」

参謀総長は俺にウインクをする。

絶妙にウインクができていないせいで、惨めな顔になっているのは言わないでおこう。

「さて……」

参謀総長は葉巻を口に咥え、ふぅと息を吐く。煙が空へ昇っていった。

「君は仲間の命を守るため、命令に違反した。」

参謀総長が空を眺めながら言う。

「その行動をボクは讃えよう。君は、勇敢でとても優秀な軍人だ。」

まさか、自分がそんなふうに言われているとは思いもしなかった。

「ボクもあのデブブタは嫌いだったしね!」

参謀総長の声色が、急に子供のように幼くなる。

「さ、君にはまだまだ働いてもらうよ!」

「はっ!」

参謀総長が、俺の横を通り過ぎた。

「ボクが、この軍を……そしてこの国を変えるまでね……」

その言葉は今までとは違う、冷え切ったよう声色だった。

「それはどういう――」

「気にしなくていいよ〜」

参謀総長は手を振りながら階段を降りていった。

その後姿に、俺は心からの敬礼をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ