戦後と昇格
「先日は、ありがとうございました!」
ここは軍後方の治療室。
あの時、弾丸を受け止めた俺は、魔力切れにより気を失った。
その後まもなく、援軍が到着し、俺達はここに運び込まれたらしい。
その無茶が祟り、俺は両腕に大怪我を負ってしまったというわけだ。
完治まで右手は1ヶ月、左手は3ヶ月かかるらしい。
「レガリア隊長が、私達を守ってくれたって聞いて……」
「すみません、俺達が不甲斐ないばかりに……」
ノウェルとルイスは、申し訳なさそうに謝る。
「いやいや、全然二人は不甲斐なくなんてないよ。」
「そうでしょうか……本当に実力不足だなって実感しました……」
ノウェルが俯きながら言う。
「ま、まあ! みんな新兵なんだから。隊長の俺がしっかりしてなかったわけだし……」
俺は包帯でぐるぐる巻になっている右手を、小さく振って否定する。
「ねぇ、ノウェル君。隊長ってこんな人だったっけ?」
「俺も、もう少し気難しい人だと思ってた……」
ルイスとノウェルが小さな声で話す。
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです。」
そんな話をしていると、病室の外廊下から、足音が聞こえた。
バァンと大きな音を立て、病室のドアが開かれる。
「おっはよー!アル〜! あ......」
ドアを開けたのはアリシアだった。
ノウェルとルイスの視線が、アリシアに向く。
「あ、こんにちは……」
「えっと……俺達、邪魔ですかね?」
ノウェルが気を利かせて聞く。
「そうだね、じゃあ少し。ごめんね。」
ノウェルはルイスを連れて、部屋から去った。
「で、どうしたの? アリシア。」
「いや、別になんとなく来たかっただけ……」
「そっか。」
心臓の鼓動が激しくなった気がする。
アリシアは俺の寝ているベッドに腰掛けた。
髪が揺れ、花のような甘い匂いが漂う。
「アルが、無事で良かった……」
アリシアは俺の頭に手を伸ばし、ゆっくりと優しく撫でる。
「まぁ、無事とは言えないかもだけどね……」
俺は固定された左腕を少し動かす。
「確かに。早く治るといいね!」
アリシアはそういってベッドから立ち上がる。
「じゃ、私は仕事があるから!」
「じゃあね、頑張って。」
俺は右手を小さく振って見送った。
「いや〜 よくやってくれたよ、レガリア“大尉“。」
例の作戦から1ヶ月が経ち、右腕の怪我が完治した頃……
俺は防衛作戦の戦果を称えられ、大尉に昇格した。
「ありがとうございます、参謀総長殿。」
この昇格は、参謀総長のおかげらしい。
「なんだか、その呼ばれ方はムズムズするなぁ……」
参謀総長は、体をブルブルさせて言う。
「さて、本題に入ろうか。」
いきなり、とても真面目な雰囲気で話が始まる。
「君のおかげで、新型魔導兵器が王国の手に渡ることはなかった。」
参謀総長は隣りにいた秘書から、書類を受け取る。
「今回の君の戦果は、とても大きい。特に、君が持ち帰った王国魔法使いの杖、あれは大きな成果だ。」
参謀総長は書類をめくり、俺に渡す。
「それで……君を私の親衛隊に入れたい。」
「え?」
その紙は、親衛隊の情報及びルールなどだった。
「俺が……あの【紫電極星】にですか?」
「あぁ、そうだ。君の実力は魔導師にも引けを取らない。」
参謀総長が高級そうなペンをくるくると回す。
「君が士官学校で優秀な生徒だったことは知っているよ。」
「そうですか……ありがとうございます。では、入らせていただきます。」
俺は紙の下の方にある、同意欄にサインをした。
その後、俺はページを捲り、ルールを見る。
「え、これって……」
「あぁ、この親衛隊に入ったら、ボクのことは[モーリスさん]って呼ばないといけないよ。」
「えぇ……」
「じゃあよろしくね、アルト大尉君!」
「えぇぇ……」




