列車と狙撃
俺達は軍事列車の後方車両にて、敵からの襲撃に備えていた。
列車はカーブに入り、車体が少し傾く。
乾いた風が車両を叩き、車輪の軋む音が響く。
その時だった――
「――ッ?!」
凄まじい轟音とともに、車体が大きく揺れる。
車両はどんどんスピードを落とし、やがて停止した。
「何があったんですか!」
俺はジョンソン団長に無線で連絡を取る。
『王国からの攻撃で、先頭車両がやられた。』
「なッ――?!」
この列車は王国の領土を通るわけでも、戦場の近くを通るわけでもない。
まず、たまたま王国側が見つけて、攻撃されるということはありえない。
つまりこれは――
「王国にこの作戦がバレている……?」
俺は小銃と盾を背負い、車両から飛び出た。
「第73小隊、全隊員に告ぐ! これより、車両護衛作戦を開始する!」
「はいっ!!」
小隊員も全員、車両から飛び出し、俺の後をついてくる。
幸い、最新兵器が乗っているという車両に傷はついていなかった。
さすが、見た目からして他車両とは比べ物にならない装甲を持っているだけある。
『レガリア中尉、少しいいかい?』
無線から、ジョンソン団長の鋭く、静かな声が聞こえる。
「はい、少し早めでお願いします。」
『今、王国の第4騎士団が出撃しているのを確認した。』
やはり、王国の騎士団がいるということは、作戦はバレていたようだ。
『先程の攻撃は、おそらく狙撃魔法だろう。』
「第4騎士団の狙撃魔法……まさか?!」
『あぁ、【白銀の狙撃手】だ。』
【白銀の狙撃手】は、超高精度の遠距離狙撃魔法を得意としており、魔術反応の認識できない距離からの一撃必殺級の魔法で、山程の戦果を上げている。
その狙撃手がいるとなると、この戦いは過酷なものになるだろう。
もしかすると、この戦いで……
「総員、警戒を保ちながら接近! 射程圏内に入った後、小銃の攻撃を行う。」
「「「了解!」」」
俺達は少しずつ、敵軍へ迫ってゆく。
魔導師団が攻撃を行ったが、どうやら大したダメージにはならなかったようだ。
奇襲による混乱のせいか、魔導師団の連携も取れていない様子だ。
「敵距離、1000です。」
「了解。各員、散解!!」
狙撃魔法は一発の威力は高いが、帝国の魔法と同じように、一発打つと再発動に時間がかかる。
全員がバラバラに散ることで、一撃でやられる人数を少なくすることが、この魔法への対抗策だ。
必然的に犠牲が生まれるという苦肉の策なため、正直好きではないのだが……
『攻撃、来ます!!』
そんな事を考えていると、魔法による攻撃が襲いかかる。
咄嗟に盾を構え、攻撃を受け流した。
少し溶けたが、そんな事を気にしている場合ではない。
敵は十分、弾の届く範囲だ。
俺は小銃のサイトを覗く。
「食らえッ――!!」
ドンッという発射音と、硝煙の匂いが鼻を突く。
どうやら見事に弾は敵の頭部に被弾した。
俺は銃のボルトを引き、弾を装填する。
『距離、750!』
もう一度構え、放つ。
次の弾は敵に被弾はしたものの、大したダメージにはなっていなさそうだ。
『距離、450!』
もうそろそろ、狙撃魔法が飛んでくるだろう。
だが、敵拠点までの距離は350メートルを切っている。
俺の魔術反応の有効範囲は約1000メートル、タイミングのわかる狙撃なんて――
ビュンッという音と共に、何かが左頬を掠める。
「なッ――」
爆風が体を襲い、俺の体は宙に舞った。
「着弾確認。」
『了解、攻撃開始!』
私は、爆撃魔法と狙撃魔法を合わせた、独自で開発した魔法で、歩兵の小隊を壊滅させた。
爆発で少々、味方を巻き込んだが、それもしょうがないだろう。
「意外と簡単でしたね。」
私は振り返り、狙撃銃をケースにしまった。
この銃は、ゼノン様が私のために特注してくれた大切なものだ。
「ご苦労、さすがは【白銀の狙撃手】だな。」
「ゼノン様の前で恥はかけませんゆえ……」
この作戦は、ゼノン様も見学という形で同行なされている。
「4キロ離れた的を正確に当てるとはな……」
「いえいえ、当然でございます。」
流石に、主の前で得意と言っている狙撃を外すなどということはしない。
「さて、魔導兵器の回収は他のものに頼むとしよう。帰るぞ、メアリー。」
「はっ!」
私達は、戦場から去ろうと歩みを進めた。




