新兵と作戦
「今日から第73歩兵小隊に配属されました! ノウェル・ヴェルク少尉です!」
「同じく、ルイス・ノーゲンです。」
「よろしく。ヴェルク少尉、ノーゲン少尉。」
「よろしくお願いします、レガリア隊長!」
「お願いします、隊長。」
戦死したコルトや他の隊員の代わりとなる隊員達が、今日入隊した。
ヴェルク少尉は薄緑色の髪と瞳が特徴的だ。
そしてノーゲン少尉は、歩兵には珍しい女性だった。
濃い茶色の髪が、肩にかからない程度に伸びている。
ちなみに、ガレスはまだ腕の治療で帰ってこれないとのことだ。
彼らは、士官学校を卒業したばかりの新兵らしい。
「あの……つかぬことをお聞きするのですが……」
ヴェルク少尉が、質問をしてくる。
「レガリア隊長は、王国の純血と聞いたのですが……」
「あぁ、そうだが。」
やはり自分の隊の隊長が王国人と知れば、下につくのは嫌だろう。
「俺なんかが隊長で……すまないな。」
俺は自室に帰ろうと二人に背を向ける。
正直、俺は先の特攻によるコルトの犠牲で、かなり精神を削られていた。
今はこの二人を、歓迎する気にはなれなかった。
「あ、あの!」
ノーゲン少尉が俺の軍服の裾を掴む。
「どうかしたか?」
「私……」
彼女の言葉が詰まる。
「私ッ――王国出身なんですッ!」
「……」
「私、生まれが王国で……両親も国籍も帝国なんですけど……」
もういい、今は王国という言葉だけでも、吐き気がする。
俺は、コルトを救えなかった。
殺したのは俺だ。
いや、俺じゃない。
殺したのは王国だ。
そうだ……
そうだ!!
俺は悪くない!!
「隊長と、少し……似てるかなって……」
「そうか、では。」
俺は部屋へ戻り、ベッドに寝転がる。
ガレスとコルトが同室だったこの部屋は、一人でいるには広すぎる。
「なんで……俺を置いていって……」
俺はベッドに、強く握った拳を打ち付けた。
外は雨が降っており、雨音がただ小さく聞こえる。
俺は胸ポケットから、コルトの懐中時計を取り出す。
「コルト……ごめん……」
頬になにかが伝う。
やっと、俺は涙を流すことができた。
「君たち第73歩兵小隊には、軍事列車の護衛をしてもらうよ!」
参謀総長がテンションを高めに言う。
「なぜ参謀総長殿が自らここに?」
コルトが死んでから約1週間、俺は参謀総長に呼び出され、次の作戦の説明を受けていた。
「いいじゃないか、別に悪いものでもないだろう?」
「それはそうですが……」
「じゃあいいね! で、この軍事列車のことなんだけど……」
参謀総長が真剣な顔つきになった。
「この列車は、最新鋭の兵器を輸送してる。これを鹵獲でもされれば、帝国の技術力が王国に盗まれるだろう。」
「最新鋭の……兵器ですか……」
「ま、詳しいことは言えないんだけどね!」
とても真剣な顔だと思えば、いつも通りの顔に戻った。
「ところで、この作戦は我々、小隊のみで行うんですか?」
「そんなことはしないよ〜 第3魔導師団も一緒に護衛に当たってもらうからね。」
「了解しました。では、作戦内容はいつも通りでいいですか?」
「うん、いつも通り行き当たりばったり戦法で。」
行き当たりばったりという表現に、少し違和感も覚えたが、俺は部屋を出た。
「大変そうだな……今回の作戦……」
「王国の第4騎士団が動いている、か……」
モーリスは、秘書から渡された報告書を見ながら呟く。
「えぇ、この作戦は軍の上層部、およびにこの作戦に出撃する隊の隊長のみに伝えておりますゆえ……」
モーリスの秘書は、静かに言う。
「軍の中……それも中枢の立場の者の中に、裏切り者のスパイがいる可能性が高いと……」
モーリスは葉巻に火を点け、息を吐く。
「あらかた、検討はついているがね……」




