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ランタナ・パーティ  作者: 鈴木まる
第11章 聖地
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第62話 話と違う

 時は少し遡り、サラたちが東の尖塔に到着して数分後、デメホン島にて――


「ノーチェス!」


ホーホーと興奮気味に鳴きながら朝日の中を飛んでくる仲間を、甲板にいたマイリは腕を差し出し迎え入れた。


「上手くいったってこと?」

「起動できたってこと?」


畳みかけるように問う双子にノーチェスは一瞬体をブルっと震わせてから「ホー」と鳴いて答えた。朝ごはんの後片付け担当だったアベルが遅れて食堂から出てきた。


「じゃ、全速力でリーミン島へ向かわなきゃ! サラたちはもう着いてるだろうからね」


たった今出てきたのにもかかわらず、斜陽石を組み込むためにアベルはすぐに船内へ戻って行った。


「確かに! あなたたち、帆を確認してくれる?」


ありったけのスピードを出したのであろう、息を切らしているノーチェスを休ませるために船室へ向かいながら、マイリは双子に頼んだ。二人は「イエス、マーム!」とおどけながら、マストに登っていった。




 時は戻ってリーミン島、地下墓所――


「二人いっぺんに行くよ! サラちゃん、爆弾お願い!」

「わかった!」


サラが両壁に爆弾を投げ、それが起爆した瞬間、寧々は両腕を前へ伸ばしすぐに思い切りグイッと引っ張った。引っ張られ吹っ飛んできたスヴェンとリアムは、サラに覆いかぶさるような形になり三人とも倒れ込んだ。寧々は反動で尻餅をついた。


「サラさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。さっさと出るぞ」


こんな時にもサラと寧々に手を差し出し(スヴェンは自分で立ち上がった)助け起こすリアム。怪我はなさそうで、サラは軽く息をついた。


 大聖堂内部への扉の前まで戻ってきたサラたちは、息を整えた。リアムが水の魔法で松明の炎を消す。スンスンと鼻を動かしスヴェンが眉をしかめた。


「まだ三十分程しか経っていないと思うんだが……」

「おい、もしかして見張りがいんのか?」


小声で言うスヴェンに同じく小声でサラは尋ねる。スヴェンは頷く。それでは、この扉からは出られない。警備の者に見つかり、捕らえられてしまう。浩宇ハオユーの話では、教主の祈りの時間はそんなに早く終わらないはずだったが……


「残念な参拝客のふりをするしかないかな。『あ、間違えて入っちゃいました~てへっ!』みたいな」

「まあ、眼鏡もありますし誤魔化せなくはないですかね……」


鍵のかかっていたはずの部屋から眼鏡をかけた(一人眼帯の上から色眼鏡)四人組が出てきたら、どう思われるだろうか。寧々とリアムの会話を聞きながら、サラの眉間にはしわがよった。……だが、他にどうしようもない。


「できるだけ気配を消そう。……気付かれてしまったら、その作戦でいこう」


スヴェンが乗り気でないのがサラにはひしひしと感じられた。扉の取っ手を掴み、スヴェンは三人と目を合わせてから、意を決したように開けた。


「ん? あなた方、なぜそんなところから……」


最悪のタイミングだった。スヴェンは匂いで誰かがいることはわかっても、どの方向を向いているかまではわからない。見張るとしたら大聖堂内部だろうというサラたちの希望的観測は裏切られた。警備に当たっている聖騎士団員はちょうどサラたちの出てきた地下墓所へ続く扉の方へ向いていた。


「あ、すみませ~ん! よくわかってなくて入っちゃってぇ」

「中が真っ暗だからぁ、慌てて出てきたんですぅ」


寧々とリアムが全力で頭の足りない参拝客アピールをする。やり過ぎだと思いつつも止めることができないし、この後自分はどんなポジションで演技に信憑性を持たせれば良いのか、明らかに疑いを持っている騎士団員の目を見てサラは途方に暮れた。


「おかしいな。『慌てて出てきた』ってことはすぐに出てきたんですよね。自分はここに十分近く立っているのです」


橙実トーミ」と名札の付いた警備の者は、手にしていた槍を構えた。リアムがしまった、という顔をせずあくまでとぼけているのは流石だった。しかし作戦失敗か、と思いサラはアベルの煙球を取ろうと懐に手を伸ばした。


「悪い。怒られると思い、嘘をついた。本当はそのくらいの時間入っていたんだ。珍しいと思って……」


スヴェンは食い下がる。あくまで穏便にやり過ごしたいのだ。確かに今騒ぎを起こしたら、サラたちに逃げ場はない。船はきっとまだこの島に向かっている途中だ。


「中は真っ暗なはずです。何分もいる意味がない」


より表情を険しくした橙実は、槍を構えたままだ。自分たちに対する不信感は払拭できそうにない。参拝客のふりはもう限界だとサラは思った。


「え? 明かりはついてたぜ。ほら」


そう言ってサラは軽く扉を開いた。橙実は訝しげにサラに近づき、扉の隙間から中を覗き込んだ。


「やっぱり真っ暗じゃないか……うわっ!」


サラは思い切り橙実の尻を蹴飛ばして、真っ暗闇の中に押し込んだ。すかさず扉を閉めると、スヴェンが小さいながらも火力のある炎で扉の縁取りの金属の一部を溶かし溶接した。


「開けろー!!」


橙実が中からドンドンと扉を叩きながら叫ぶ。しかし、扉は分厚い上に溶接されている。近くまで行かなくてはその声や音は聞こえない。サラたちはそそくさとその場を立ち去った。幸いにも、他の聖騎士団員や参拝者には見られていなかった。しばらくは大丈夫だろう。


「できるだけ、合流地点に近いところで身を隠そう。侵入がばれるのは時間の問題だろうから」


スヴェンの言う合流地点は西の回廊から出られる大聖堂の外だった。そこに行くにはまず、大聖堂から回廊へ出なくてはいけない。


「どうやって行くかが問題ですね」


リアムはさりげなく大聖堂を見渡した。回廊へとつながる扉はいくつかあるが、そのどれもが騎士団員に見張られている。


「何かあったのかな。聞いてた感じより騎士団の人が多い気がする」


寧々は首を傾げた。寧々の言う通りだとサラも大聖堂の各所に立つ騎士団員を見やった。「各扉にだいたい一人立ってるよ」と浩宇は言っていた。各扉に二人は立っているし、扉以外のところにも見張りがいる。


 島を脱出する難易度が上がったと見て間違いなさそうだった。





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