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ランタナ・パーティ  作者: 鈴木まる
第10章 料理人と伝説
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第55話 現地調査

 誰一人としてその種族に伝わる宝玉だとか、種族を代表する石だとか、そういったものに心当たりはなかった。


 一行は頭をひねった。今ある情報を、どうにか持ち合わせる知識でつなぎ合わせて意味のあるものにしようとした。


「その種族特有の宝玉ってことかはわからないけど、例えば紅の石だったら斜陽石があるよね。碧だったらサファイアとか。そういう物のこと言ってるのかな」

「そのままの意味とは限りませんよね。何かを喩えているのかもしれません」


寧々《ねね》の考えも可能性があるしリアムの言うことも最もだが、そうだとしてそれをどう確かめるというのだ。一向に進まない考察にサラはうんざりしてきた。


「ここで考えても、もうわからねぇだろ。それっぽいところ実際に行ってみた方が良くないか」

「それもそうだな。食料の買い出しもしなくてはいけないし。存在するか分からない仕掛けだ……今日探してみて手がかりがなければ、他の方法を考えよう」


スヴェンは全員が頷いたのを確認し、再度チーム編成を行った。都紀とき柘紀つき、リアム(「女性の方、いないのですか……」)、ノーチェス、とげ丸が物語の考察兼船番担当、浩宇ハオユー、マイリ、アベルが食料買い出し兼情報収集担当、寧々、スヴェン、サラが実地調査担当となった。


「あ、僕たちいいもの持ってるから」

「ちょっと待ってて!」


そう言って都紀と柘紀は食堂から出て行った。数分後戻ってきた二人の手には……


「ヅラ?」


茶髪のロングと金髪ボブヘアのかつらが握られていた。サラは嫌な予感がして眉根を寄せた。


「いいわね! サラと浩宇は騒ぎの中心だったものね。変装しないと!」


ニヤニヤ顔が隠せていないマイリを、サラは睨みつけた。絶対面白がってやがる……。


「眼鏡かけりゃ大丈……」

「だめだめ!」

「さあさあ!」


一応拒否してみたが聞き入れられるはずもなく、双子に手早くかつらを被せられてしまった。


「サラさん、とっても素敵なレディですよ。もちろん普段も素敵ですが」

「おお、ロングヘアも似合うね!」


リアムとアベルがにっこり笑顔で褒めてくる。恥ずかしすぎる。何の罰ゲームだ、これ……とサラは手で顔を覆った。一方、浩宇は……


「逆にありだね」

「ファッションに興味ある奴らの中に、たまにいるタイプだ」


寧々とスヴェンが真顔でコメントしているが、要するに金髪ボブのかつらは彼にものすごく似合っていなかった。マイリと双子は背を向けて肩を震わせている。絶対笑ってやがる、失礼な奴らだ、と思いつつサラは必死で顔面の筋肉を強張らせて口角が上がらないようにした。


「え、そう?」


まんざらでもなさそうに浩宇はさらさらかつらを指ですく。その動作がまた何とも言えず、サラはマイリたちの仲間入りをした。


「これで眼鏡を掛ければ同じ人だとは思われないでしょう」


リアムがジェイからもらった眼鏡を浩宇に手渡した。


「すごい! こんな便利なものがあるんだねぇ」


違法行為をサポートする道具なのだが、浩宇は素直に感心している。聖地で働いている割に他種族交流の掟に緩いのは、料理を通して間接的に既に交流しているからかもしれない、とサラは一人頷いた。




 サラたち調査チームは、まず「高き塔」に行ってみようということになった。船から降り、市街地へと向かった。


「本当にあったとして……さっきも寧々が言ってたけど、何で今まで使われてなかったんだろうな」

「その『五つの宝玉』というのを用意するのが難しいからではないか?」


サラとスヴェンの会話を聞きながら、寧々はこくこくと頷いている。


「わかんねぇけど、そんなら私たちが使うのも難しいかもしれないな」

「そうだね。でも、とりあえずあるかどうかだけでも……あ、あれとかどう?」


軽くため息をつくサラの肩をポンッと叩き、寧々が前方を指差した。指し示す先には時計塔があった。空へと伸びる尖塔は、たしかに周囲の建物よりずっと高い。


「よし、行ってみよう」


スヴェンが歩調を速めた。


 時計台は教会の建物の一部のようだった。建物内には午後特有の気だるい光が差し込んでいた。


 周囲に人がいないことを確認し、「立入禁止」と書かれている看板を無視して三人は上へと続く螺旋階段を登った。階段は中央部分が擦り減ってへこんでいる。かなり狭い階段で、もし誰かが向かってきたらすれ違うことができない程壁が迫ってきている箇所があった。埃の匂いが鼻を満たす。


 流石にサラの息が切れてきた辺りで、やっと時計台のてっぺんへ着いた。


「わぁ……色々複雑な仕組みがあるんだね」


全く息切れしていない寧々が、時計の機械仕掛けを見て興味深そうに呟いた。


「そう……か? かなりシンプルだと思うけどな」


サラにとっては、パッと見ただけでどこがどのように繋がって動作するのかがすぐわかる程度のものだった。原始的な仕掛けだ。


「あのな、ここが動力源で、この力をこっちの歯車に伝えて縦軸に……」

「ちょ、ちょっとストップ!」

「サラ、頭痛がしてくる。話を止めてくれないか? 例の模様は……」


目を回しかけた寧々はまだ少しフラフラしている。軽く頭を押さえたスヴェンがあたりを見渡す。部屋はサラたちの船の食堂と同じくらいの大きさで、時計の仕掛けがあるのみ。


 三人で手分けして探してみたが、例の円形の模様は見当たらなかった。寧々《ねね》は文字盤の隙間から見える町並みへ目をやった。


「『高き塔』ってここじゃないのかね」

「それか、そもそも瞬間移動の仕掛けの話がただの作り話か、だ。……ん?」


サラは時計の稼働とは関係のない歯車が仕掛けの中に紛れ込んでいるのに気付いた。自分の掌よりも小さな部品。興味本位で引き抜いてみた。


 何か大きく重たいものが動き、はまり合う音が頭上で響いた。


















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