表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランタナ・パーティ  作者: 鈴木まる
第10章 料理人と伝説
PR
54/70

第54話 ショータイム

 都紀とき柘紀つきが得てきた情報を、しっかり確認してみようということになり二人は大得意で食事の片づけられたダイニングテーブルの上に立ち語り出した。きちんと靴を脱いでいる辺りが行儀が良いような、悪いような。


「昔々、この空域には悪い魔物が住んでいました」

「魔物は自分の力を強くして、この世界を暗黒に変えてしまおうとしていました」


二人は交互に物語を紡ぐ。不思議と聞き苦しくなくしっくりとくる。メモを見ながら話しているが、とてもスムーズだ。極めたらこの二人は舞台にも立てるのではないかとサラは思った。


 物語は魔物により人々の生活が苦しくなっていく様子を描いていった。魔王は人々の大切な美しい城を乗っ取り、手下を沢山配置した。強大な力の前に人々はなすすべもなく、搾取され続けていった。


「……そこで、一人の若者が立ち上がりました。彼には病気の母親がいたのです」

「このまま食料も薬も満足に手に入らなくては、死んでしまうかもしれなかったのです」


悲しく儚げな表情を作る二人。見ているこちらも胸が苦しくなってくる。彼は決意を胸に文献を調べ、賢者に会いに行く。そこで紫、紅、碧、翠、黄の五色の宝玉を集めるよう言われるのだ。宝玉集めに彼は奔走する。


「彼は大きな病院を建設している町へたどり着きます」

「病院の建設は、町のみんなの望みでした。しかし、魔王の策略により物資が十分に届かなくなっていました」


その病院の建設が立ち行かなくなっているのを、若者の機転で解決する。


「棟梁は若者にお礼を言い、宝玉を手渡しました」

「一つ目の宝玉は、紫色に神秘的な色を放っていました」


二つ目は漁村の近くの川辺で、その次は町役場で税収係から、その次はまた川辺で漁師から、その次は村人の家で村人から……賢者の予言に従い、彼は宝玉を順調に集めていく。


 その若者が五つの宝玉を揃えたところで、例の箇所は出てくる。


「彼は賢者に言われた通りに集めた大切な五色の宝玉を携えて、高き塔に登りました。そして、賢者に教えられた通り宝玉を聖なる円に収め思いを込めました」

「勇気ある若者が光より速く、壁を、土を、雲を、通り抜け進んで行く姿は、誰の目にも、もちろん魔王の目にも、映りません」


これによりその若者は見事、魔王の根城に潜入することができるのだ。さらに五色の宝玉により力を得た彼は、そのまま魔王を討伐することに成功する。


「勇気ある若者の活躍により、世界には平和が訪れました」

「美しい城には王様やお姫様が戻り、豊かな国を築きましたとさ」


チャンチャン、とリズムを付けて双子は仲良くポーズを取った。思わず拍手を送ったのはサラだけではなかった。


「すごく面白かった!」

「話すの上手なのね!」


アベルとマイリに褒められ、双子は揃って頭をかいた。完全に観客になっている二人は情報収集という目的をすっかり忘れているようだった。


「で、その城が実は聖地で王様やらお姫様が教主ってことになるのか」


拍手を止めてスヴェンが言った。


「史実に似たような話があれば、ぐっと信憑性が増すんですが……」


打ち合わせていた手の片方を顎へ持っていったリアムは、思案顔だ。


「史実に基づいてるって話は聞いたことないなぁ」


一緒になって手を叩いていた浩宇ハオユーが、ポツリと呟いた。……浩宇?


「お前なんでいるんだよ!」


話に夢中になっていて、船室に彼が入ってきていたことにサラは気付かなかった。というか、ノーチェスととげ丸以外、実は誰も気付いていなかった。


「いやぁ……さっきの目の色が見えちゃった騒ぎで厳戒体制が敷かれてて……この船は隠すように停泊しているからいいけど、僕のは堂々と港に停めたから、近付けなくなっちゃってて……」


眉毛をハの字にして、浩宇は弱々しく微笑んだ。


「君たちの手伝いをするから、しばらく一緒にいさせてくれないかな?」


他に頼るところがないにしても、聖地に侵入しようとしている空賊に肩入れしてこいつは大丈夫なのか……とサラは心配になった。


「こちらとしては構わないが……お前、後で困らないか?」


来るもの拒まずの態度はいつも通りだが、スヴェンもサラと同じようなことを懸念しているようだった。


「うん、いいのいいの。僕の料理をあんなふうに食べてくれる人たちが、悪い人なわけないからね」

「そんなふうに言ってもらえると、何か照れちゃうなぁ」

「善悪の基準はそこなんだね」


何だか嬉しそうに頬をかくアベル。寧々はその隣で興味深そうに呟いた。今のは誉め言葉なのだろうか……と疑問が湧いたが、話がややこしくなりそうなのでサラは口をつぐんだ。


「浩宇さん、東の尖塔やその周辺でなにかそれっぽい噂とか昔話はないですか?」


リアムは早速浩宇に情報提供を求める。


「うーん、怪談ならあるよ。幽霊が何人か現れたり消えたりしたとか、その幽霊を見ると向こうの世界に連れていかれる……みたいな。それであんまりみんな近寄らないから、僕はそこを狩場に選んだんだよ」

「食材が絡むと、本当に怖いもの知らずなのね!」


マイリは大きく頷く。その隣でスヴェンは腕を組む。


「その幽霊話が瞬間移動の目撃情報からの派生とも考えられなくはない、か……。宝玉関係は?」


スヴェンの質問に浩宇は「知らないなぁ……」と残念そうに首を振る。


「宝玉の色が種族ごとの瞳の色と一緒だから、それぞれの種族に伝わる宝石とかかな、とも思ったけど……俺は碧瞳へきとう族のそんな話聞いたことないんだよなぁ」


アベルは視線をサラへやり意見を求めた。サラが首を振ったのを見て先を続けた。


「他の種族では宝玉の話ってあるの?」


アベルの問いかけに、同じ種族のいるメンバーは同じ色の瞳の顔を見合わせた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ