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ランタナ・パーティ  作者: 鈴木まる
第10章 料理人と伝説
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第49話 衝突


 寧々《ねね》の「風向き的にこっちが行きやすそうだよ」という情報の元、聖地から数時間の紅瞳こうとう族の島、デメホン島へ船は向かった。


 港に着いた時にはすでに日が傾いており、探索は明日にしようとサラたちは船に留まった。


「こんなものも作ったんだ、そのジェイって人!」

「すごいね、初めて見たよ」


明日のために、と眼鏡を渡された都紀とき柘紀つきは、様々な色に設定してはお互いを見つめ合い笑った。


「そう、ジェイはすごいのよ! スヴェンと私の幼馴染で天才発明家よ」

「買い出しのために、食糧庫を確認してくる」


自分のことのように鼻高々なマイリに被せ気味にそう言い、スヴェンは船の食堂から出て行った。ジェイに対し嫌悪の感情を持ち続けるスヴェン。その理由を自分たちに話す気になる日は来るだろうか……とサラは彼の出て行った扉を見つめた。




 消灯後、サラは眼鏡をかけ、仲間を起こさぬようこっそり船を抜け出した。警備隊の詰所の明かりはまだついており、ほっと息をつき尋ねた。


「空軍の巡回船7239部隊はこの辺りを見回ってるか? 実は前にその部隊に助けてもらったことがあって、直接お礼を言いたくて」

「うーん、この辺は聖地が近いから巡回船じゃなくて、巡航船が見回ってるはずだけど……ちょっと待ってくれよ」


そう言って警備隊員はカウンター後ろの棚から分厚い帳簿を取り出し開く。


「残念だけど、やっぱり巡航船だな。7239部隊がどこを回ってるかはちょっとわからんなぁ。ちなみに隊員の名前とか分かるのか?」

「ルイ・スタイナーだ」


警備隊員はもし機会があれば伝言しとくよ、と気のいい笑顔を浮かべて立ち去るサラに手を振った。まあ、そう簡単には行かないか……とサラは一人星空の下首を振った。




 翌朝。青空広がる中、情報収集へと一行は繰り出す。


 アカツキ島の周辺にはこのデメホン島を含め、五つの島があった。


「巡礼者が休憩したり宿泊したりできるよう、各種族の島がアカツキ島の近くにはあるんですよ」


ナハト姿用のアクセサリー屋の前で、眼鏡越しの紅い瞳をキョロキョロと動かしながらリアムが解説した。色とりどりの首輪や人の姿では着られないようなサイズの服が売られている。道行く人々はみな人型なので「一体いつ、これらの物を着用するんですかね?」とリアムは小さく呟いた。


「へぇ各種族の島か……まあ、合理的だな」


サラは誰かに怪しまれたりつけられたりしてないか、神経を尖らせたまま相槌を打った。今のところ、大丈夫そうだ。


「私、紅瞳族の島って初めて。紫瞳族とはやっぱり雰囲気違うんだね。家の形が違うのは、気候のせいもあるのかな」


寧々《ねね》はワクワクが抑えきれない表情で町並みを眺めている。サラが今一緒にいるのはリアムと寧々の二人だ。一行は今、少人数に分かれて行動している。他はスヴェン、マイリ、アベルのグループと双子、とげ丸のグループだ。ノーチェスは例の如く船番だ。双子は子どもだけで大丈夫なのかと心配するサラに、


「今まで二人でやってきたから大丈夫!」

「それに、気配を消す術は僕たちは自分自身にかけるのが一番うまくいくし」


と自信満々に笑顔で答えて、あっという間に街中へ消えてしまった。いざとなったら山吹色の例のバンダナがあるし大丈夫だろう、とサラたちは無理に追いかけなかった。


 観光に来たわけではないと思いつつ、寧々につられてサラも黄色やオレンジやピンクのカラフルな可愛らしい木組みの家々に目が奪われた。建物は高くても五階建て程度で屋根がみな三角形に尖っている。雪が積もらないように角度をつけているのだろうか。


 日差しを多く取り込むためであろう大きく設えられた窓のすぐ下には、小さく可憐な花の咲くプランターを飾っている。サラは母がよく手入れしていた、生家の庭を思い出した。同じ花が植えてあった。なんという名前の花だったか……


「サラさん、危ない!」


リアムの声で我に返るサラ。背後に目を向けたが、遅かった。走ってきた何者かにぶつかられ、サラは石畳に倒れた。


「っつ……」

「うわわわ……ごめんなさい!」


そこら中に野菜やら干し肉やらが散らばった。サラを助け起こしたのは、ぽっちゃりと恰幅の良い男だった。笑顔であれば人のよさそうな顔は、今は焦りと申し訳なさとで眉毛がハの字になり困り顔になっていた。


「これ、どうぞ……あ」


散らばった食材と男が目深にかぶっていた帽子を手渡した際に男と目が合い、リアムが固まった。そして、周囲の空気が凍りつく。


「誰か! この人黄瞳おうとう族よ!!」


沈黙を切り裂くように、近くにいた女性が叫び声を上げた。ぽっちゃり男が帽子で隠していたであろう目は明るい黄色だった。男のハの字だった眉は、さらに角度を上げ11になりそうだ。


「こいつは、碧瞳へきとう族だ!」


これまた通りすがりの男性がサラを指差し叫んだ。サラの眼鏡は倒れた際に石畳の道に吹っ飛んでいた。碧色の瞳は周囲の人々にさらされていた。


「くそっ……」


サラは舌打ちし、懐からアベルに分けてもらっていた煙球を取り出し素早くリアムと寧々に目くばせした。二人が頷いたのを見て煙球を思い切り地面に投げつけた。勢いよく煙幕が立ち込める。サラは素早く眼鏡を回収し駆け出した。


「あなたも、一緒に来てください」


煙幕の中、ぽっちゃり男の襟首をリアムが掴み引っ張った。


「え、うん……あ、でもあれだけ拾わせて!」


男は地面に落ちていた干し肉を慌ててドタドタと拾ってから、大人しくリアムに従った。


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