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ランタナ・パーティ  作者: 鈴木まる
第7章 天気
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第30話 作戦

 スヴェンはダイニングテーブルの上に、寧々からもらったこの島の地図も広げた。島の中央に城。その周辺は城下町で、商店が立ち並んでいるらしい。寧々の家がある住宅街は、さらにその外側の部分だった。


「今回はシンプルに真っ向勝負で良いと思う」


スヴェンが全員の顔を見回した。マイリがすぐに「賛成!」と手を挙げた。ルイもスヴェンがそう言うのなら従おうとは思ったが、理由が聞きたい。


「ここの島民側の者だと思われると人質を盾にされる。偶然敵船を発見し攻撃を仕掛けた同業者だと思われた方が、動きやすい」


なるほど、とルイは頷いた。


「でも、人数が気になりますね。寧々さんは二十人程いると仰ってました。僕たちが正面切って行っても負けそうです」

「あと、黄瞳おうとう族ってどんな感じ? 会ったことないなぁ」


リアムとアベルは不安そうだ。それはそうだと、ルイは二人を見やった。特にアベルは初めての他島での活動だ。


「黄瞳族は龍――巨大な蛇のような空を飛べる生き物――に姿を変えられる種族だ。雷を扱える」

「あと、料理が上手いわ。高い火力で調理した辛めの料理が多いかな」

「わぁ、それは食べてみたい!」


スヴェンに続いてマイリが入れた余計な情報に、アベルは素直に感心している。戦う相手だってこと忘れてねぇか……っていうかマイリ、お前が料理を語るのか……とルイの脳内には次々突っ込みの文言が浮かぶ。ルイは一人ぶるぶると首を振りそれらを追い払う。


「とりあえず、相手の様子はもう少し知ってもいいんじゃねぇか。仕掛けるのは正面からでも、時と場所は選ぶべきだろ」


ルイの提案で、寧々に協力してもらいつつ敵の動きを把握することに一行は決めた。




 数日後――


 観察や聞き込み調査をした結果、特定の曜日の特定の時間、船長の麗華リーファは側近二名のみと船に残り、その他のものを追い払うらしかった。ルイたちは、その日に奇襲をかけることにした。


「その日に麗華は何してんだ?」


アベルが作ったシチューを食べながら、ルイは尋ねた。野菜も肉もほろほろと柔らかくほっと優しい味がする。手先が器用だからか、アベルは料理が上手い。


「そこまではわからん。とりあえず、二人組で行動するぞ」


スヴェンが発表したペアは、ルイとマイリ、アベルとリアム、そしてスヴェンとノーチェスだ。リアムが不服そうに申し出た。


「あの、僕はなぜ女性の方と組めないのでしょうか」

「アベルの爆破の規模が予測しづらい。水の魔法が使えるお前なら、万が一のとき消火できるだろう」

「それ助かるなぁ」


スヴェンのもっともな理由とアベルの笑顔に、リアムは何も言えないようだった。いや、突っ込むのそこじゃないだろ、とルイは口を挟む。


「おい、スヴェンがノーチェスとってのは良いのか?」


ノーチェスが賢いのは分かる。しかし、空賊船に乗り込むのだ。ふくろうが相棒なのはやや心許なくはないのか。いくらスヴェンが強いとはいえ無理があるだろうとルイは思った。


「大丈夫だ。それより、俺は寧々に確認したいことがある。お前たちはそれぞれ準備しておいてくれ。作戦実行は明日の朝だ」


スヴェンが行ってしまったので、強制的に話は終わってしまった。仕方なく、ルイはマイリと敵に遭遇した場合の動きを話し合った。




 作戦実行の朝。七時。ルイは何度も確認した銃弾の数を、もう一度チェックした。マイリは腰のポシェットの中身を見ている。


「一気に近づく。人質の安全確保と船の制圧。非常時にはとにかく船に戻る」


食堂で全員の顔を見て、スヴェンが端的に重要事項を繰り返した。ルイたちは頷いた。


「掴まって。行くよ!」


アベルが叫び、一気に船の高度を上げた。甲板でマストに掴まっていたルイは、吹き付ける風と重力をひしと感じた。


 あっという間に城の上にある空賊の船に近付いた。船の大きさは同じくらい。甲板に人影は見えない。ルイたちはロープを使って手際よく飛び移る。ロープは敵に見つからないよう、マイリとリアムが魔法をかけて透明にした。


 ルイとマイリは甲板中央付近の階段を見つけ、船底へ向かった。人質が囚われているかもしれない。アベルとリアムは舳先側の階段へ。スヴェンは甲板を探ってみるようだ。


 ルイは船の最深部へと行くつもりだったが、マイリが一階層分降りたところで立ち止まった。マイリの指さす先には、厳重に鍵のかけられた扉があった。人質がいるのだろうか……と二人は声をかけてみたが返事はなし。ルイはアベルからもらった爆弾を鍵に仕掛けた。導火線に火を付けると、教えられていた通り約十秒後に爆発した。


「威力がすげぇな……」


鍵を壊すどころか扉が壊れてしまった。小さく燃えている箇所を二人で踏んで鎮火した。


「わぁ! 初めて見たわ。やっぱり綺麗なのね」


マイリが歓声をあげた。二人で入った部屋にどっさりと積まれているのは……斜陽石だった。薄暗い室内でも、赤く怪しい光を放っていた。


「後でいただこうぜ」


と言いつつも、ルイはいつもの癖で懐に一握り忍ばせた。その途端、冷たく重い音がした。なんと、別の扉が上から落ちてきて、出入口が塞がれてしまっていた。ルイが触れてみると冷やりと固い。鉄製……ルイたちは部屋に閉じ込められてしまった。




 アベルとリアムは、ルイとマイリとは別の階段を使って人質の捜索を行った。きっと奥に閉じ込められているはず……と先へ進もうとしたが、二人は階段を降りてすぐ止まることになった。


「おい! 誰だ、お前たち!」


リアムの魔法で気配を最小限におさえていたが、ばれてしまった。声をかけてきた男の服装と、何より目の色からリアムは相手が翠瞳すいとう族だとわかった。警戒していればリアムのレベルの無系統の魔法はすぐに見破られてしまう。


 リアムとアベルは相手に向き直った。敵はぽっちゃりした体型の三十代前半くらいの茶髪の男だった。片手に分厚い本を持っている。長めの前髪をセンターで分けて左右に流しており外見からは小物感が漂っていたが、目つきはやたらと鋭かった。リアムはごくりと唾を飲み込んだ。


「良かった、何かあんまり怖くなさそう!」


こそこそっとアベルがリアムに耳打ちした。そうだった、この人戦いは素人だった……とリアムは更に身を硬くした。「油断大敵ですよ」とアベルを小突いた。


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