ドックキャットの防衛線 初夜の話
シルヴァとブルーはそれぞれ全力で走っていった。だが、それぞれの思惑は違っていた。
ブルーは今回の戦が初戦で、少しでも武功を上げたい。そう思っていた。
シルヴァは、今まで自身が先頭に立って戦っていたため、作戦による味方の死の重みにつぶされそうになっていた。
さらにシルヴァは相手にいたエルフ族の話も気になっていた。操られている。操りの正体をなかなか見つけられなかったので、余計焦っていた。仮説はいくつも立ってた。その内可能性として高いのは、
魔法による洗脳
道具による洗脳
催眠による洗脳
寄生による洗脳
だ。でも、寄生の洗脳なら、気絶では戻らないと思い始めていたので、シルヴァは違うと判断していた。もちろん、道具の洗脳もだが、もし、道具や寄生で気絶後一定時間は洗脳を解除するという仮定は外せなかったのだ。
そう考えていると、シルヴァは南に着いた。そこでは、全体の真ん中にラインさんが槍で敵を葬っていた。左右の端から少しづつ敵が攻めてきていたが、味方が人海戦術でぎりぎり押しのけていた。
その状況を見たシルヴァは、即行動に移したのだった。
「左右の兵士のみなさん少し引いてください。魔法を放ちます。」
と言い、爆発魔法を5箇所に放った。
やはり、今までの魔法とは違い、威力が大きかった。だが、それも予想していたので、魔法を放つ位置を普段より敵側にしていたため、味方の被害はなかった。敵の被害は尋常ではないが・・・。
左右とラインさんの奥側にも放っていたので、全体の余裕が少し出てきた。
そのため、シルヴァは全体の立て直しを図った。
「ラインさん移動してもらい、右側の相手でお願いします。僕は真ん中の敵を相手します。左側はみなさんでお願いしたいのですが、いいですか?」
と聞いてみた。
皆が頷いてくれたので、安心してそれぞれが行動を開始したのだった。
もちろん、シルヴァが真ん中で戦っていたのには理由がある。シルヴァの魔法の範囲が真ん中なら、左右の端位までしか魔法が届かないので、いざという時の支援が出来ないからだ。
そして、左右の状況を少々見たとき、まだ左は余裕があった。右は結構ぎりぎりだった。その事を考えると、多少でもきつい場所をラインさんに負担してもらい、いざというときは支援、仲間は左側で守備をしてもらい、時間を稼ぐしかなかった。
そんな状況の南だが、ほかの場所の動きはわかっていなかった。
北はブルーとハクさんが合流し、真ん中を少しあけて、左右でハクさんとブルーが攻撃をしていた。
西と東はそれぞれロックさんと父親が奮闘していたので、かろうじて持っていた。
そんな状況の中で、太陽が落ち、夜になっていった。
相手としては、一日で落とせると思っていた場所が落ちなかった。
夜戦は敵の判断がわかりずらく、慣れない状況下だと敵からの奇襲を受けやすいので、夜営をすることになったのだった。
そう、初日が無事終わったのだった。
だが、敵もだが、味方にも犠牲者は多くいた。
それに相手はまだまだ余裕があった。だが、味方の余裕はもうない。
それらが意味することはシルヴァもわかっていた。
そして、夜、シルヴァ、ブルー、ハク、アーク、ロック、ラインの6名が集まった。
6名はそれぞれの情報を持ってきていた。だが、それはすべて味方の劣勢を示すものしか無かった。
それぞれの地域は各自先頭に立ち、戦力を保っていたにすぎなかった。味方の戦いの意識がだいぶ落ち、弱った意思を戻すために先頭に立っていたに過ぎなかったからだ。
そして、翌朝も戦が始まる。そう考えると逃げる人も出てくることは覚悟していた。
そう考えると、如何に相手を切り崩せるかが勝負になると思っていたのは6名全員だ。
打ち崩すためにはどうするか?
そう考えていると、ラインさんが口を開いた。
「正直劣勢だな・・・。」
と呟いた。だが、沈黙の中の呟きだったので、声が部屋に響いた。
「確かにそうですね。」
とシルヴァは呟いた。
だが、ハクとブルーはそれを認めるわけにはいかなかった。
「この状況では厳しいが、何とかならないか?」
と言ってきたのはハクさんだ。
「援軍が背後から戦い始めれば何とかといった感じですが、まだ厳しいのではないでしょうか?」
と答えた。
もちろん、援軍は来ると思っている。
だけど、それはいつ来るかわからない状況だ。いつ来るかわからない以上、当てにすることはできないだろう。
「では、明日も徹底抗戦で、明日援軍が来ない場合は、明日の夜撤退という方向でいけないか?」
とハクさんから言われた。明日戦えばさらに厳しくはなるが、何とかするしか無いとある意味吹っ切れた状態になったのだった。
「明日もあるなら、配置を変えてみませんか?」
とブルーが代案を出してきた。
それはある意味無謀だが、それしかいい方法が無いといった感じの作戦になったのだった。




