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転生領主とその周辺  作者: しから
内政チートの始まり
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学業のすすめ

真赤 5日


 古今東西、為政者を悩ませてきた共通課題と言うのがある。

 例えば、食糧。

 人は食べ物がなければ生きていけない。故に食糧の生産力はそのまま国力に直結する。

 有史以前より人口が急増するタイミングはそのまま画期的な食糧生産技術が出現したタイミングだ。

 或いは天候。

 台風のような災害が人の住む街に大打撃を与えると言う側面もあるが、そうでなくても普段雨が降る時期に例年並みの降水量が確保できなければ、有りとあらゆる面に影響を及ぼす。


 と言う具合に課題と言うのは必然的に共通化するのだが、取り分け大きなウエイトを占める課題となるのが教育だ。

 為政者にとっては民衆はある程度のレベルで維持したいと言うのが本音だ。

 良く漫画やゲームで取り立たされるように「民衆はバカな方が良い」などと言うことは実際にはあり得ない。

 お馬鹿な民衆が増えれば、政治の仕組みを理解せずに簡単に不満の声を揚げる。

 そうなれば、国力を衰退させるのが必定。


 戦国時代の一揆等はこれだ。

 優秀な大名家の支配下で教育をある程度施されている領地の方が一揆は少ないのだ。

 逆に宗教家は民衆がバカな方がありがたいから、一向衆の勢力が強い領域では一向一揆だけでなく普通の一揆も多発したわけだな。


 では、どの程度で修めるかだ。

 ある程度などと言う曖昧な基準では分かりにくいし、為政者の代が代わる度にばらつく原因となる。

 一定の水準を超えると自分達が為政者に取って代わろうとする連中が現れる。潜在的に爆弾を抱える結果になる訳だな。

 所謂革命と呼ばれる現象で、これも古今東西でみられる事象だろう。

 …実は個の力が極端に違うこの世界なら起きない可能性も高い。

 いや、実際にその通りなのだろう。魔族の勢力圏の方が教育水準が高く、そのくせ暴動等は少ないのだ。

 さて長々と教育を施す加減を話したが、実は結論が出ている。

 有史以来、それは幾度も実施されて結果を出している。


 それは出来るだけ施してしまうのが一番良いと言う単純なもの。


 人はやるなと言われればやりたくなるものだし、文明の最先端にいると満足すると、そこで現状維持に心の舵を切り替える。

 若い時は革新的なアイディアで精力的に動いていた人物が、ある程度の権威を得て、保守的になるなどはどこでも見られる光景だろう。

 若い人間から見れば老害扱いされるだろうが、その若者達も大半が何時かはそうなる。

 精神の充足を得るとそれを手放すことを怖れるわけだな。

 そう言う人間が増えると文明の発展性は落ちるが、国としては安定する。

 そうなるとまず内紛では崩壊しない安定性の高い国になる。


 『国は3代で成り、7代で朽ちる』


 良く言われる格言だが、この3代は統治者だけを意味するものではない。民衆における3代目、つまりその国で教育された世代がある程度の年齢に到達することだ。

 そこまで思想統括ができれば、後は他っておいても安定する。

 現代の日本や古代の大ローマ帝国やギリシャの各都市国家がこれだろうな。

 このレベルまで政治が安定すると民衆の興味は政治より娯楽に傾きやすい。


 ちなみに7代で朽ちると言うのは外敵が現れるからだ。

 大ローマ帝国におけるアッティラやギリシャにおけるスパルタのような強大な外敵による侵略で朽ちる訳だな。

 世界一の文明でもそこで足踏みしていれば何時か誰かに追い越されるのは当たり前だから。

 そう言う意味では日本が崩壊するとすれば、それは外敵の攻撃によるものになるだろうな。

 逆に学力至上主義の韓国は、これから20年が勝負どころか?


 大分脱線したが、何が言いたいかと言うと…。


「ルナスフィア国内における最高学府を設置し、最大限の教育を施すことはもっとも意味があると言うことだ」

「言いたいことは分かるんだけどね…」


 ぐったりとした顔のトール叔父と一緒に頷いている5人の男。

 俺が学生をやる予定の為、学園を運営するスタッフが必要になり、白羽の矢が立った者達だが、新設学園の学科長を任せると言われて喜んできてみれば、その為の勉強と称して、カリキュラムの作成に簡単な予算編成の基礎を習い。

 ついでに学府内でアラビア数字を採用させる為の準備までさせたせいで泣き付いてきた。


「ちなみに叔父さんは、これに加えて学園運営の為の勉強もしてもらう予定だけど?」

「ちょっと待って!

 僕はただの絵描きだよ!」

「文句は爺さんに言ってくれ。

 ここのメンバーは爺さんの推薦で集めたんだけど?」


 そう言われると黙るしかないのだろう。ガックリと肩を落として書類に向き直った。

 まあ、そうだろうな。

 ここで『出来ません』と言えば、爺さんと爺さんに紹介した地元の貴族の両方の顔を潰すことになるのだから、とてもそんなことは言えんだろう。

 そもそもこの世界で教師と言う立場に付く者は、腕っぷしに自信がない子爵や男爵家の第三子以下が殆どだ。

 地元の貴族の不評を買えば実家にも迷惑が掛かる。

 つまり爺さんの誘いに乗った時点で彼らの運命は決まっていたと言うわけだ。

 この世界は情報に溢れている訳じゃないから、教師と言っても普通は一芸を極めた者でしかない。

 前世の小中学校教師のように算数も国語も教えられるものではないと理解もしているのだが、俺自身忙しすぎて手が回らないのだ。

 教師連中の与党勢力と学生による与党勢力を用意して、学園内部の腐敗を防ぐ機構を構築する必要がある。

 その中で、俺が学生側を主導する以上、コイツらが教師側の統制を取ってもらわないと…。

 …さて、そろそろ時間だな。


「それじゃあ叔父さん、後は任せる。

 俺は一期生候補と顔合わせをして来るから」

「…ああ」


 項垂れた叔父達を残して小会議室を後にする。

 向かうは迎賓館。そこには俺の婚約者におさまった少女達が学閥形成に選ばれたまともな貴族子女をもてなしているはずだ。

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