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転生領主とその周辺  作者: しから
内政チートの始まり
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帰ってきたら仕事が山積みだった件

赤緑 27日



 10日に及ぶ滞在を終えて帰ってきたルナライト伯爵領都レルテは異常に活気に満ちていた。

 馬車の中にまで響く呼び込みの声が聞こえる度にビクッとしながら、俺にしがみつくリンラが面白いが、山岳の小国クリングオルフで育った彼女に、多民族国家ルナスフィアの喧騒は驚きのものだろう。

 サート領も滞在の終わり際には、多くの貴族が集まってそこそこの賑わいになっていたが、そのレベルの喧騒がレルテの平時だったりするのに、今はそれ以上の活気に満ちているからな。


「あの、ルナライト伯爵領都はいつもこんなに賑やかなんですか?」

「流石にそれはないと思うが?」

「そうね。お祭りでもやっているのかって喧騒よ。

 けど、この時期にお祭りはなかったはずだけど?」

「少し聞いてきてもらうか?」


 この街で生まれ育ったルシアも知らない理由で賑やかだと言うなら、念のために情報収集をさせるべきだろう。

 原因は俺達の出立直後に始まった学園都市建設による特需だろうが、確証もないしな。


「失礼します。若様」


 様子を見に行ったはずのメイドが途中で引き返してきた。

 ガタイの良いおっさん人狼を連れて。


「レオンか。

 俺達が帰ってくると聞いて待ち伏せていたな?」

「はい。

 ガーランド様よりハージヒルム城に着くまでに現状報告をせよと命じられました」


 現状報告が必要?

 こいつが帰ってきているのだから、西部領域の混乱は粗方収まったと言うことだろうに?

 面倒な仕事を押し付ける気じゃないだろうな?


「現在、西部全体の混乱は収まりつつあります。混乱に乗じて盗賊団が増えるやもと言うこともなく、むしろ被害は減っているようでガーランド様が首をかしげていました」

「不思議でもなんでもないぞ?

 食い詰め者を日雇いの仕事で大量雇用しているだろう?

 今までは職を始めるまでのハードルが高くて、働けずに賊徒に堕ちるしかなかった奴が働けるようになったんだ。

 真っ当に働いて真っ当な金で生きていけるならそちらを選ぶのが普通だ。

 それで残るのは純粋な悪党共だが、食い詰め者がいなくなればそちらの排除に注力出来るだろう?」


 この世界の問題はアルバイトがないことでもあったんだ。

 少し日照不足で収穫が落ちれば、生きるために他から奪うしかなくなる。

 夏は農民、冬は山賊なんてどこでも見られる光景だろう。

 大きい街なら冬の間だけ短期で働く仕事もゼロではないのだろうが、一斉に近隣の村から出稼ぎに来られても需要に追い付かない。


 現在は初夏だが、先の争乱で作付が出来なかった者も多いだろう。

 それなら、今年は畑を休ませて出稼ぎで稼ごうとするのは十分考えられ、これまで賊働きで稼いでいた奴が、街作りで稼ぐようになるわけだな。


「領内の治安に関しましては若様の思惑通りに進んでおりますかと。

 ですが、冒険者ギルドが少し騒いでおりまして…」

「日雇いの単純労働の斡旋は連中の利権だからと言いたいのか?」

「色々と言ってきてはいますが、極論すればそう言うことかと…」

「低ランク者や戦闘能力の低い者への労働の斡旋をしたいのは分かるが、冒険者ギルドの本質ではないだろうが」

「現在の冒険者ギルドは少なからず人材派遣の側面を持っていますから」


 今回の雇用を冒険者ギルドを通さずに行ったから、手数料が取れないとぼやいているだけだな。

 人材派遣にはある程度の双方への信頼が必要になる。

 いざ、雇ったら能力不足だったとか、満足に働かないとかな。

 冒険者ギルドを通して、雇用すればそう言う問題を若干は予防できるかもしれないが、連中だってその労働者の一から十を全て知っている訳じゃないし、確実性は乏しい。

 なのにギルドを介した分余計な時間が掛かる。


 現代日本のように福利厚生があるわけでもないのに、審査するから2、3日待ってくれなど言っていたら、せっかく来た者が闇ギルドに流れてしまう。

 この手の問題は古今東西を問わず昔から為政者の頭を悩ませてきたものだ。

 昔からの対応は街の外壁周辺にスラムを配置して上京脱落者の受け皿にする方法等があるが、それは後々厄介になる。


「…後で少し話をしよう」

「お願いします。

 後は、西部閥の子女が集まっていますので後程紹介します」

「そちらは学閥形成の件だな?」

「はい。各貴族家もその辺はわきまえた人選をしています」

「それは助かる」

「はい。事前に根回しをした甲斐があります。

 後は竜族との折衝と新産物の確認をお願いします」

「新産物?」

「反戦遊戯です。

 既に五千組程度の生産が完了しておりますし、来月初旬には計画を実行に移せるだろうとのことです」


 …ああオセロのことか。

 予定量の一万セットまで折り返したようだし、宰相閣下や各領閥に招待状の用意がいるな。


「順調だな。

 現状の駒と板を別々にした生産ラインを維持して機密保持を充実してくれ」

「はい。

 後は…」

「ちょっと待て、まだあるのか?

 俺はまだ次期当主だろうに…」

「しょうがありませんよ。

 先程までの半数は次期当主のお仕事で、残りは若様の考案した新規事業の指揮でしょう?」

「うっ」


 呆れたと言う顔のレオンに反論を封じられて、呻くがこの苦労人は10歳児に手心を加えてもくれない。


「後は他の地域や諸外国を招いての晩餐会の準備です」

「…先日までクリングオルフで散々やって来たんだが?」

「関係ありません。

 若様がやらかしたせいで伯爵家のコネクションは非常に弱くなっていますので、その責任を取ってください」


 執事長を始めとする大半の使用人をクビにした件だな。

 大鉈を振るった分各人のコネクションの引き継ぎもなく、体制を作り替えたからな。

 こればかりはしょうがない。

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