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転生領主とその周辺  作者: しから
内政チートの始まり
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温泉はあったのに、

赤緑 6日


 ルナライト伯爵家から北の平原地帯を越えて、更に山を2つ越えた先にある盆地。

 年中霧に包まれたその盆地が金の髪の吸血鬼達と呼ばれる種族の拠点の1つだそうだ。

 事前情報は霧だと言っていたが、いざ着いてみると湯気だと分かる。

 温泉の知名度がないせいで霧扱いなのだろう。


 最初に期待していた和風テイストな国のイメージは残念ながらなかった。

 サトウ家じゃなくてサート家だし。黒髪の人族じゃなくて金吸血鬼(ゴルドパイア)なのだから、当たり前の話だったんだが。…ちくしょう。


 さて気を取り直して、今俺達はペリル子爵家の後方撹乱をしてもらった礼を兼ねて訪れたサート領家の居城アオンに来ている。

 同行者は、ルシア、リム、アイシャの3人。護衛兼世話役に人狼メイド15人。

 まさかの俺以外全員女と言う肩身が狭い道中だった。

 理由は分かっているんだぞ?

 ゴルドパイアもハーピーも完全女系種族、男が生まれない魔族の系譜で、ここはそんな彼女らが自衛のために集まった集落が発展して出来た国だ。…自衛の意味の中には氏族存続も含まれる。

 古くは男を拐ってきて、……やめよう。竜族も同じ穴の狢だったわ。


 魔力の質が男を誘惑する特性を持っているゴルドパイアの集落に魔力抵抗値の低い黒狼の騎士は連れてこれない。

 俺? 魔力抵抗値は最高クラスの竜族だし問題なし!

 と言う判断だった。まあ文句はない。ただでさえ人員再編に貴族家の移動等で人手が要るところでウチの人材を取られたらたまったものじゃない。


 文句があるとすれば、せっかくの温泉付きの館を迎賓館の代わりに提供されたのに着いてから2時間未だに入れないことだろう。

 ……美容に良い温泉と聞いた途端に全員目の色を変えていたから嫌な予感はしたのだが、一緒に入ろうと言うお誘いを辞退して使い終わったら、呼びに来てほしいと言ったのが運のつきだ。

 ……さすがにこの人数差で優先権を主張する度胸はなかった。


『体は10歳なんだし、気にしすぎじゃないの?』

『余計に辛い小学4年生にもなって女湯に入るようなもんだぞ?』

『その辺の感覚が分からない。二次成長してないなら、男女の括り何て気にしなくても』

『精霊のアリスから見たらそうだろうがな。大体、3人の10代前半組だけならともかく、10代後半から30手前のメイド達と一緒とか恥ずかしいだろうが』

『…まあ良いけど。ここに1週間も泊まるんでしょ?変に気を回すのは疲れるんじゃないの?』

『しょうがないだろう? 元々、この国では男の立場が弱いんだ』

『女しかいない種族だものね』

『この世界は不思議だよな。出生性別が偏るのはまだ分かるが、完全にその性別の者しか生まれない種族とか遺伝子に喧嘩売っているとしか思えん』

『神の呪いに遺伝子も何もないと思う?』

『神の呪い?』


 ゴルドパイアは、元々初代ルナスフィア王が討伐した死者の王に仕えていた種族だろうに?

 死者の王が何らかの神の配下だと言うことか?


『ルナスフィア王が討伐した死者の王と呼ばれる不死者の名前はホーブル。地霊から派生した昇格神らしいよ?』

『昇格神? 日本の怨霊信仰みたいな物か?』

『違うと思う。狂った精霊は相反するファクターを持つことで混沌側に少しずれるの。完全に混沌に引っ張られると力の渦になって自壊するらしいんだけど、運悪く安定しちゃうと半精霊になっちゃう。

 半精霊は強い自我を持つエネルギーの塊だから、そこから純化が起こると神性を帯びて神になる。逆に煩雑化すると魔性を帯びて悪魔になるらしいよ?』


 …そう言えば、初代が死者の王を討伐するのに使った神器は概念破壊兵器だったな。

 あの時はわざわざ低位世界に降りてくるわけないかと否定していたが、この世界のものが昇格する可能性があったな。


『つまりゴルドパイアはそのホーブルに呪われた種族と言うわけか?』

『当時は呪いじゃなかったみたい? 地の精霊力を限界以上に浴びて、不死身の性質になったんだから祝福とも言えるかな?』

『精霊力と親和性が強かった巫女だけが生き残った訳だな?』


 そう言った霊的な力は女の方が相性が良い。魔族の高魔寄り魔族が女性の方が生まれやすいのと同じだ。

 同じように祝福された男もいたのだろうが、親和性が悪くて不死性が不安定だったんじゃないか?


『その祝福がホーブル討伐で逆転するの。地の精霊力が供給不足になって、その対処法が動物の生き血を啜ること』

『それで吸血鬼か…』

『そうらしいよ? けど、生き血を啜る魔族となれば恐れられる。特に自分達をそう言う存在に貶めたルナスフィア王国とは激しくやりあっていたみたい』

『何となく読めた。大地深くから湧く温泉は土の精霊力が豊富なんだな?』

『うん。土と水がメインで僅かに火の精霊力を持つ感じ?

 それにここは年中湯気が出ていて日光を抑えるじゃない?』

『日光もダメって、あちらのフィクションみたいだな?』

『活性化した地の精霊力は駄目なんですって』

『難儀な。少量日の光に当たる位は問題なしと言うことではあるな?』

『らしいよ? 1日炎天下にいたらヤバイけど』

『普通の人でも熱中症で倒れるわ。温泉に浸かるようになって血を吸う必要がなくなってからもルナスフィア王国にちょっかいかけていたんじゃないか?』

『不老不死じゃなくなったから子供を作る必要性がでたからでしょ?』

『……この世界、根本的に男が不足してないか?』

『魔力が幅を効かせている世界だもん』


「フォル様、お風呂空きましたよ?」


『アイシャちゃん?』

『……みたいだな?』


 俺の婚約者の1人として来ているはずのアイシャが何故呼びにくる?

 伯爵家やセルラニア王宮ならまだ分かるが、ここは他の勢力の勢力圏だぞ?

 …まあ良い。ひとまず温泉に入るのが先だ!

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