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転生領主とその周辺  作者: しから
動乱の幕開け
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王の裁定

緑赤 29日


 魔大陸最大の国家ルナスフィア。

 一種族による専制国家が多い中にあって、様々な知性種の自治権や統治権を認める国。

 その王城ザルトヒルム謁見の間には、多くの者が左右に並んでいる。

 国勢を示すようにその4割程は人間とほぼ見た目の変わらない魔人族だが、1つ目の大男や腕を4本持つ女等の異形の者もいる。

 王国より子爵以上の爵位を賜わる貴族達だ。

 残念ながら争乱が続いている南部閥の参加はないが、西部からは筆頭ガーランド伯と3人の子爵が参加している。

 玉座に座るのはガーランドを少し穏和にしたような初老の王アトラス・ルナブラッド。

 中央には鎖で両手を繋がれたキルケ子爵、ペリル子爵、ガムト子爵の3人が立たされている。


 ……ここは断罪の場だ。


「まず、今回の西部の動乱の引き金となったのは、ガムト子爵息セルドアの現ルナライト伯への暴言。

 正統な伯爵家次男であったガーランド卿を簒奪者と称する以上は明確な証拠を出してもらいたい。

 また、嫡子の不当な発言にも関わらずそれを明確に罰しない理由は何か?

 その上で爵位保留中の身でありながら、挙兵をした弁明を聞こう」


 宰相メリウスが最初に指差したのは西部動乱の原因となったガムト子爵。

 その内容のあまりの酷さにガーランド越しに見える対面の貴族も呆れ顔だ。

 そんな居心地の悪い空気の中で、先祖代々臆病なアレスがまともに弁明を出来るわけもなく沈黙したまま。


「分かっているのか? 弁明なくば、それがガムト子爵家の本意とみなす」

「そんな!」


 しびれを切らした宰相の言葉に思わず叫ぶガムト子爵だが。

 当たり前だろうに、既に子爵本人の死罪は確定している。後は何処まで罪を負わせるかの問題なのに、当の子爵はまだぬるいことを考えているようだ。


「当然だろうが! 既に貴様は3度殺されても償えぬほど罪を犯しているのだ‼

 こちらは貴様の罪が貴様の直系筋に及ぶだけなのか、親族一同なのか。はたまた郎党尽くかを知りたいだけだと弁えよ‼」


 この宰相も仙人みたいな見た目の爺なのに役者だよね。既に郎党は全て黒の竜の里に送った後なんだから、返してくださいとは言えない。多分今頃生きていないし。

 どうとでも封殺できるけど、激しい怒りを演出して、最初から抗弁の機会を奪えば、楽だと考えているのだろうか?


「メリウス。

 どうやらこの者は王国貴族としての自覚もないようだ。

 処分はそちへ任せる」

「分かりました。引っ立てろ!」


 アトラス陛下の裁定で、宰相に一任されたガムト子爵が周囲の兵士に引っ張られて、引きずられながら退室する。助けてとか色々言っているが相手にする奴はいない。


「次いでキルケ子爵。

 混乱に乗じて海軍を動かして、争乱の規模を拡大させようとしたこと並びに勝手な統治を続け、これまで自領の発展を自ら阻害した罪は重い。

 けれど今回の戦いに置いては速やかな降伏により、臣民の犠牲を減らしたこと。また、領地の経営を悪化させた原因は彼女の親にあり、彼女自身は爵位を継いで間もないことを考慮し、転封と名誉準男爵への降爵を妥当と考える。

 キルケ子爵よ、そなたの抗弁は?」

「ございません。陛下のご恩情に感謝いたします」


 深々と礼をするキルケ子爵。

 エグいな。

 名誉準男爵と領地の転封ってことは難しい新天地を経営して、それを軌道に乗せなければ平民にされると言うことだろう?

 これで平民に落とされたら、貴族としての能力不足と言う扱いになる。

 問答無用の爵位剥奪なら運が悪かったと周囲の同情も買えるのにそれさえ許さないか。

 現子爵はともかく、キルケ子爵家そのものは相当王家を怒らせていたな。


「最後にペリル子爵」

「私は悪くないと思うのです。ダガル侯爵の口車に乗せられただけですから。

 ……もしかして降爵と転封ですか?」


 宰相が罪を告発する前に口を開くなよ。このルーは仲間内では強気だが、普段は臆病と言う風に爺さんから聞いたが、同じ臆病者でもガムトと方向性が違うな。

 ガムトは萎縮して黙るタイプ。こっちは言い訳を重ねて少しでも安心感を得ようとするタイプか?

 ただ、言い訳の内容が酷いし、発言権のないのに勝手に喋りだしたらより心証は悪くなるだろうに。

 ほら見ろ。宰相メリウスの顔にはしっかり青筋が浮いている。


「…まず、こちらが貴様の罪を明確にして、それに対する反論を聞くが筋であろう?

 何故発言を許される前に釈明をする?」


 低い声の宰相に糾弾されて真っ青になるペリル子爵。…いや、遅いから。


「さて、ペリル子爵は己のプライドを満たすため無意味に挙兵し、挙げ句、民の保護より自己保身を優先する態度は甚だ許しがたい。

 よってケンタウルスは王国からの統治権を剥奪。自治領移動とルー・ペリルの直系筋における族長被選権の凍結を命じる」

「部族干渉だ!」

「国である以上、国民の保護を優先することが定められておるわ‼

…失礼。

 部族干渉はルナスフィア王国としても承知であるが、民あってこその国である。自治権を理由に同族の弾圧を行えば、処罰対象になるは自然なことと王国は考える。

 …皆様方のご意見は?」

「「「異議なし!」」」


 ルーへは弁明の機会を与えないらしい。……ある意味当然か。

 ケンタウルスは潰しが効かない種族だ。鉱山を掘るのは効率が悪いし、農耕にも向かない。だから、これまで半ば放置のように適当に統治権と自治権を与えて自分達で解決させてきた。

 しかも専祖専孫特性の異形種。他の種族との間に子供が作れない性質の種族だから、余計に誰も関わりたがらなかった。

 こいつらのこれまでの役割はクリングオルフへの防波堤だったわけだが、ルナスフィアとクリングオルフの国力に圧倒的な差が生じた今は、意味もなしていなかった。

 多分、何処かの国との最前線に自治区を移動される。

 今件で分かるようにお馬鹿なこいつらに統治権を与えておくのは危険と判断して、その土地を守ってきた貴族の傘下に入れられるのだろう。

 後は関係のある領主達で詳細をつめるだけか。


 とにかく、俺が起こした西部動乱も決着した。後は関係者へお礼をしに行くだけだな。

 

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