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転生領主とその周辺  作者: しから
動乱の幕開け
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黒の里の三竜姫

「お初に目にかかります。現在の黒の竜の里の調整役をしています。リリス・クエント」

「同じくジュリア・メイルですわ」

「右に同じ、ティン・クリムゾンと言う」


 遠話晶石で連絡後、1時間程度で執務室を訪れた十代後半の少女3人。

 他の竜達はエントランスを開放して休憩してもらって、まとめ役の3人が訪ねてきた訳だ。


「始めまして、フォルセウス・アルヴィスです。ルナライト次期伯爵として、黒の里の名高い美姫3人を迎えられた光栄を…」

「良いわよ?

 今回の件は私達にも利益があるのでしょ? 今後のことも含め仲良くしたいもの。

 堅いのはなしにしましょう?」

「助かります。幾つかの件の確認をしたいのですが、時間の方は…」

「ガムト領って聞いたがそれなら、キージョ峠の向こうの盆地辺りだろう?

 私なら半日くらいで着ける」

「夜の強襲は難しいでしょうし、この街で一夜を明かし、明日の日の出と共に出立しましょうか」


 ティンが掛かる時間を示し、ジュリアがのんびりと行軍日程を調整する。

 ティンは深紅(クリムゾン)と言う名なのに竜種としては飛行能力が低い地竜の血統。その幼竜の彼女が半日と言うなら、今回来ている連中はそのスピード以内でガムト領へ着けるだろう。

 しかし、今から行けば夜になるのも間違いないし、目の前に獲物がいる状態でお預けは不味いな。タガが外れて暴走する者が出ないとも限らないし、夜戦で双方の被害を抑えられるほどの練度もないだろう?

 必要な数のお土産を出来ないと彼女らはともかく、配下は納得しないだろう。

 かと言って近くの街でウチの国民を略奪されても困る。


「でしたら迎賓館を開放しますのでそちらを利用してください」

「あら、良いの?」

「同族に対する手助けですよ」


 …もうすぐ戦いが始まると気を昂らせている竜を市街地へ放つのは怖いんだ。

 西部の魔族達に恐れられて、こんな上質な遊撃戦力の運用を制限されても困る。

 ガス抜きにマーネント以下の上級家令を出せれば良かったんだが、坑山へ送った後だし、そもそも数が足りないな。

 能力と忠誠心はともかく、血筋くらいは優良物件だったんだが…。


「失礼します。お茶をお持ちしました」

「お三方、一先ずそちらのソファーへどうぞ。詳しい擦り合わせをしましょう」


 お茶の用意ができた来客用のソファーへ移る。アイシャも速やかに俺の後ろに移動して、話し合いの準備が整った。本当は姪御3人衆の紹介もしたいが、出掛けている以上は次回に繰り越しだ。


「まず、今回の紛争解決の為の戦力派遣についてですね。

 殆んどの戦場で当方の優勢が確定していますが、キージョ領主ガムト子爵家がここに来て反乱を起こしました。

 封じ込めをするのには問題ありませんが、クリングオルフ国と結び付かれるのは避けたい。

 しかし、山間の盆地に領土を構える彼らを地上戦力で掃討するのが難しいと思われるのです」

「戦力派遣?

 私達は同族がルナライト次期当主となったと聞いて、お祝いに来ただけですよ?」


 ああ、そっちの建前も確認しておく方がいいか。


「そうでしたね」

「ええ、しかし急な話でしかも訪れた伯爵家は内乱の最中、ここは祝儀代わりに内乱鎮圧の協力がいいかなと申し出たい訳です」

「でしたら、こちらは内乱の協力者を好きに処分して貰う権利を差し出します。

 我々も同族の急な来訪に土産の1つも出せないのは問題ですので」

「そう言うことなら角も立たないな。後日、改めて祝いの品を贈る。それは私が音頭を取るぞ?」

「そうね。ティンが動いた方が自然でしょうし」


 内乱に協力しているガムトの従士は普通なら戦犯奴隷として、坑山に送られて終わり。

 一生石堀をしても金貨数十枚の収入が関の山だ。

 …そもそもやつらが手で1ヶ月掘る量より、地属性や石属性の者が1日で採掘する量の方が遥かに多い。

 労働力を期待しているのではなく、処刑の手間を省く目的なのだろうが、その程度の収入よりも竜族に差し出して恩を売る方が利益率が高いと言う考えだな。


「それではその時にこちらも改めてお礼を出すことにしましょう。

 …恐らくガムト子爵軍は領民を徴集しているでしょう。その者達も一端まとめて捕らえてもらえますか?」

「良いのかしら?」

「ええ、アムンとセッセの両騎士爵が翌日に着くように手配します。私も翌々日にはそちらへ参りますので、交渉で取り戻した形に持っていきたい。

 下手に加減をして子爵やそれに準ずる者がクリングオルフ方面へ逃げる時間を稼がれては困ります」

「…分かったわ。そのように手配します」

「助かります。次いでトーン大森林の件ですが」

「その件はダイクライム殿を私達の里へ遣わしてもらえれば、里の方で独自に動きます。

 伯爵家の関与は出来るだけ減らすべきでしょ?」

「ありがとうございます。こちらは引き続きアントン家を経由してのエルフ支援にのみ動きましょう」


 …2件共こちらの思惑通りに動いている。後はフィンとメルの2人についてか。

 あの2人はどのような立ち位置に持っていくかだが…。


「そう言えば、フォルセウス殿には3人の姪があるとか?」

「ええ。とは言え、2人に関しては私も知ったのはつい最近。兄自身未だ知らないはずですので…」

「改めた方が良いかしら?」

「そうですね。兄を含めて話し合いの機会を設ければ、幸いかとも」


 先送りしたいが向こうはそう簡単に許してくれないだろうと思う。けれど駄目元でと言う感じで言ってみた。


「そうですね。日を改めましょう」

「よろしいので?」


 駄目元があっさり通った。何かあるのか?

 まあ良い。今はこちらの足元を整理するのが重要だ。

 …後は大した案件もないし、雑談を装って魔大陸各国の情報をどれだけ手に入れられるか。

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