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転生領主とその周辺  作者: しから
動乱の幕開け
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動乱を告げる馬車が行く

 お披露目会から1週間後、8台の馬車が久し振りに主を乗せて城門を抜けて行く。


 お披露目会の夜に一度レルテにある各自の別邸に戻った貴族は、翌日に再度登城して打ち合わせをした。

 と言っても、改めて俺を紹介した後に次期当主の指名で、内部の整理をするから伯爵家の影響力が弱まる可能性があり、個々に領地の安寧に尽力して欲しいと要請したにすぎない。

 …動乱が起こるから準備しろとは言えないわけだ。

 その要請を快諾した3つの子爵家と8つの男爵家。20を超える騎士爵家はその日の内にレルテを出た。


 翌日に5つの分家の者全員が炭鉱送りになった。元の刑罰である処刑に次期当主指名の恩赦が下りたことで減刑と言う話になっているが、実際は彼らは一応、旗頭として利用できるから餌にする気だろう。

 同じ日に爵位保留となったガムト卿の家族が解放されたのでまず間違いない。

 爵位保留は正式な判決が王家より下るまで元々の爵位同等の権限を貸し与えられた状態。

 このまま王家の裁定を受ければ、改易は逃れられないが、ルナライトが許せばただの降爵で済ませることも出来なくないだろう。…と、今は愚かな夢でも見ているんじゃないか?

 …こちらには俺なりに少し罠を張らせてもらった。ダガル侯爵家全てが敵とは限らないだろう?


 その翌々日お披露目会から4日後に、リムとフィン、メルの3人の姪とアイシャが合流。そのお付きとして、ジンク郊外にある魔狼族の本拠地『黒の森』から多くの侍従が入城した。

 …炎の精霊の領域にアタックを掛ける兄貴達の合流は当分先になるらしい。


 その侍従達と入れ替わるように、それまでハージヒルムに仕えていた侍従の7割が、退職金替わりに半月分の給与を与えられて放逐。

 素行のまともだった2割は昇格。

 家内の指図を私的に行った執事長マーネントを始めとする残り1割は同じく炭鉱送りに。…こいつらも餌だろうな。


 そして、今日になって自家の将来に不安だらけの子爵、男爵が帰路に付く。

 各自が家に着いて、3日くらいで蜂起するくらいかな?

 再来週までは掛かからないだろう。

 もうすぐ西部の3割が造反する大規模な動乱が始まる。


 けれど俺のやることはない。ハージヒルム城の守護が仕事だが、暴れる者などいないし。

 ……ヴェル達が内応でも企むかな?

 俺の叔母の内、二女ナナは処刑。……この1週間で唯一の死者だな。

 その子供達は継承権剥奪の上で父親の実家へ戻されて、ジーンズ子爵の采配を受ける。ミーティアもそうなるんだろうな。

 長女ヴェルとその家族は別荘で妹の死を弔いつつ余生を送ると言う建前の飼い殺し。

 長女ルシアが俺の正妻に決まったので、修道院に送るのは伯爵家の体裁が悪いからだろう。

 三女アンナの家族は継承権剥奪の上で修道院送り。

 他の親族も継承権を放棄させられて、ハージヒルム城を出されたのだが?



 ……良縁奇縁はあるもので。


「キリエ様に絵を教えている画家のトールです。こちらにいるはずの妻と娘共々、よろしくお願いします」


 帰路に付く馬車達と入れ違いで入ってきた3台の馬車。その中の1つから出てきた男がそう告げて……。


「このドラ息子が!」


 ガーランドの爺さんに殴り飛ばされていた。


「トールちゃん。少しお話ししましょうか?」


 いつの間にか俺の側室に決まっていたキリエとその姉妹を迎えるとあって、同席していた祖父母が一緒に現れた男を引きずって退席してしまった。


「…あのトール先生はどうされたのでしょうか?」


 その様子に硬直していたアントン姉妹の二女が呟く。


「ウィン。彼は?」

「貴族に絵画を教えている先生でトール様と言うらしいのですが詳しくは……」

「素性の知れない男を?」

「いえ、魔狼族の方が一緒で、逗留していた高級宿の主人も高貴なお方ではあるが我々が言うわけにいかないと…」

「そんな男が何故?」

「先生と言うのは本当らしく、半日指導されたキリエが描いた絵は身内贔屓なしで素晴らしかったのです。

 トール先生は、キリエの描いた絵を見て素晴らしい逸材だと感激して、そのまま今日まで指導を…」


 元々、キリエ達を物騒なお披露目会へ出席させる気はなく、アントン騎士爵夫妻とジェジェ。その婚約者のルクス・ダゴン…セリオン爺さんの孫の1人の出席だったが、予定に3日遅れの入城はあの男が原因か。


「叔父様らしい」


 ため息混じりのルシアの言葉で、確信が持ててしまったが。


「と言うと?」

「この大事な時期に写生旅行に出られたトール叔父様です。ラケシスの父親の」

「それでは私達は……」

「気にしなくて良いわ。先程までお忍びだったんだし、今は伯爵家の籍を外れているはずよ?

 それより、アントン家の姉妹達と言うことは私の義理の姉妹にもなるのだし、少しお話ししましょう?」


 …ルシアが羨ましい。ほのぼのとしたお茶会に参加できて。俺は絶対に。


「若様、至急執務室へ来るようにと……」


 やはり、呼び出しがかかった。その伝令役アゼルと一緒に執務室へ向かう。

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