歓迎会と言う名の何か
この旅行で初めての少人数移動半日。
ハージヒルム城にある迎賓館にて旅装を解いた後、体を拭いて良さげの仕立ての服に着替える。
俺の髪の色と同じ白が基調の服で全身真っ白だと思いつつ、すぐに歓迎会があるからと言うメイドに急かされて大広間へ移動。
俺の対応をしたのは駄メイドだな。どう見ても騎士爵家の人間の面倒をと思っているのが見てとれる。
こいつを手配したのも伯爵家に相応しい侍従とは言えんだろう。
貴族連中の評価は爺さんに任せるにしても、家臣達の人事はこちらが引き受ける必要があるだろうし、指名後にまとめてクビだな。
偉いのは伯爵家であって仕えている自分でないと言う自覚がないとは…。
「良く似合っているではないか! ダムフォード公子」
「ありがとうございます。ガーランド様」
パーティー会場に足を踏み入れた途端に声をかけてくる爺さん。友好国セルラニアの貴族とは言え、たかが騎士爵の少年に歓迎会を開き、真っ先に声をかけてくるルナスフィアの重鎮。
この時点で炙り出し失敗じゃないかとも思ったが、爺さんの意向を知りながら、あんな駄メイドを遣わす辺りこの家は大分傾いている。これぐらいあからさまな方が良いか?
「私如きの為に多大な歓迎、感謝いたします」
「何の騎士爵位でありながらセルラニア王の信頼厚いダムフォード家の方に身内での歓迎会で正直申し訳ないと思っている」
周囲の喧騒が大きくなる。身内と言っても10人を越える人とその付き添いや護衛を含めれば、30人規模だからな。
…このやり取りを見て俺への対応を良くするなら能力はともかく、爺さんを当主としては認めている証拠。
悪い対応のままなら、既に他の人間へ傾いている奴。
一番困るのは、距離をおいた対応だな。職務に忠実なのか、それとも……。
「10日後に当家の寄子を集めて大規模なパーティーをする。
その席にて改めて歓迎しようと思うので、是非逗留してくれ!」
……早いな。早速餌を撒くか。
「この時期に大規模なパーティーですか?
何かありましたかね?」
「長らく決めかねていた次期当主を指名しようと思ってな。セルラニア王国の者として見届けていただきたい」
周囲の喧騒が更に大きくなる。多分、自分達の時代が来る。長い雌伏は終わったと思っているんだろうな。……お目出度い連中。
「未だ若輩。騎士成らざる身ではありますが、かような慶事であればこの眼に焼き付け、陛下へと伝えることに致しましょう」
「それはありがたい。セルラニア王国の後押しを得たも同然。我が胸襟にある次期当主も安泰じゃ!」
「お爺様。それは本当なのですか!
次期当主は既に決めていると?」
横合いから詰め寄ってきた少女が叫ぶ。俺の従姉だと思うが、出来損ないだな。
この場は自国の爵位の優劣ではなく、他国との外交に等しい状況。絶対にやってはいけない行動をとっている。……挑発しよう。
「これはどういうとでしょうか? ガーランド伯?」
「申し訳ない。ジェジェ。お前は何をしている!」
「何故ですか!
相手はたかが騎士爵家の子供じゃないですか!」
「この愚か者が!
相手が他国の貴族である以上はこれが外交であるとも理解できんか!」
「お父様、何もそのように怒らずとも! あなたの孫ではありませんか?」
激怒する爺さんに母親と思われる女性がとりなしに来るが。
「ふむ。あなた方はセルラニア王国がルナライト伯爵家以下であると主張されるのか?
これが私の歓迎会である以上報告の義務があるのですが?」
「下朗風情が!」
「……もう良い。レオン、こ奴等2人を自室で謹慎させろ!」
その言葉に速やかに動く従士達。……こちらの統制は完璧だな。
ただ、周囲の連中はこちらを睨んでくるから、他は上手く統制出来ていないか?
少なくともこれで俺との間に距離を置くのは有能且つ忠実な配下のみだろう。
小賢しい小心者は敵として動くはず。
問題は……。
「愚孫が迷惑をかけましたな。これであなたに悪意を持つ者が出ぬとも限りませんし、信頼の置ける護衛を用意しましょう」
「まさか! 現状で私を害するは拷問の末の処刑も覚悟の愚行でしょうに?」
「勿論、伯爵家にそのような暗愚がいるとは思えませんが、念を入れるに越したことはないでしょう?」
? こんなことを言えば手を出す者はあの親子の手下に限定されてしまう。爺さんは何を企んでいるんだ?
「…ありがたく」
「そうじゃ、話題は変わるが近くダゴン元侯爵が当家に逗留する。彼の御仁とは親しいとか?」
「兄の親友と言うことで良くしていただいています」
「ふむ。彼の家は西魔洋沿岸の各地に強い影響力を持つ。良ければ仲立ちを頼めぬかのう?」
「喜んで」
…情報をバラ撒くなぁ。分家筋にもまともな人がいるのか?
やはり付け焼き刃に過ぎない俺が海千山千の爺さんに勝つのは無理か?




