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転生領主とその周辺  作者: しから
旅立ち編
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47/108

快適な船の旅

 丸窓から射し込む光が丁度顔を直撃していたらしい。眩しさに目が覚めたのだが。

 …食堂の隣、第2層にある俺の部屋に昼の光は届かない。かと言って、夕陽にしては眩しいような?


「おや、やっと起きたのかい。いくら快適な船旅でも少し寝過ぎだよ?」


 寝起きでボーとしている俺に声をかけてきたのは、部屋の真ん中に置かれた机で本を読むクライム。

 …あれ、本は1冊もないと言ってなかったか?


「これかい?

 昨日、擦れ違った商船から買ったクリングオルフの風土誌だよ?」

「昨日?

 昨日は釣りをしていませんでしたっけ?」

「フォルは昨日1日寝てたんだよ。今日はガントラックを出港して5日目、明日の夕方には魔大陸に着くらしい。海上都市ティルテでレリント号から下船。

 1泊して、翌朝中型船で港街ラッパへ移動する」

「ラッパから炎の巡礼路を使ってレルテへ?」

「途中でジンクで1泊してからね。

 レルテでも1泊して、翌朝ハージヒルム城へ入る」

「何で城下町で」

「フォルが出港を早めたせいだろ?

 レリント号がシャッダへ移動してすぐに急使を出したとして、私達がジンクに泊まる日の夕方に到着だ。

 それから向こうが迎え入れる準備をする」


 確かに携帯で今から遊ぼうとはいかないしな。


「…そうなると今日が船に泊まる最後の日ですか?」

「うん。だから夜に終航祭をするらしい。甲板で余った食材を焼いて、お酒も解禁される。…楽しみだろう?」

「飲み過ぎないでくださいよ?

 ただでさえ、酒に弱いんですから」

「大丈夫さ。

 それより今日は私達、初めてレリント号に乗ったメンバーは甲板に出るのは禁止だそうだ。

 皆、ティーラウンジでのんびりしているから、顔を出しなさい」


 露骨に話題を反らしたな。その内、酔っ払って痛い目に合うぞ。あ、合ってもらわないと困るか。


「…そうですね。着替えたら向かいます。

 ……」

「どうしたんだい? 首をかしげて。上着をさっさ羽織らないと風邪をひくよ?」

「いえ、何で軍船にティーラウンジがあるのかな? と思いまして」


 …食堂で十分だろう? 何でそんな無駄なスペースを確保したと言いたい。…あと、竜族の風邪 (のようなもの)は体内の精霊力の乱れだろうに服を着ているのは関係あるのか?


「この船は海洋冒険船として造られたと言っていたじゃないか」

「そう言えば…。それでも、軍船として改修されたら、撤去されるものじゃないですか?」


 武器庫にでもすればいいと思う。


「多分、レリント号の役割は旗艦だからだろうね。戦時は多くの貴族が乗船するんだろう」

「心の安定の為に必要ですか」


 戦争とは極論すれば殺し合いだ。自己保存本能が高まるからか、略奪や強姦と言った犯罪を行う者が増える。

 ましては、魔族軍は男女の比率は半々くらい。下手すると女の方が多いな。魔力量は女性の方が多いし、魔術師寄りの高位魔族になると女性しかいない種族もいる。

 そのせいで軍事行動に支障が出るのは困る。日本の慰安婦問題のように半世紀以上も揉める問題になりかねない。

 …あれは韓国がおかしいだけか。ベトナム戦争でそれ以上のことを韓国軍も起こしているのに、棚上げして日本から金をせびっていただけだ。

 そう言えば、あの時の韓国軍の最高責任者は、朴大統領の父親だっけ?

 ベトナム女性を傷付けた金で大統領になった女が女性の人権侵害を訴えていたんだよな。あれ。

 まあ、それはどうでもいい。

 軍人のその手の行動を抑えるのに、声を荒げても意味はない。

 一番楽なのはガス抜きの場を用意することだが、貴族の子女がそう言う行動をすれば、最悪、御家問題になりかねない。

 だから、日頃から騎士道の訓陶をし、且つ、こう言う形で『日常』を演出するのだろう。


『リムちゃんとアイシャちゃんは一昨日の晩から頻繁に様子を見に来ていたから、お礼を言った方が良いよ?』

『アリスか。分かった』


「ラウンジへ行ってきます」

「ああ」


 再び本へ視線を落としていた兄へ断りを入れて部屋を出る。



 ラウンジは船尾にあり、晴れている日には雨戸用の分厚い板が外されているのでとても開放的になっている。

 10人が座れる大型の丸テーブルが幾つも置かれ、隣の食堂からポットとティーカップ、焼き菓子等を貰ってこれば、下手な貴族家のサロンを凌駕する居心地の良さだ。


「あら、フォル?

 目を覚ましたの…」

「フォル様!

 良かったです! 心配したんですよ!」


 …訂正、自分より背の高い少女に力一杯抱き締められたら、どんな空間でも苦しいものは苦しい。


「ストップ!

 アイシャ、フォルが苦しそうよ!」

「失礼しました」


 リムが止めてくれたお陰でもう一度夢の世界へ旅立たずにすんだが。

 そのリムがこちらの手を繋いでいるのは何故だろうか?


「フォルが寝惚けて海に落ちないように手を握っているの! 悪い!」

「誰もそんなことは言っていないだろう?

 ああ、そう言えばちょくちょく見に来てくれたらしいな。ありがとう」

「何よ…。家族なんだから当たり前でしょ。…まあその感謝しなさい‼」

「わ、私はフォル様の分もカップを貰って来ますので、あちらのアントン家令嬢方とお待ちください」


 2人共顔が赤いし、調子が悪そうだったな。


『こいつらこそ、風邪でも引いてそうだな』

『あの状況でこの反応って…』

『何が言いたい?』

『別にぃ、これだから童貞はって思っただけ!』


 ティーラウンジを出ていくアイシャを見送りつつ、リムに引かれるままにアントン家の少女達が座るテーブルに移動する。

 10歳に当たり前のことを言った精霊は無視して、アントン家への応対を考える。


「おはようございます? で良いかな?」

「フォルセウス様は急に体調を崩されたと聞き心配しておりましたが?」

「ああ大丈夫だ。心配をかけた。

 明日には港に着くらしいから今さらではあるが、レリント号の乗り心地はいかがだったかな?」

「素晴らしいです。当家も職分柄、多くの船へ乗船したことがありますが、これほど快適な船は初めてです」


 …ウィンが対応するだけで他の姉妹は黙ったまま当たり前か。貴族同士での応対に異母妹が口を挟めない。


「5日も一緒に船に乗っているのに何であなた達はそんなに固いのよ!

 暇だから雑談しようで良いでしょ?!」


 この場で一番身分が高いリム(セルラニア第一王女)が文句を言うが。


「お前がいるからだろうに。他国の王女の前でざっくばらんとかやっては駄目なことだ」

「何でよ!」

「彼女達は伯爵家の寄子の家系だぞ? レリント号においてはお前が一番外様だと自分でも言っていただろう?」

「あんたの姪でしょうが!」

「重要なのは、家のくくりだろ?」

「むう。それじゃあ今だけフォルの婚約者でどうよ?」

「…なるほど、上手い手か。子供の口約束扱いなら問題ない訳だし」

「でしょ? …ウィンさん達もよろしくね?」

「っはい」


 …リムの奴、一瞬プレッシャーをかけたような?


「じゃあ、堅苦しい話は抜きにして。向こうではどうするだ?」

「私達はレリント号と共にシャッダに移動して、当家の従士達とゆっくりレルテを目指す予定です」

「そうだな。こちらが着いてゴタゴタしている時に来るのは爺さんの印象も悪い。数日おいて訪れるのが良いだろうな。

 それからは俺のお披露目まで伯爵家に逗留してもらえるとありがたいが良いか?」

「はい。よろしくお願いします」

「まだ固いって。…キーちゃんこっちおいで?」


 リムがキリエの腕をつかんで自分の膝に誘うって。


「おい!」

「いいの! フォルって10歳の癖に無駄に固っ苦しいのよね。ねえ、キーちゃん」

「あの…」

「さすがハーフと言ってもオケイアスの血統ね。羨ましい艶やかな髪。

 フォルの透明感ある白い髪も綺麗だけど、群青色のキーちゃんの髪も素敵よね!

 何で私は普通の金髪なのかしら?

 せめてアイシャくらい真っ黒なら綺麗なのに」

「それはそれで綺麗だと思うが?」

「アイシャとかキーちゃんの髪を触ってみなさいよ!

 船で何日も旅をしているのに凄い艶があるじゃない。私のは元気がないわ」

「どれ?」

「フシャー!」


 …うむ。大分気にしているようだ。噛み付きそうな感じで威嚇された。


「……何をしているのです?」


 そしてティーセットを持ってきたアイシャに冷たい目でみられる。予定調和のように運が悪い。


「あんたの場合は性格が悪いのよ!」

「いつの間に読心術などを…」

「フミャー!」

「…本当に何をしたんですか?」

「いや、リムの髪が大分痛んでいて、アイシャ達の髪が羨ましいと言うのでどんな具合かと思ってな」

「…怒って当然じゃないですか。

 リム様、私は狼の系譜ですからこの髪は防水性が強いですし、キーちゃんは元々水棲のオケイアスの血筋ですからしょうがないかと思いますよ?」

「リムは兄貴よりの火竜に近い性質だしな。水竜(ねえさん)よりなら良かったんだが」

「分かっていても納得はいかないの!」

「あの、私達エルフは髪が傷んだ時は森林浴などをしますが、一緒にどうでしょうか?」

「ああ! 同士発見!」


 ああ、同じく金髪でややくすんでいるトアがいたな。リムの相手は彼女に任せよう。


「そう言えばフォル様は綺麗な髪のままですね。それも大いなる方の加護ですか?」

「大いなる方の加護?」

「…それについてはフォル様ご自身も自覚がないことですので」

「そうでしたか。すいませんアイシャ様」


 なんか変なことを言っているが?

 後で問い質すか。それより…。


「アイシャ様?」

「如何しました?

 レオン卿のご息女ですから私達はほぼ同格。主人に当たるフォルセウス様のメイドとして控えてみえますから座ったまま饗応を受けますが、本来であれば、私の妹達がもてなす立場ですよ?」

「そう言えば。ならば、ここにいるのが身内ばかりである以上アイシャが座っても問題ないな」

「そうなりますね」

「と言うわけでアイシャも座って少し雑談に興じよう」

「…はあ。失礼します」


 女性比率が圧倒的に多いが殆どが10代前半の少女だし関係ないだろう。丁度よい暇潰しになりそうだ。


『…クスッ』

『アリス?』

『何でもな~い』


??

リムが言った『今』はいつまでを指すのでしょう?


大局を動かすのが得意な公子様は、本当に権謀算術に長けたお姫様勝てるのでしょうか?



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