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転生領主とその周辺  作者: しから
旅立ち編
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乙女は考える

 後半に現代日本ではかなり残虐な表現が出ていますが、外敵の多い森の中で狩猟メインな生活をしていることを念頭に置いてください。

 少なくとも現代日本の育児放棄とは意味が違います。そいつらよりはまともな連中です。

「ありがとう」


 結構な広さのある部屋に座り込む私へお茶を差し出すアイシャへお礼を返す。

 私には少し熱いものの飲み頃のお茶を直ぐに用意できるのだから文句は言えない。

 そもそも、本来ならフォルとアイシャが同室なのだけど、私の相部屋になれる者がいないので、フォルと交代してもらった経緯もあるし。


「姫様付きではありませんので好みの温度ではありませんでしたか?」

「これくらいなら大丈夫。

 イブリスにも負けていないわ。さすがフォル付きとして10年近くやってきただけあるわね」

「ありがとうございます」

「……キーちゃんはどうしたのかしら?」

「トアさんと一緒にクライム様とお話してくると」


 今の間にはっきりさせておくべきよね。私とアイシャ、キリエが偶然同じ部屋になるなんてあり得ないもの。レオン卿の差し金でしょ?


「アイシャは私のことをどう思っている?」

「リム様についてですか?」

「例えば、同じ人を共有できるのかしら?」


 スッと目を細めるアイシャ。ストレート過ぎたかしら?


「正直に言わせていただければ、他の竜族の方と違いフォル様そのものが好きなリム様にこそ、姉妹になっていただきたいと思っています」

「姉妹?」

「黒狼族では同じ夫を持つ妻同士を姉妹と表現するのです。

 正妻を長女とした姉妹に」

「狼系の獣人らしいわね。アイシャがそう言ってくれるのは心強いわ。叔父様とサティ姉をうまくくっつければ問題なく行きそうね?」

「キリエさんを迎えるなら、ジュエル様を姉にしても良いのですし、上手く囲い込めますね。フォル様の交遊関係は父からガーランド様に伝えてもらいますし……」

「問題は黒の竜の里の干渉と…」

「ルナスフィア王家にフォル様が取られる場合ですね」

「フォルが王様になるとすると、他国の姫か、国内の侯爵令嬢を正妻及び側室筆頭にして、次いでルナライト伯爵家所縁の令嬢、他国の高位貴族の令嬢で私を除く上位竜の姫君」

「その次くらいに私ですね。リム様は…」

「無理よね。セルラニア第1王女を側室5位以下に持ってくるなんて絶対に認められないわ!」

「黒の竜の里のまとめ役に令嬢がいて押し込んでくる可能性も同じですね」

「狙うなら、側室2位でしょ?

 他に椅子がないのよ」


 こうやって見るとフォルって大変な立場にいる子よね。あの子の異常な貴族らしさは自覚が為せる業かしら? 叔父様には絶対無理ね!


「サティ様からベージュスへ情報が流れますが?」

「恩の売り処でしょ?

 エルフ集落の救援に手を貸したとなれば、叔父様も無下に出来ないでしょうし、叔父様は言わば、「王」の立場に立つわけだから、4位以下でもさほど問題にならない。

 ベージュスは国を持っている訳じゃないから、うるさい外野もいない」

「サティ様とシンクルメア様の属する派閥のトップで正妻及び側室筆頭を分け合えば、良いわけですね?」


 その子からの覚えも良いことになるでしょうけど…。


「どうせなら2位か、3位に付けるようにするくらいにして、しっかり恩を売りたいわ」


 …そうなれば、黒の竜の里の連中もフォルに対しては私の対抗馬じゃなくて、かなり下の妾レベルを送ってくるはず。


「エルフが納得しますか?」

「救援前に叔父様が結婚してたら、文句は言えないでしょ?」

「…そうですね。

 夫に手を貸すと言うならあちらの竜の里を封じることも出来ます…」


 そうね。他の大陸の竜の里が干渉するのは連中も面白くないから。

 …フォルはその辺考えていたのかしら?


「リム様。黒の竜の里はそれで納得しますか?

 シンクルメア様の派閥だけが大きな利益を得る状態ですよ?」


 …そう言えば、竜の里ってどういう政治形態なのかしら?

最悪、お父様を使いましょう。


「…そうね。お母様へ手紙を書くわ。黒の竜の里の中位血統が側室に入れば、セルラニアにも良いことだし」

「竜族ってそう言うところが怖いですね。娘が父親に側室取ってとお願いしますか?」

「狼族だって、正妻と側室をしっかり分けない上に育児は、基本実力至上主義じゃない?

 女の子はともかく、男の子は4割くらい成人までに死ぬとかおかしいわよ?」

「…そうでしょうか?

 無能な雄は害にしかならないのでは?

 それに教育を施すのは種族全体の不利益ですよ?」


 …まあ、多産多死の狼族で例えば今回のガムト家子息みたいな奴の矯正は手間でしょうけどね。


「それに今はわざわざ始末はしていないらしいです。戦士や狩人の才覚がなくても、商才はある者がいたりするからと最低限の教育は試すそうですよ?」

「…矯正不可な性格だったら?」

「……。病死が一般的かと」


 …やっぱ恐い。戦士や狩人の才覚がなくてもって言ったって、ガントラックまで運んでくれたマイケルくらいの能力があるわけでしょ?

 あの人、セルラニアなら近衛の準騎士くらいは出来る能力があったけど…。


「まあ、今は隙を見てシンクルメアと繋ぎを付けるのが優先ね。上手く叔父様と引き離さないと」

「クライム様のことですからバレたら逃げ出しかねませんし、完全に逃げ道を塞いでからですね?」

「最低でも黒の竜の里で歓迎を受けてからじゃない?」

「歓迎と言う名の致命的トラップですけどね…」

「それで叔父様が不幸になるんじゃないから、気にしないの!」

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