出立前夜宿屋にて
長柄得物を購入した俺とリム。
ギルドや酒場での情報収集に当たった『硬い剣』と兄達。
そして、今日の昼過ぎに合流したジーヌとその妹2人。
総勢14人が集えば、大部屋も狭く感じるものだ。
「さて、明日朝一でこの街を発ち、野宿1泊。
そして明後日の昼前には東方諸国の西玄関と言われるサンパ王国へ入る訳ですが。
ここで得た情報を元に経路を確認したい」
まず、口火を切ったのは今回の旅の総責任者クライム兄。
「普通に東西街道を利用するのでしたら、サンパ、リング、イイネ、アフロを経由してビルド王国へ入る事になりますね」
ナビゲーター兼護衛隊のリーダーとなるバートンが通常の経路を示す。
「『硬い剣』の皆さんがセルラニアに来る時はアフロ王国は問題なかったんっすか?」
「俺らがこっちに来る時は直接セルラニアまで船で移動だったんだぜ」
来る時の状況確認をするアグルと東方諸国を通っていないと答えるバリス。
「一般の巡礼者こそ拘束されていないようだけど、神官には従軍召集がかかっているみたい」
「私達の方もですし、何処かで戦いが起こるのも時間の問題ですね。これは」
それぞれ治癒術師として様々な教会とコネがあるラミーと、ラウド教団の神官を勤めるシビが事態の早急さを語る。
「1つ質問なんだけど?
アフロ王国は何処と争う事になる?
近くの国? それとも内乱?」
俺も質問してみる。ルドルフも争いがありそうとは言っていたが、何処と争うか言っていないんだよな。
その質問に対し、互いの顔を見合う一堂。
……おい。
「…誰か知っている者は?」
クライム兄の問い掛けも虚しく響くだけのようだ。
「けど、それってそんなに大事?
結局、アフロ王国で争いがあるのには違いないんだし?」
「そんな訳あるか。
せめて王国内の何処で戦いが起きそうか位は知らないと困るんだ。
イイネ王国と戦争するつもりならそこより手前の国から船を使う必要があるかもしれないが、補給港が戦場なら逆に危険になる」
…海上では逃げられないのだから。
海上での危険を避けるために東方諸国まで回り道をしているのに補給港でアフロ王国軍に捕まりましたでは話にならない。
「…もう少し近付いてからで良いのでは?
恐らくですが、この近辺では誰も何処と争う気なのかは分からないと思いますよ?」
「どう言うことです?」
「はい。クライム様。軍事行動である以上、上層部は情報漏洩を防ぐために行動しているはずです。
現に私達が掴んだのは傭兵公募や従軍神官徴兵の情報に過ぎません。 ですから、開戦前に徒歩で10日以上掛かるこの距離まで何処と争うかの情報が流れてくる可能性は低いかと」
…なるほど、兵隊からは何処と争うかは伝わらないし、傭兵や神殿の情報に相手に関する内容が得られる可能性は低い。
平民階級は情報の伝達網がないから、精度の高い情報は伝わってこないか。
「1つ分かっているのは高位の魔物や魔獣が相手ではないと言うことくらいでしょうか」
「そうなの?」
「ええ。高位魔獣相手ではある程度以下の実力では足手まといにしかなりませんので、冒険者ランク幾つ以上と言う具合に募集制限がされるのです」
当たり前か。俺達のような竜族が相手だとブレス1発で数十人の被害になりかねない。少なくともブレスに対応出来る人間を集めるだろう。
『そう言えば、アリスの方は情報とか分からないのか?
…精霊は何処にだっているのだし』
『無理! 私達が人間の行動を一々監視しているわけないし。そうでなくても精霊毎に縄張りがあるんだよ?』
『それもそうか』
「ひとまず、街道沿いにリングまで進もう。
毎日の移動を宿場町単位で行えば、リングに着くのは4日後だし。もう少し情報も集まるだろう」
兄のまとめに違う意見の者もいない。
これで解散だろう。
……宿場町単位で移動?
小説みたいに野宿とかはないんだな。




