夕食時の一幕
短いですが、転幕させたいので区切ります。
…切っ掛けはガルド兄さんの一言だった。
「フォル。来月の終わり頃に伯爵家へ移ってもらう。彼方へ移る準備をしておいてくれ」
「…急ですね。元々は12まではこちらで過ごす予定だったんじゃ?」
「前からガーランドからは提案されていたんだ。
ルナスティア王国立学園の本科へ上がるタイミングで編入させるにしても、せめて数年は魔貴族の礼儀作法を学ばせる必要があるのではとな」
…まあ、それはそうか。次期当主が無礼者では困ると言う爺さんの懸念も分かるし。
…にしても急だよな。だが、いつものおちゃらけた雰囲気がない辺り本気なのだろう。
「この旅にリムとクライムに同行してもらう。ルナライト伯爵領内にある『業火の谷』で火の精霊と契約してもらうためだ」
…今後、里とやりあえるようにする意図があるのか。
……ここで訊くわけにはいかないな。いくら、懇意にしているとは言え、他血統の竜族へ聞かせていい話じゃない。
「私も旅に出ていいって?」
「そうなるな。ガーランドからはリムも王国立学園に一緒に通わせてはどうかと提案されている。
身分が役に立たない環境に立つと言うのは今後の経験にもなるから、その話を受ける予定だ」
「それじゃあ、ちょっとの間ここへ帰ってこないつもりで身支度を整える必要がありそうね?」
「そうなるな」
…リムも一緒か。
気心が知れているから気楽だとみるべきか。あちらでも絡まれると嘆くべきか。
「大陸を渡る程の移動準備がいるのに、出立が1ヶ月後じゃあ、忙しいでしょうね。…私達は明日には帰りましょうか? ジュエル」
「……うん。そうね。ルナライト伯爵家に着いた後、落ち着いたくらいに、また訪ねるね?」
「ごめんなさいね。サティ姉さん、ジュエル」
…? 何故、急に帰らなくてはならなくなった2人が、笑顔でリムがムスッとしているんだ?
まあいい。前世では考えられない早い親離れだが、あちらへ行ってから試そうとしていた内政チートを前倒しで始められるんだと思えば、悪くない。
死別するわけでもないし、半月で会いに来れるんだから…。




