神界諸事情とこれから
「……何ですか? それは?」
フォルが無事目覚めたと言う報告を携えて、竜の子守唄亭を訪れた私は先日通された部屋へ再び案内され、趣味なのか、奇妙なポーズで床に這いつくばるジード神へ事情を尋ねました。
…神と言うのもストレスの溜まる仕事なのでしょう。
「これは土下座と言う『あの方』が以前住んでいた辺りで最大限の謝罪を表す姿勢です。
今回は本当に申し訳ない」
「謝罪ですか?
そのような心当たりはありませんよ?」
「こちらが情報を掴み損ねた為にあなたや『あの方』を危険に晒したではありませんか。本来、あのような事態を避けるために私達は協力関係にあると言うのに」
…それはさすがに無理がある気もしますけどね?
近隣の全竜族を把握するなど無茶ぶりもいいところでしょうし。
「ひとまず、顔を挙げて下さい。
我々は無事でしたのでこの件であなた方を責めたりはしませんよ?」
「本当ですか!
ありがとうございます!」
満面の笑顔になってますけど、『あの方』と言うのはそれほどまでに怖れられているのでしょうか?
…ジード神の目には隈が出来てますし。
「……少しやつれていませんか?」
「『あの方』の気配を感知した神界が、上から下にいたるまで大混乱となりましてね。
私が付いていながら何をしていたとトップ陣直々の説教を受けていたんですよ」
…ウチの弟はそのレベルで怖れられているのですか。
まあ、気持ちは分からなくもないですが。我々のような竜を手の1振りで消滅させられる存在ですしね。
「おまけに減俸処分ですから、嫌になる話ですよ」
「減俸?」
「分かりやすく言うならば給金の減額ですね」
「神の世界でも通貨制度があるのですね…」
「通貨ではありませんよ。
我々は働きに応じて、信仰力と呼ばれる力をそれぞれの属する神話系の主神から受け取り、それを対価に生活をしています」
「通貨そのものではないにしても、地上の国政とさして変わりませんね」
「そんなものですよ。
それより、今後の事について相談させてください」
「今後?」
「ええ。
おそらく、今回の一件で『里』の竜達が動き出します。
今まではホゼル血統を敵に回してまであなた方兄弟を確保に動くような事はなかったでしょうが、今回、『あの方』が見せた力はそれらを差し引いても手に入れるために動く価値があると思いませんか?」
「やはり動きますか…。
そこまではないかとも思っていたのですが」
…母、兄と義姉の3体にホゼル血統の上位竜14体。ベージュスやロンガからも数体の上位竜が参戦するでしょうし。
その影響下にある中位や下位の血統の竜達を合わせれば、里側の損害も馬鹿にならないはずですけど。
「…困ったものです。
遅くても、半年を目処に動く事をおすすめします」
「半年ですか…。
思ったよりも猶予はあるようですが」
「里内の権益調整が落ち着くのがそれぐらいになると言う推測ですから、ある程度は前後するでしょうし、思うほどの余裕はないですよ」
「…戻ったら早速兄達と相談ですね」
「ええ、よろしくお願いします。
こちらも出来る限りの情報提供をしますので」
おそらく、3人も同じ結論へ至るでしょう。
…リムが騒ぎ出しそうですが、自業自得でしょう。
これまでの10年でうまくいかなかった関係が後2年で進展するとも思えませんし。




