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転生領主とその周辺  作者: しから
内政チートの始まり
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反省会

真赤 22日



「……ええっと?」

「じいさん達、もういいぞ?」


 執務室へ入ってきたミーティアの戸惑う言葉にそろそろ頃合いかと正座させていた3人に許しを出す。


「どういう状況?」

「学園都市計画の進捗とそれに伴う各分野の調整の前に良かれと思って、失敗をやらかした3人の反省をさせていただけだ」


 悶絶している3人を放置してこっちに状況説明を求める辺りこの従姉も薄情な性格だよな。


「にこやかな笑顔だけど…、

 フォル君、すごい怒ってる?」

「ハハハ、…当たり前だろうが‼」


 仮にも冒険者をしていたことがある者が食料不足の危険を軽視したのだ。俺でなくても激怒ものだ。


「一体何があったの?」

「色々だ。レリント号の乗員を漁師に戻さず、レリント号を運用して再開発のピッチを上げたり」


 リリアナ婆さんをにらみ、


「土地開発の人件費予算を割りましたり」


 ついでガーランドのじいさん。


「南部で困っている職人を招いたりだな」


 最後に一番ダメージの大きいことをしたセーネ婆さん。


「…開発が早まるのは良いことでしょ?」

「早すぎる。

 開発に従事する者は食料生産をしないんだ。

 新たに100人の開発従事者が発生すれば、食料生産者100人にかかる負担は2倍以上。

 現状でも今回の買い付けに失敗すれば、春先に食料不足に陥る可能性が高い」

「食料不足?」


 まあ、元貴族令嬢には分からない感覚だよな。

 食べ物がないなら買えば良いと考えるのが普通だ。特にルナスフィアは長い歴史を誇る大国。その貴族にどれだけの金を積まれても、そもそも売ってもらえるだけの食料がない。

 そんな経験をした者はいないだろう。


「今日食べる物がない。

 そんな状況になれば暴動が起きる。

 最初にあぶれるのは、冒険者や他領から来た職人だろう。彼らが短絡的になって略奪でも始めれば、治安は一気に悪化する。

 今までも食いつめた村が野盗団化することがあるだろう?

 それが領内各地で同時多発的に起これば幾らルナライト伯爵家でも対処は困難だ」

「そこまで酷いことになるかのう?」

「十分に起こりうる未来だ。

 元冒険者なら食料不足で殺し合いになったパーティの話くらいは聞いたことがあるんじゃないか?」


 …思い当たるフシがあるらしいな。

 黙り混むじいさんは放置して、これからどうするかを考えないと。

 イマイチ頼りないが俺より長く為政者をやっていたのだ。この3人に良案はないか?


「普通に貴族をやっていてこの規模の大開発があると思うか?」

「なるほど。

 ……当たり障りなく過剰に集中している人口を減らす手段は?」

「知らんよ。

 精々、何処かで戦争があれば出稼ぎで人が減るくらいのもんじゃな」

「祭りは利用できないのですか?

 来月には月華神教会の祭りがあるでしょ?」

「兄貴が戻り次第、エルフ解放戦争を始めさせるから、戦争で人の移動をさせると言うのは良い案だなと思う。

 …大々的に出兵式でもやろうか。

 それとセーネ婆さん、来月の祭りと言うのは?」

「収穫祈願の祈祷祭よ?」

「収穫祭じゃなくて?」

「作物の収穫から冬支度までは誰もが忙しいでしょ?

 それが一段落する頃には復活祭があるから、収穫が始まる前に祈祷祭をするの」

「なるほど。場所は?」

「国内に3つある大神殿で行われるけど、最大の物はやっぱり王都ね」

「…それなら、レルテとベトマの大神殿と商人へ自粛を要請しようかな?」

「自粛?」

「ああ、外部の者が多く入っており、領内全体の治安悪化が懸念されるっと言う建前の元に自粛を促す」

「…なるほどな。

 多くの者が流入している現状では商人達の利益確保も十分に出来ている。

 下手に祭りを盛り上げて犯罪に巻き込まれる方が嫌だろうと言う予想じゃな?」

「犯罪に巻き込まれるのはレアケースだとしても、祭りでどれくらいの利益の推移を起こすかも分からない現状だから、商人達も自粛と言う形を取りたいと思うだろう?

 けど、自分達からそんなことを言って祭りを白けさせたと悪評は立てたくないはず。

 ここはあえて伯爵家が泥を被り、商人に恩を売る」


 これを公布して祭りの規模が縮小する雰囲気を漂わせれば、王都へ人が流れるはずだし、中長期的な食料対策も出来て、商人に感謝もされる。

 一石二鳥となる対策だろう。


「後は買い付けに出すレリント号の状況次第だが…」

「それは問題ないじゃろう。

 セルラニア方面では、日照、雨量供に例年相応と言う報告じゃし、西部域も紛争が起きたとは思えんほどに収量確保の目処が立っている」

「え?」

「どうした?」

「普通に考えて、春に紛争が起きて作付が出来ていないのなら収穫量は相当落ち込むんじゃないのか?」

「何を言うとる。

 既に土を起こし種蒔きまで終わっとるんじゃぞ?

 ただの管理ならさほどの人手も要らんじゃろ?」

「それを最初に言え!

 そんならこんなに焦らなくても…」

「…いや、おぬしの報告から試算し直してみるとな…。

 今年の冬はギリギリ乗り切れられるが、商人が売り渋った場合は伯爵領で数十人、西部全体では300人程度の餓死者が出る計算じゃった」

「…駄目じゃないか」

「うむ。じゃから甘んじて反省を受けることにしたんじゃよ」


 …微妙にじいさん達の手のひらの上だったと言うことか。

 まあ良い。今は俺の体面より現状対策が重要だ。

 もう一度伯爵家内の状況擦り合わせが必要だな。

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