第4話 エルフの弓使いは、俺の秘密が気になるらしい
翌朝。
「恒一、起きて。朝よ」
「……あと五分」
「昨日も同じことを言っていたわよ?」
布団の端をつかまれ、俺は渋々目を開けた。
目の前には、銀色の髪を揺らす美少女――リゼリアが立っている。
朝日を受けた赤い瞳が、楽しそうに細められていた。
「おはよう、恒一」
「おはよう。……毎朝リゼリアに起こしてもらえるなんて、贅沢だな」
「えっ……?」
リゼリアの頬が、みるみる赤くなった。
「そ、そういうことを、朝から平然と言わないでちょうだい!」
「褒めただけなんだけど」
「わかっているわよ! わかっているけれど……!」
彼女はぷいっと顔を背けた。
けれど、俺が起き上がろうとすると、服の袖をきゅっとつかんでくる。
「……朝食、一緒に食べるのでしょう?」
「もちろん」
「なら、早く着替えて。食堂で待っているから」
そう言いながらも、リゼリアはなかなか部屋を出ていかなかった。
「リゼリア?」
「な、何?」
「着替えるんだけど」
「……っ! そ、そうだったわね!」
彼女は慌てて扉へ向かい、出ていく直前に振り返った。
「絶対に来てね!」
「逃げないって」
「……本当?」
不安そうに尋ねる姿が、なんだか妙に可愛らしい。
「本当だよ」
「……なら、いいわ」
今度こそ、リゼリアは扉を閉めた。
俺は苦笑しながら身支度を整える。
異世界に来てまだ数日。
それなのに、ずいぶん賑やかな毎日になったものだ。
もっとも、これから何が起こるのかは、まだ分からないのだけれど。
◇
朝食を済ませた俺たちは、冒険者ギルドへ向かった。
「今日は少し遠くまで行ってみましょう。森の奥で薬草が採れる場所を知っているの」
「森か。魔物もいるんだよな?」
「もちろん。でも、昨日倒したフォレストウルフ程度なら問題ないわ」
「その自信は頼もしいけど、俺も少しは戦えるようにならないとな」
「恒一は無理をしなくていいのよ。危ないときは、私が守るから」
リゼリアは胸を張った。
その表情は本当に頼もしい。
「じゃあ、俺はリゼリアを支える係だな」
「……え?」
「お互いに助け合えばいいだろ?」
リゼリアはしばらく黙っていたが、やがて俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
「そうね。助け合うのは大切だわ」
「うん」
「だから、こうして離れないようにしておくわね」
「いや、それは助け合いと関係あるのか?」
「あるわ!」
きっぱり言い切られてしまった。
まあ、嫌ではないので、そのままギルドまで歩くことにした。
◇
ギルドに入ると、受付の女性が俺たちに気づいて微笑んだ。
「黒瀬さん、リゼリアさん。おはようございます。昨日の依頼、お疲れさまでした」
「おはようございます。今日は森へ行く依頼はありますか?」
「はい。薬草採取と、森の浅い場所の調査依頼があります。ただ……」
受付嬢が言いかけたときだった。
「その調査依頼、私も受けたいのですが」
背後から、落ち着いた女性の声がした。
振り返ると、そこには一人のエルフが立っていた。
長い緑色の髪。尖った耳。背中には弓を背負い、腰には矢筒と小さな短剣を備えている。
成人した女性らしい落ち着いた雰囲気と、周囲を冷静に観察する翡翠色の瞳が印象的だった。
「エレナさんですね。ですが、今回の調査は単独では少し危険かもしれません」
「承知しています。だからこそ、現地の地形をよく知る方と組みたいのです」
彼女はそう答え、俺たちへ視線を向けた。
「そちらのお二人は、最近登録された冒険者ですね?」
「そうです。黒瀬恒一です。こちらはリゼリア」
「初めまして。エレナ・シルフィードです。エルフの弓使いをしています」
「よろしく。私はリゼリアよ」
リゼリアは微笑んだ。
……ただし、俺の腕を抱える力がほんの少し強くなった気がする。
気のせいだろうか。
「失礼ですが、黒瀬さん。昨日、森から戻った際に、かなりの量の素材を持ち帰られたそうですね」
「え? ああ、フォレストウルフの素材かな?」
「はい。通常、あの程度の依頼では、あれほど手際よく素材を持ち運ぶのは難しいはずです。何か特別な収納用の魔道具をお持ちなのですか?」
鋭い。
俺は一瞬だけ返答に迷った。
《空間操作》のことは、できるだけ知られないほうがいい。ギルドマスターのガルドにも、能力の扱いには気をつけるよう言われている。
「まあ、少し便利な方法を使っているんだ」
「……なるほど」
エレナは俺の顔をじっと見つめた。
「その答え方では、何か秘密があるように聞こえますね」
「そうかな?」
「ええ。とても」
彼女は口元に小さな笑みを浮かべた。
どうやら、簡単にはごまかせそうにない。
「エレナさん。恒一の事情を詮索するのは、そのくらいにしておいたらどうかしら?」
リゼリアの声が、ほんの少し低くなった。
「あら。詮索するつもりはありませんよ。ただ、珍しい能力には興味があるものですから」
「興味、ね……」
リゼリアが俺の腕に、さらにぴったりと寄り添った。
エレナはその様子を見て、わずかに目を瞬かせる。
「お二人は、ずいぶん仲がよろしいのですね」
「ええ。私たちは契約を結んでいるもの」
リゼリアは誇らしげに答えた。
「契約……? それは主従契約の類ですか?」
「いいえ。もっと特別なものよ」
「リゼリア、あまり詳しく話さないほうがいいんじゃないか?」
「分かっているわ。秘密は守るから安心して」
そう言って、リゼリアは俺の肩に頬を寄せた。
……秘密を守ることと、くっつくことは別問題らしい。
エレナは少し考え込んでから、受付嬢へ向き直った。
「では、提案があります。森の調査依頼を、このお二人と合同で受けることはできませんか?」
「合同依頼ですか?」
「はい。私が地形と魔物の位置を確認し、リゼリアさんが戦闘を担当する。黒瀬さんには採取した素材の運搬を手伝っていただければ、効率よく進められると思います」
合理的な提案だった。
俺としても、経験豊富な冒険者と一緒に行動できるのはありがたい。
「俺は賛成です。リゼリアはどう?」
「恒一がそうしたいなら、私は構わないわ」
リゼリアは一度エレナを見てから、俺に微笑んだ。
「でも、無理はしないこと。危なくなったら、すぐに私の後ろへ来るのよ?」
「分かった。頼りにしてる」
「……ふふっ。任せてちょうだい」
機嫌が直ったらしい。
受付嬢は合同依頼の手続きを済ませ、地図を差し出してくれた。
「森の北側にある古い石碑の周辺を調べていただきたいのです。最近、魔物の動きが少し変わっているという報告がありまして」
「魔物の動きが?」
エレナの表情が引き締まった。
「分かりました。注意して調査します」
こうして俺たちは、エレナと一緒に森へ向かうことになった。
◇
森に入ると、エレナは見違えるほど頼もしかった。
彼女は地面に残った足跡を確認し、木の枝についた傷から魔物の通過した方向を推測する。
「こちらです。少し前に、複数の魔物が北へ移動しています」
「よく分かるな……」
「慣れですよ。森で活動するエルフにとっては、これくらい普通です」
そう言いながらも、彼女の耳は誇らしげに少し動いた。
「エレナって、すごいのね」
リゼリアが素直に感心すると、エレナは意外そうに彼女を見た。
「ありがとうございます。リゼリアさんも、周囲への警戒が行き届いていますね。先ほどから、魔物が潜んでいそうな場所を確認しているのでしょう?」
「ふふっ。これでも吸血姫ですもの」
「なるほど。納得しました」
二人の会話は、思ったよりも自然だった。
俺は少し安心しながら、採取した薬草を《空間操作》で収納していく。
袋が重くならないのは便利だ。
だが、その様子をエレナは見逃さなかった。
「……今、何をしたのですか?」
「え?」
「薬草を袋に入れていませんでしたよね?」
しまった。
つい、いつもの調子で能力を使ってしまった。
「ええと……」
「黒瀬さん。やはり、何か特殊な能力をお持ちなのですね?」
エレナは興味津々といった様子で近づいてきた。
「その能力、空間に干渉するものではありませんか?」
俺は思わず息をのんだ。
なぜ、そこまで分かる?
「……どうしてそう思うんだ?」
「薬草が消える直前、ほんの一瞬だけ空間の揺らぎが見えた気がしたのです。普通の収納用魔道具とは違う反応でした」
エレナは少し興奮しているようだった。
「もし本当に空間系の能力なら、とても希少です。理論上は収納だけでなく、距離の操作にも応用できる可能性があります」
「そんなことまでできるのか……」
「可能性の話です。実際にできるかどうかは、能力の性質と本人の熟練度によりますが」
彼女はそこで、はっとしたように口を閉じた。
「……すみません。つい夢中になってしまいました」
「いや、気にしなくていいよ。詳しい人がいると助かる」
「本当ですか?」
「ああ。俺はこの世界について、まだ知らないことばかりだから」
その言葉に、エレナの表情が少し和らいだ。
「でしたら、私が知っていることならお教えします。もちろん、黒瀬さんが話したくないことを無理に聞くつもりはありません」
思っていたより、誠実な人らしい。
「ありがとう。助かるよ、エレナ」
「……いえ。冒険者同士ですから、当然です」
エレナは視線をそらした。
どうやら、自分の好奇心が先走ったことを恥ずかしく思っているらしい。
一方、隣ではリゼリアがじっとこちらを見ていた。
「恒一?」
「ん?」
「エレナにいろいろ教えてもらうのはいいけれど……私にも、ちゃんと頼ってちょうだいね?」
「もちろん。リゼリアは一番頼りにしてるよ」
「……っ! そ、そう。それならいいわ!」
赤くなった顔を隠すように、彼女は前を向いた。
エレナが小さく笑う。
「お二人とも、本当に仲がいいのですね」
「当然よ!」
「リゼリア、声が大きいって」
「だって……!」
その先は、言葉にならなかった。
◇
石碑に近づいたとき、エレナが突然足を止めた。
「待ってください」
彼女は弓を構え、木々の向こうを見つめる。
「何かいます」
俺も周囲を探ったが、よく分からない。
次の瞬間、茂みから灰色の魔物が飛び出した。
フォレストウルフよりも大きな狼型の魔物が三体。
「グレイファング……! しかも三体です!」
エレナは素早く矢を放った。
一体の前脚に矢が命中し、魔物の動きが鈍る。
「リゼリア、右をお願い!」
「任せて!」
リゼリアが地面を蹴った。
赤い魔力が刃のように走り、右側の魔物を牽制する。
俺は残る一体の動きを見ながら、周囲の地形を確認した。
正面から戦うより、動きを制限したほうがいい。
「エレナ、左の木の間へ誘導できるか?」
「できますが、どうするのですか?」
「狭い場所なら、一度に襲いかかれないだろう?」
「……なるほど!」
エレナはすぐに意図を理解し、矢を放って魔物を誘導した。
リゼリアが一体を倒し、エレナが足止めした一体を仕留める。
最後の一体が俺に向かって飛びかかってきた。
「恒一!」
リゼリアの声が響く。
俺は反射的に《空間操作》を発動した。
魔物の突進する軌道を、ほんのわずかにずらす。
だが、思っていた以上に集中力を必要とした。
頭の奥に鋭い痛みが走る。
それでも、魔物の爪が服の端をかすめる程度に軌道を逸らすことができた。
「今です!」
エレナの矢が、魔物の肩口へ突き刺さった。
そこへリゼリアが踏み込み、一撃で勝負を決めた。
森に静けさが戻る。
「恒一、怪我はない?」
リゼリアが駆け寄り、俺の腕や肩を確かめた。
「大丈夫。服が少し引っかかっただけだよ」
「本当に? 痛いところは?」
「ないって。心配してくれてありがとう」
「……もう。心配するに決まっているでしょう」
彼女は安堵したように息を吐いた。
エレナも弓を下ろし、こちらへ歩いてきた。
「黒瀬さん、先ほどの動き……。魔物の軌道が不自然にずれました。やはり、空間に干渉したのですね?」
「……そうみたいだ」
「すごい……」
エレナの目が輝いた。
「戦闘中に、とっさに空間へ干渉できるなんて。まだ完全には理解できませんが、非常に珍しい能力だと思います」
「偶然うまくいっただけだよ。俺自身、まだ使い方がよく分かっていないんだ」
「だからこそ、興味深いのです」
エレナは真剣な顔で俺を見た。
「黒瀬さん。もしよろしければ、今後も一緒に依頼を受けさせていただけませんか? あなたの能力について知りたいという気持ちもありますが、それだけではありません」
「それだけじゃない?」
「はい。先ほどの戦闘で、あなたは自分が危険な状況でも、私たちが動きやすいように考えていました。自分だけが助かろうとするのではなく、仲間全員が生き残れる方法を」
エレナは少し照れくさそうに微笑んだ。
「そういう方となら、安心して背中を預けられると思ったのです」
その言葉は、素直に嬉しかった。
「ありがとう。俺も、エレナと一緒なら心強いよ」
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
エレナは今度こそ、まっすぐに頷いた。
リゼリアが、俺の腕を抱いたまま小さく咳払いをした。
「こほん。エレナ、これからも一緒に依頼を受けるのは構わないわ。でも、恒一は私の大切なパートナーだから」
「ええ、分かっています」
エレナは穏やかに答えた。
「大切な方なのですね」
「……ええ」
リゼリアの表情が、少しだけ柔らかくなる。
「とても大切な人よ」
今度は俺まで照れくさくなり、思わず頬をかいた。
どうやら今日の森は、魔物以外にも油断できないものが多いらしい。
◇
依頼を終えて街へ戻ると、ギルドの受付嬢が俺たちの報告を聞いて目を丸くした。
「グレイファングが三体も? それを三人で撃退したのですか?」
「はい。エレナの弓がなければ、もっと苦戦していたと思います」
「リゼリアさんの戦闘能力も素晴らしかったですよ。皆さんのおかげで、森の調査も無事に終わりました」
報酬を受け取ったあと、エレナは少し迷った様子で俺たちを見た。
「もしよろしければ、今夜は私に食事をごちそうさせてください。今回の依頼では、お二人に助けていただきましたから」
「いいの? じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「ええ。おすすめのお店があります」
「……待って」
リゼリアが、そっと手を挙げた。
「食事に行くのは賛成よ。ただし、恒一の隣は私の席だから」
「リゼリア……」
「な、何よ。食事の席くらい、いいでしょう?」
エレナは一瞬きょとんとしたあと、くすりと笑った。
「もちろんです。私は向かいに座りますから」
「……そう? なら、いいわ」
リゼリアはほっとしたように俺の腕へ寄り添った。
エレナが選んだ店は、落ち着いた雰囲気の小さな食堂だった。
焼きたての肉料理に、香草の効いたスープ。森で採れる果実を使った甘いデザートまである。
「この果実のタルト、おいしいわね!」
リゼリアはすっかりご機嫌だった。
「気に入っていただけてよかったです。ここのお店は果実を使った料理が得意なんですよ」
「エレナ、いいお店を知っているんだな」
「ふふっ。長くこの街で活動していますから」
食事をしながら、俺たちは冒険者の仕事や、この国のことについて話した。
エレナは森や魔物に詳しく、リゼリアは魔法や吸血種のことに詳しい。
二人の知識は、これからの冒険で大きな助けになるだろう。
食事の終わりに、エレナが改めて口を開いた。
「黒瀬さん、リゼリアさん。明日も森へ行く予定はありますか?」
「まだ決めていないけど、依頼があれば行こうと思ってるよ」
「それなら、私もご一緒してよろしいでしょうか。三人なら、調査できる範囲も広がりますし」
「もちろん。こちらこそよろしく」
「私も異論はないわ」
リゼリアはそう答えたあと、少しだけ俺に身を寄せた。
「……ただし、恒一を独り占めするのは、まだ私の特権だからね」
「リゼリアさん?」
「な、何でもないわ!」
エレナは楽しそうに笑った。
「ふふっ。では、その特権を尊重しながら、少しずつ仲良くさせていただきますね」
こうして俺たちは、翌日も一緒に冒険する約束を交わした。
◇
宿に戻った夜。
俺はベッドに腰かけ、ステータスを確認していた。
《職業:時空士》
《ランク:★1》
《スキル:《二重衝撃》《空間固定》》
《空間操作:収納機能を確認》
《固有異空間:未解放》
そして、その下に新たな文章が浮かんでいた。
《契約者との信頼関係および能力の成長に応じ、新たな機能が解放される可能性があります》
「……信頼関係、か」
俺は、隣の部屋にいるリゼリアを思い浮かべた。
そして今日出会ったエレナのことも。
彼女は俺の能力に興味を持っていたが、それ以上に、仲間として一緒に戦うことを望んでくれた。
新しい仲間が増えることは、俺にとっても心強い。
ただし、能力がどこまで成長するのかは分からない。無理に試せば、また頭の奥に痛みが走るだろう。
焦らず、一つずつ確かめていくしかない。
「恒一、何を見ているの?」
声をかけられて振り返ると、リゼリアが温かい飲み物を二つ持って立っていた。
「ステータスを確認していたんだ。今日の戦闘で、少し変化があったみたいで」
「そうなの?」
リゼリアは俺の隣に座り、表示をのぞき込んだ。
「新しい仲間ができたからかしら」
「かもしれないな」
「……エレナは、いい人だと思うわ」
「うん。俺もそう思う」
「知識もあるし、戦闘でも頼りになる。これから一緒に冒険できるなら、心強いわね」
そこまで話してから、リゼリアは少し黙った。
「……でもね」
「ん?」
「今日、あなたがエレナに褒められているのを見たら、なんだか落ち着かなかったの」
彼女はカップを両手で包みながら、恥ずかしそうに続けた。
「あなたが誰かと仲良くするのは、嫌じゃないのよ。仲間が増えるのは嬉しいわ。でも……私が一番近くにいたいって、思ってしまうの」
その声は、いつもの自信に満ちたものではなかった。
俺は彼女の頭に、そっと手を置いた。
「リゼリアは、俺にとって特別だよ。最初に出会って、一緒に歩いていこうと決めた大切なパートナーだから」
「……本当に?」
「ああ。これから仲間が増えても、それは変わらない」
リゼリアはしばらく俺を見つめていた。
やがて、ふわりと笑う。
「……ありがとう、恒一」
彼女はそっと俺の肩に頭を預けた。
「じゃあ、今夜は少しだけ甘えてもいい?」
「いつでもどうぞ」
「ふふっ。約束よ?」
そう言って、リゼリアは俺の腕に抱きついた。
窓の外では、異世界の月が静かに輝いている。
俺はまだ、自分の能力の正体も、この世界に来た理由も知らない。
けれど、少なくとも今は。
隣で笑う彼女と、今日出会った新しい仲間と、一歩ずつ前に進んでいきたいと思った。
そんなことを考えながら、俺たちは夜が更けるまで、他愛もない話を続けたのだった。




