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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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大国の王②

リリアンヌ視点



国王は、玉座の間に辿り着くまで、一度も振り返らなかった。



つい先ほど、ブライアンへの挨拶でここへ来たばかりなのに、


雰囲気は、まったく変わっていた。



中央の大きな玉座に、レックスが深く腰を下ろした。


すぐに二人の男が、玉座を挟むよう左右についた。



「……」

リリアンヌはロデオの腕の中から、ちらりと二人を見やった。



ひとりは、国王直属騎士団の団長、エドガーだ。


自分が着ているドレスのような橙色の髪と、屈強な体が相まって、ライオンのように見えた。



もうひとりは、初めて見る人だ。


どう見ても騎士には見えない。


茶色の前髪の奥で、モノクルのレンズを光らせ、こちらをじっと見つめていた。



その三人の背後を護るように、黒い軍服を着た者たちが、左右に分かれて控えている。


大広間にも、玉座の間の入り口にも、同じ格好をした人たちが立っていた。


誰もが大きく屈強な体をしていて、微動だにしない。



――国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の騎士たちだ。



「…リリィ、ここに」


ロデオはリリアンヌを下ろし、玉座の前に立たせた。


そのまま片膝をつき、リリアンヌの隣にぴったりと寄り添った。


リリアンヌを挟むように、隣にアランフォースが静かに並んだ。



「リリアンヌ」



「…はい」


リリアンヌは、玉座の方へゆっくりと顔を向けた。



「もう一度、最初から。今日会ったことを話せ」


レックスは長い足を組み、リリアンヌをじっと見下ろしていた。



「…今日、ブライアン殿下の誕生日をお祝いしに、家族と一緒に登城しました」


ここへ来るまでに考えていたことを、ゆっくりと口にした。



「家族は祝宴に参加して、私だけが客間で待機でした。…それが寂しくて」


子供らしく聞こえるように、言葉を選んで。


とにかく、慎重に。



「祝宴の様子をどうしても見たくて、ニア…侍女に無理を言って、庭園まで出てきました」



「……」


アランフォースは、黙ってくれている。



「庭園の奥に光るものを見た気がして、勝手に侍女から離れ、ひとりで奥まで進みました。…それが、精霊でした」



「お前はなぜ、それが精霊だと気付いた」


間髪入れず、国王から鋭い声が飛んだ。



「もう四百年近く精霊は見つかっていない。お前は、一目見ただけでそれが精霊だと気付いたのか」



「…昔いた精霊は、体が光っていたと習っていました」

リリアンヌは、右肩に止まる精霊へちらりと目を向けた。



「今のようにずっと光っていたので、精霊だと気付きました」



「見つけて、どうした」



「…見つけた時、精霊は元気がないように見えました。ですから…両手で持ち上げて、温めました」



「精霊をか?」



「…はい」


鋭い国王の目に、一瞬、言葉を詰まらせた。



「温めると、精霊は元気になりました。元気になった精霊は、私に加護をくれました」



「温めただけで、加護を貰ったのか?」



「…なぜ貰えたのかは、私には分かりません。他にも、理由があったのかもしれません」


無理があるのは、分かっている。


けれど本当に、なぜ加護を貰えたのかは分からない。



「アランフォース。お前はどこから見ていた」


国王の鋭い目が、隣に移った。



「私が合流したのは、リリアンヌ殿下が精霊を発見した後でした」

アランフォースは、躊躇いなく答えた。



「なぜお前は、突然庭園の奥へ走っていった?」



「…庭園の奥で、光を見た気がしたからです」



「なぜ誰にも言わず、ひとりで向かった」



「…その方が、早いと判断しました」



「…っ」


リリアンヌは、ぎゅっと拳を握った。



アランフォースが責められてしまっている。


申し訳なさで、胸が痛かった。



「…まあ、いい。近衛隊がお前たちを見つけるまで随分と時間がかかったが、何をしていた」



「……」


リリアンヌもアランフォースも、レックスの問いに黙り込んだ。



「すべて言え」



「私が加護を貰ったことで、驚いて泣いてしまったのです…!」


咄嗟に、言葉を絞り出した。



「アランフォース副団長は、私が泣きやむまでその場で待ってくださいました」


泣いたのは、本当だ。


きっと、まだ目の下も赤い。



「私が落ち着いた後に、アランフォース副団長とふたりで庭園へ戻ってきました。その後すぐ、お父様たちと合流しています」


なんとか、言い切った。



「……」


国王は、まだこちらを見下ろしている。



自分と同じ紅い瞳を、まっすぐ見つめ返した。


目を逸らしたら、嘘をついていますと言っているようなものだ。



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