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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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大国の王③

リリアンヌ視点



「…経緯は、分かった」


レックスが、静かに口を開いた。



「それで?加護を貰ったことで、何が変わった。何ができるようになった」



「…まだ、分かりません。実感も、あまりないです」


これは半分本当で、半分嘘だ。




「――陛下!」



「えっ」


突然、玉座の間の入り口が大きく開かれた。



「陛下、一体何をお考えなのですかな!」


扉から、ぞろぞろと何人もの男たちが入ってきた。



「…ちっ」



「…!」


リリアンヌは扉へ向けていた顔を、急いで正面に戻した。



国王は、入ってきた一団を煩わそうに睨んでいた。


どうやら先ほどの舌打ちは、自分に向けられたものではなかったようだ。



「ロデオ総長のご息女が、精霊を見つけたと聞きましたぞ!なぜ、儂をすぐ呼ばなかった」


先頭に立つ者が、躊躇いなく玉座へ近づいてきた。



煌びやかな衣装を身にまとった、初老の男性だ。


床に届くほど長い白の長衣に、肩からは藍色を差した外衣が重ねられている。


ふくよかな首元や指には、多くの装飾品が飾られていた。



「なぜお前を呼ぶ必要がある、スワハマ」



「儂は、大教主ですぞ!」



「だからなんだ」



「大教主とは、オーリア教の頂点に立つ者。言わば、精霊王オーリアの御名と教えを最も深く扱う立場にある人間のこと」



「だから、なんだ」


国王の声が、さらに低くなった。



「精霊のことといえば、儂に任せなさい」


スワハマは、ゆっくりと玉座の前まで進んだ。



「……」


肩を握る父の手に力が入り、少しだけ痛かった。



「お初にお目にかかります、リリアンヌ殿下」


スワハマはリリアンヌたちの前で足を止めると、恰幅のいい体を窮屈そうに折り曲げた。



「大教主を務めているスワハマと申します。以後、お見知りおきを」


笑顔を浮かべるその目は、まったく笑っていなかった。



「さて…リリアンヌ殿下。精霊はどこですかな?」



「あっ…あの肩の…!」


「本当に光ってないか…!?」


共に入ってきた者たちが、はっと声を上げた。



「本当だったのか…!?」


「妄想ではなかったということか…」


「おい、言葉に気を付けろ。ロデオ総長のご息女だぞ」


ざわっ…と一気に騒がしくなった。



「ほうっ…ほう、ほう…!」


スワハマの細い目が、大きく見開いた。



「ほうっ…誠に、それが…!」



「黙れ。まだ尋問の途中だ」


国王の冷たい声が、ひやりと響いた。



「俺がまだ、こいつと話している。邪魔するな」



「…尋問、ですと?」

スワハマはリリアンヌへ顔を向けたまま、馬鹿にするような笑みを浮かべた。



「ふんっ…こんな茶番が…」


最後の言葉までは、聞き取れなかった。



「リリアンヌ」



「はいっ…」


はっと、顔を上げた。



「お前は、加護を貰ったと言ったな」


レックスは、再びリリアンヌを見下ろしていた。



「はい…恐らくですが、貰いました」


先ほどと、まったく同じやり取りだ。


どうしてまた、確認する必要があるのだろう。



「加護を貰っただと…!?」


スワハマが、強く反応した。



「そして、お前はまだ、何ができるか分からないと言った」

レックスは、わずかに声を張り上げた。



「はい。まだ、何も分かりません」


今度は、しっかりと頷いた。



「それなら、試していくしかないな」



「陛下!」

ロデオが、すぐに声を上げた。



「試すとは、何です?リリアンヌをどうするというのですか!」



「そのままの意味だ。ちからを得たのか分からないのなら、試すまでだ」



「リリアンヌは、まだ八歳です。なぜ精霊の加護を貰ったのかも分からないのに、見定めるようなことはやめていただきたい」



「お前は、何を言っている?」

レックスは、ぎろりとロデオを見下ろした。



「その鳥が本物の精霊で、本当に加護を貰ったなら、こいつは世界で唯一の加護持ちということになる」


低く淡々とした声が、静かな室内によく響いた。



「『精霊の加護を授かった者は国に尽くし、有事の際は必ず参加すべし』という古い法律が、生きている」


国王の声は――冷たく、無慈悲だった。



「そういうことだ、リリアンヌ。今日から、国のために尽くせ」



「…!?」



「…せめて!」

ロデオはリリアンヌの肩を掴み、自分の方へ抱き寄せた。



「せめて、落ち着いてからにしてくれ…!家族と話し合う暇もくれないというのですか!」



「なら、明日からだ。今日は帰っていい」

レックスは平然と答えた。



「はぁ…!?」



「もともと、そいつは国のために尽くす王族だろ。いつまで隠しておく気だ」



「それはっ――」



「わ、私は、牢屋に行くのでしょうか…?」


剣呑な応酬の中に、か細い声が落ちた。



「…あ?」


国王の顔に、わずかに驚きの表情が混ざった。



「なぜお前を、牢屋に入れなきゃいけない?」



「明日から国のために尽くすということは、私は監禁されるのでしょうか」

リリアンヌは震えながら、じっとレックスを見つめ返した。



「協力しますから、お願いです。エラドリオール邸から通わせてください」


ここだけは、どうしても譲れない。



「私は、家族と一緒にいたいです」



「リリィ…」


ロデオは、リリアンヌの肩を優しく撫でた。



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