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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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大国の王④

リリアンヌ視点



「…ルイージ」



「はい」


玉座の横に立つモノクルの男性が、国王の呼びかけに答えた。


彼が、ルイージなのだろう。



「お前は、どう思う」



「…加護を授かったことを前提で、話を進めますが」

ルイージは、静かにモノクルを指で押し上げた。



「加護を持つ者の住まいに関しては、どの法律にも記載がありません。記載がない以上、強要はできませんから、リリアンヌ殿下のご希望を優先されるべきでしょう」



「…だそうだ。住むところは好きにしろ」

レックスが付け足すように言った。



「…!」



「いけません!」


安堵の息を吐く前に、すぐに鋭い声が飛んだ。



「陛下!リリアンヌ殿下を、すぐにでもセスランディア大聖堂へ入れるべきですぞ」

スワハマは両手を広げ、熱弁した。



「大聖堂は、精霊王を祀る場所。まさしく、精霊の加護を持つ者が住まうところにぴったりではないか!」



「…余計なことを」

ロデオが、唸るように呟いた。



「こいつを大聖堂へ入れて、どうする」



霊拝師(オランス)と同じく、オーリア教について学ぶのです」

スワハマはさらに一歩踏み出し、レックスへ答えた。



「加護を持ったのなら、正しい知識がなおさら必要だ」



「リリアンヌは、白の使い手ではない!住むところはどこだっていいだろう!」

ロデオが噛みつくように叫んだ。



「……」


父の言葉に、胸がずきりと痛んだ。



「白の使い手は、例外なく大聖堂へ入り聖職者となる。それだけではないな。特別なちからを持つ者(アニマソムニア)の多くが、国のために尽くしてきた」

スワハマは、ふんっと馬鹿にするような笑みをこぼした。



「ロデオ殿下、ご自身の御子だけ特別扱いというのですかな?」



「スワハマ大教主。言葉が過ぎますよ」



「相変わらず貴殿は甘いな、ルイージ宰相。ことの重大さが分かっていないようですな。精霊、ですぞ!そのちからの素晴らしさは、誰もが習ってきたはずだ」

スワハマは、じとりとルイージを見やった。



「みすみすリリアンヌ殿下と屋敷へ帰して、精霊が逃げたらどうする気だ!」



「……」

リリアンヌは、胸の前でぎゅっと両手を握りしめた。



「私の娘より、精霊が大事だと言うのか」


ロデオの体から、わずかに殺気が漏れた。



「…失礼、そういう意味ではなかったのですがな。儂は、慎重に事を運ぶ必要があると言っている」

スワハマは、ごほんと咳払いをした。



「リリアンヌ殿下!セスランディア大聖堂は聖守護騎士団(サークラグラディウス)により、堅く護られている」


スワハマの指した先には、一目で騎士と分かる人たちが並んでいた。



「どこよりも安全な場所で、あなた様の素晴らしいちからを確かめましょうぞ!」



「エラドリオール邸も衛兵たちにより護られている。問題ない」



「騎士と兵士を、同じにしないでもらおうか」

スワハマは、無遠慮にロデオを睨みつけた。



「スワハマ、黙れ」


国王の鋭い声が、再び飛んだ。



「俺が、好きなところへ住めと言った。意見するな」



「…陛下、ですが」



「こいつは、俺が使うって言ってんだ」


レックスの目は、しっかりとリリアンヌへ向けられていた。



「…っ」


倒れそうになる体を、なんとか支えた。



「リリアンヌ、今日はもう帰れ。明日また登城しろ」



「…は、はい」


監禁は、免れた。


少なくとも、すぐに精霊を取り上げられることはなさそうだ。



けれど、あまりにも状況は絶望的だった。



「…帰ろう、リリィ」

ロデオは、さっとリリアンヌを抱え上げた。



「…待って、お父様…!アランフォース副団長は…?」


アランフォースは、まだ玉座の前で立ったままだ。



「アランフォース、お前は残れ」


ロデオに代わり、レックスが答えた。



「…!アランフォース副団長は、私を助けてくださっただけです…!」

リリアンヌはロデオの腕の中から、勢いよく玉座へ顔を向けた。



「どうか、アランフォース副団長を罰さないでください…!」



「……」


レックスは何も言わず、じっとリリアンヌを見下ろした。



「お願いします…」

リリアンヌは、泣きそうな目で見つめ返した。



「…話を聞くだけだ」


国王の声から、少しだけ鋭さが抜けた気がした。



「大丈夫です」



「…!」


耳元で囁かれた声に、リリアンヌは、はっと顔を隣に向けた。



「大丈夫です。問題ありません」

アランフォースは顔を寄せ、そっと囁いた。



「また…どこかでお会いできますか?」


こんな別れ方をしてしまうのは、寂しい。



「…ええ、必ず」


アランフォースは、小さく口角を上げた。



「…!?」


「あ、アランフォース殿が…」


「今、笑ったのか…!?」


室内が、わずかにざわめいた。



「…行くぞ」


ロデオはリリアンヌを抱え上げたまま、足早に玉座の間を後にした。



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