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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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ふたりと精霊⑤

リリアンヌ視点



勢いのままに、精霊の加護を貰ってしまった。



スノウを助けたことは、後悔していない。


加護を授かったことも、とても嬉しい。


嬉しいけれど――



「ホ~」



「あ…」


スノウがぱたぱたと羽ばたき、肩へ移動した。



「そこがいいんだね?」



「ホ~?」


駄目かなと言うように、スノウが一鳴きした。



「ううん、いいよ」



「…精霊が何を言っているのか、分かるのですか?」



「…なんとなくですが」


リリアンヌは、気まずそうにアランフォースから目を逸らした。



アランフォースは、何も聞いてこない。


聞いてこないから、甘えてしまっている。



だけどアランフォースは、騎士だ。


国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の、副団長だ。


起きたすべてのことを、父に報告するのだろう。



自分が加護を授かったということを、アランフォースは気付いていない。


けれどこれは、隠すことはできない。



スノウは、自分から離れることはない。


見た目からして、ただの鳥でないことは一目瞭然だ。



それに、白のちからを持っていることももう隠せない。


これはもう、アランフォースに確実に気付かれている。



白のちからを持っていて、加護を授かって、


それが報告されたら――



その後、どうなるのだろう。



精霊から加護を授かるなんて、少なくとも四百年は例がなかったはずだ。


加護を貰って良かったね、では終わらないだろう。



霊拝師(オランス)として、セスランディア大聖堂に入るのか。


それとも加護を持つ者として、どこかで調べられるのか。



スノウがいたことで、もう確信した。


“デューゼの森の悪夢”は、必ず起こる。



スノウの加護を貰ったのならば、


マドカがいないのならば、私が――



「…リリアンヌ殿下」



「…はい」


リリアンヌは、ゆっくりと顔を上げた。



「私に何か、力になれることはありますか」


アランフォースは、じっと真剣な表情を向けていた。



「いえ、そんな…!」


咄嗟に、首を振った。



「騎士様のお手を煩わせたら、お父様に叱られてしまいます…!」


本来なら、すぐにでも国王の前に連れて行かれたかもしれない。


精霊の話の前に、立ち入り禁止区域に踏み入れてしまったのだから。


それなのに、まず父のもとへ行こうと提案してくれている。



それだけでもすごくありがたいのに、


これ以上、アランフォースを巻き込むわけにはいかない。



「…リリアンヌ殿下」


アランフォースが、もう一度名を呼んだ。



「もし、お困りのことがあるなら――私にできる範囲で力を貸します」



「…!」


リリアンヌは、はっと息を呑んだ。


驚くほど、まっすぐな目だった。



「あの…でも、本当にこれ以上は――」



「何と言って説明するつもりなのです?」



「…えっ?」



「ロデオ総長に、どこまでをお伝えするつもりなのですか」



「どこまでって…どういうことですか?」

リリアンヌは、困惑したように首を傾げた。



「ユーレンス副団長が、すべてをお話するのではないのですか…?」



「ですから、どう報告するかをリリアンヌ殿下と決めたいと思っています」



「…ほ、本当に…?」


本当に、話を合わせてくれるというのだろうか。



「ええ。もちろんです」

アランフォースは、迷いなく答えた。



「…ユーレンス副団長。お願いがあります」


それなら、まだ――



「私が白のちからを使えることは、秘密にしていただけませんか?」


まだ、隠すことができる。



「…ロデオ総長は、知らないのですね」



「はい。…誰にも言っていません」


正確には、数人、知っている人たちがいるけれど。



「その…精霊を見つけたことは、正直にお父様へお話します」


肩にいるのだから、隠すこともできない。



「だけど…白のちからを持っていることは、まだ秘密にしておきたいのです」



「分かりました」

アランフォースは、あっさりと返した。



「え…いいのですか?」


白の使い手を隠匿することは、罪となる可能性があると騎士が言っていた。


それはきっと、アランフォースだって同じだ。



「何でも力になると約束しました。リリアンヌ殿下がロデオ総長へお伝えするまでは、誓って誰にも話はしません」



「あ…ありがとう、ございます…!」


込み上がる涙を、必死に堪えた。



「必ず…いつか必ず、自分の口からお父様へお話しますから…」


なんて優しいのだろう。


なんて、まっすぐな人なのだろう。



こんな人だとは、知らなかった。



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