表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
94/222

ふたりと精霊③

リリアンヌ視点



音が止まり――再び、静かな森に戻った。



「…っ…はっ、はっ、はぁっ…!」

リリアンヌは俯き、胸を両手で握りしめた。



胸が、苦しい。


全身から、一瞬で汗が噴き出た。


涙で霞む目をこすり、顔を上げた。



ふくろうの精霊は、攻撃を止めていた。


何が起きたか分からないのか、目を丸くしている。



「…はっ、はっ、はぁ…」


リリアンヌは荒い息をこぼしながら、アランフォースの脇を通り過ぎた。



精霊は、まだ動かない。



「…こんにちは」


目を真ん丸にして、じっとこちらを見つめている。



「…触れてもいいかな?」


リリアンヌは精霊の前で屈むと、そっと両手を前に伸ばした。


驚かせないように、ゆっくりと――



「ホ~」



「!」


精霊はぴょんと跳ね、リリアンヌの手のひらに乗った。



「小さい…」


こんなに、小さかっただろうか。



丸い黒目に、両手に収まるほどの体。


白いと思っていた光は、少しだけ青みがかっていた。


だけど羽は真っ白で、とても綺麗だ。



精霊は、くくくっと首を傾げると、再び小さく鳴いた。



「ホ~」


その目は、まっすぐにリリアンヌだけを見つめていた。




「…ごめんなさい」


ぽつりと、言葉が落ちた。



どこか――他人事のように考えていた。



この子は、ここで消えてしまいそうだったのに。


どうして、もっと早く助けてあげなかったのだろう。



「遅くなって、ごめんね…」


リリアンヌは両手に包んだ精霊を、そっと額に近づけた。



「…温かい」


この子は、こうやって生きているのに。


意思をもって、生きているのに。



「本当に、ごめんなさい…」



“物語”のことばかり気にして、この子の想いなど考えてもいなかった。


本当に、最低だ。


いつだって、自分のことばかり。



私は本当に、何も学ばない。




「ごめんなさい…っ」


目から、ぽたりと涙が落ちた。



「…ホ~」


精霊は、優しくリリアンヌの額に体を寄せた。


額に、羽が優しく触れた。



「ふふっ…くすぐったい」


まるで、もう大丈夫だと言っているようだ。


触れる羽が、じんわりと温かい。




ふいに――精霊とリリアンヌの体が、白く光った。




「え…!?」


体の中に、何か温かいものを感じる。


白のちからを使っていないのに――



光は、すぐに消えた。



「あ…!」

リリアンヌは、はっと精霊に顔を向けた。



この子が、何を考えているか伝わってくる。


今、この子は――



私に、加護をくれた。




「ホ~…」



「…あ、うん、そうだね」


精霊が、名前を欲しがっている。



「…スノウ。…あなたは、スノウ」


雪のように真っ白で綺麗な、ふくろうの精霊。


“物語”では、名前も出ずに消えてしまった精霊。



「スノウ…ありがとう」



「ホ~…!」


スノウは、嬉しそうに羽を小さくばたつかせた。



「…可愛い」


なんて優しい子なのだろう。


なんて、愛おしいのだろう。



この小さな子を、護りたい。


消えてほしくない。



「……」


リリアンヌは何も言わず、


小さな精霊を引き寄せ、抱きしめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ