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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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ふたりと精霊②

リリアンヌ視点



「…うわぁ」


リリアンヌは状況も忘れ、目の前の光景に感嘆の声を漏らした。



聖樹は、自分の視界内に収まりきらなかった。



裏門や城壁より、ずっと高い。


いくつもの幹が複雑に絡まり合い、上へ上へと伸び、ひとつの樹になっている。


丸みを帯びた青い葉が、天を覆いつくすように幾重にも茂っている。


そのすべてが淡く、白い光を放っていた。



とても柔らかい光だ。


まるで生きているかのように、光がゆっくりと根から幹へ流れている。


聖樹の光に照らされ、周りの草木まで輝いていた。



本当に、“物語”の世界へ足を踏み込んでしまったみたいだ。



いや――


それよりももっと、神秘的な場所だった。



「…あっ!」


思わず声を上げた。



大きな樹の根元で、聖樹とは別の小さな光を見つけた。



「ユーレンス副団長…!下ろしてください」

リリアンヌは小さな光へ目を向けたまま、アランフォースの肩を軽く押した。



本当に――精霊がいた。




「…あの光のもとへ行けばいいのですね」


アランフォースは、そのまま光の方へ進んでいった。



「あ、あのっ…危ないので、ゆっくり…」



「…危ない?」



「…はい」


精霊は、驚いた時や攻撃を受けた時、反撃してくることがある。


その威力は、凄まじい。



「ですので…光から少し離れたところで、止まってくれますか」



「…分かりました」


アランフォースは小さな光を前に、十分な距離を空けて立ち止まった。


リリアンヌを下ろすと、光の方へ体を向けて屈み込んだ。



「あの光は何なのです?」



「ユーレンス副団長は、ここにいてください。私は、もう少し近づきます」



「…あの光は、何なのですか」

アランフォースは、もう一度尋ねた。



「…あれは、精霊です」

リリアンヌは、そっと答えた。



「精霊…?」


振り向いたアランフォースは、訝しげに眉を寄せていた。



「…はい」


信じられなくて、当たり前だろう。


精霊は、とっくに見えなくなってしまったと言われているのだから。



「私は、もう少し近づきます」



「……」



「あの…ユーレンス副団長」



「……」


どうしよう…


アランフォースが制するように手を伸ばしたまま、微動だにしない。


これより前に出てはいけないということだろうか。



「……」

リリアンヌは、アランフォースの後ろから小さな光の方へ目を向けた。



光の中心には、小さな鳥がいた。


“物語”と同じ、ふくろうの精霊だ。



けれど、光が弱々しい。


外傷はないようだ。


じっと動かず、ただ薄く目を閉じている。



まるで――もう、消えてしまうかのようだ。



「…っ」


リリアンヌは、ぱっと辺りを見渡した。



マドカがいる様子は、ない。


それどころか自分たち以外、誰もいない。



異様なほど静かだ。



「どうしましたか」



「…あ」


いつの間にか、アランフォースが再びこちらを見ていた。



「あの、ユーレンス副団長――」




――バチィッ…!



「わっ…!?」


大きな音に、咄嗟に耳を塞いだ。



「!」


アランフォースの手が後ろに伸び、さらにリリアンヌを下がらせた。



――バチバチッ…



「あっ…」


大きな音を出しているのは、精霊だった。



自分たちに気付き、攻撃している。


バチバチと、無差別に火花を散らしていた。



「大丈夫…!私たちは、敵じゃない」


精霊の攻撃は、ここまで届いていない。


動けないのか、こちらに近づかない。



けれど――


あれだけちからを使っていれば、いつか消えてしまう。



「…っ」



「!駄目です…!」


アランフォースは飛び出したリリアンヌをすぐに掴み、再び体の後ろへ隠した。



「アラン…ユーレンス副団長っ…お願い…!」



「あの状態で近づくことは、絶対に許可できません」



「…!」


リリアンヌはアランフォースの腕を掴みながら、精霊に顔を向けた。



「…お願い、落ち着いて!私たちは、攻撃したりしないから!」


精霊は、さらに激しく火花を散らした。



「そんなにちからを使ったら、消えちゃうから…っ!お願い!」



――バチバチバチィッ…!



弾ける火花がどんどん近づき、


アランフォースの足元にまで届いた。



「……」


アランフォースの手が、静かに腰元の剣に添えられた。




「…駄目!」



叫ぶと同時に――


辺り一面が、白い光に溢れた。



「…!」


アランフォースは、伸ばしかけた手をぴたりと止めた。



強烈な光は、アランフォースを越え――その先の精霊まで届いた。



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