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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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交差するふたり②

リリアンヌ視点



「ええっ…お、お嬢様ぁ!?どこですか…!?」


戸惑うニアの声が、背中から聞こえる。



「ごめんね…」


リリアンヌは口の中で小さく謝ると、静かに樹から樹へと飛び移った。



こうなったら、もう後戻りはできない。


時間との勝負だ。


ニアが父へ報告する前に、戻ってこないと。



あっという間に、裏門の前に辿り着いた。



「…!」


門の前に、近衛隊の兵たちが立っている。



それは…そうだ。


門には、必ず門番がいる。


万が一いなかったとしても、開けることはできない。



樹の陰に隠れながら、裏門を背に、第一城壁沿いを進んだ。



跳ねて越えるしかない。


けれど、城壁はとんでもなく高い。



首を真上に向けても、城壁の上は見えない。


一跳びでは、とても届きそうにもない。


どこか、足を引っかけて登れるようなところはないだろうか。



「…あ」


城壁沿いを進んでいると、丸く張り出した塔が見えた。


縦に並ぶ窓があり、いい足場になりそうだ。


これが、一塔、二塔と呼ばれる見張り塔なのだろう。



「……」


後ろへ振り返り、門番たちから見えないか何度も確認した。



ここの塔には、人の気配はしない。


気配を感じないだけで、塔の中や城壁の上の通路には兵士がいるのかもしれないけれど。


けれど少なくとも、周囲には誰もいない。



「…よし」


塔の真下へ進み、小さく息を吐いた。



登るなら、一気に塔の上へ。


目指すは、屋根だ。



――トッ…



リリアンヌは勢いよく地を蹴り、跳ねた先の窓の縁に足を掛けた。


素早く縁を蹴り、再び上へ跳ねた。



途中で、足を止める暇もない。


万が一塔の中に誰かいたら、壁を登る不審者がいると大騒ぎになってしまう。



最後に大きく踏み切り、屋根へ飛び乗った。



「…っ、とと…」


屋根の上でバランスを崩し、どたんと両膝をついた。


両手をついて這いながら、急いで城側とは逆の方へ回った。



屋根の上から、素早く城壁の上の通路を覗き込んだ。


通路にも、裏門の向こうにも、誰もいなかった。



「…はぁ」


心臓がドキドキしすぎて、痛い。



とんでもないことを、してしまっている。



ただ客間から抜けただけではない。


庭園へ出たどころか、その先の第一城壁を登ってしまった。


しかもこれから、許可がなければ入ってはいけない裏門の先へ行こうとしている。



見つかれば、父に怒られるどころでは済まないだろう。


もしかしたら、罰も受けるかもしれない。



だけど、もう、ここまで来てしまった。


これで、聖樹には辿り着ける。



「……」

リリアンヌはゆっくり顔を上げ、視線を正面に向けた。



門から続く、大きな通りが目に入った。


その道は、途中で左右二手に分かれている。



左に進めば、花畑。


右に行けば、聖樹。



「…あ」


右に続く道の先を見上げて――



「うわぁっ…」


思わず、感嘆の声を漏らした。



聖樹が、ここからでも見える。


他の樹と比べ物にならないくらい、高くて大きい。


特徴のひとつである青々とした葉が、豊かに茂っている。



本当に――


聖樹が、光っている。



白く、淡く、優しく光っている。


すごく…綺麗だ。



あれが、現実の聖樹…



「あっ…」

リリアンヌは、慌てて首を振った。



見惚れている場合ではない。


時間は限られているのだから。



屋根から顔を覗かせ、遥か先に見える地面へ目を向けた。



「…うわ」


思ったより、高い。


自室にある窓から見下ろす時よりも、ずっと地面が遠い。


跳躍のちからがあるとはいえ、失敗すれば大怪我では済まない。



「うう…」


でも、躊躇っている場合ではない。


頭さえ打たなければ、多少の怪我なら、白のちからで――




「――誰だ!」



「…!」


リリアンヌは膝をついたまま、はっと振り返った。



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