“仲間”との出会い⑥
リリアンヌ視点
「霊拝師の中に、少女はいません。このマコが、最年少です」
アイラに示されたマコが、リリアンヌに向かってぺこりと頭を下げた。
マコは、まだあどけなさが残る顔で、赤茶の髪にそばかすが可愛らしい。
けれど、どう見ても少女と呼ぶ年齢ではない。
「そう…ですか」
どういう…ことだろう。
「…お役に立てず、申し訳ありません」
「あっ…いいえっ…こちらこそ、変なことを聞いてしまって、ごめんなさい」
リリアンヌは、慌てて二人に顔を向けた。
「アイラ様、マコ様。貴重なお時間を、ありがとうございました。どうぞ、お気を付けてお帰りください」
「まあ…ありがとうございます。リリアンヌ殿下もどうか、お気を付けて」
アイラは小さく微笑むと、マコと階段を下りていった。
「……」
「はぁ…綺麗なお方でしたねぇ」
「…うん」
アイラは、とても綺麗だった。
けれど今は、それどころではない。
マドカが――いない。
どうしてだろう…
ブライアンやアランフォースは、“物語”と同じ状況なのに。
あと三人“仲間”がいるけれど、彼らは、もともと王都出身ではない。
だから、まだ会うこともない。
そう思っていたけれど、
まさか、一年前に王都へ来ているはずのマドカもいないなんて。
まったく、分からない。
けれど、もうこの時点で、“物語”と大きくずれた。
マドカは精霊を見つけないし、加護も授からない。
変わったというよりは…
やっぱり、“物語”のような未来は訪れないのかもしれない。
“デューゼの森の悪夢”なんて、起こらない。
国や王都が壊滅状態に追い込まれることも、あり得ない。
――本当に?
「さ、お嬢様。客間へ戻りますよ」
ニアが頬を膨らませ、目の前に立ちはだかった。
「霊拝師様にまで変な質問をなさって。まったく…お嬢様の心の中は、どうなっているのでしょうね」
「…ニア!」
「駄目です」
リリアンヌが何か言う前に、ニアは首を振った。
「お願い…!裏の庭園に行きたいの」
「駄目ですって――え、庭園?」
「うん…!この間、お茶会をした場所あるでしょう?あそこに行きたいの」
リリアンヌは両手を胸の前で組み、ぐいっとニアに近づいた。
「ええ…?あそこは、大広間から繋がっている庭園ですよ?すぐご主人様に見つかっちゃいます」
「見つからないように行くから」
「だ・め・で・す。廊下までというお約束だったでしょう?」
「ニア…お願いします。とても大切なことなの」
リリアンヌは眉を寄せ、必死で頼み込んだ。
「はあ…お嬢様がここまで強引だなんて、珍しいですね」
ニアの表情が、みるみる困り顔になった。
「大切なことって、何なのです?」
「うまく言えないけれど…ニアにとっても、大切なことなの」
「ええ?」
「お父様への報告は、すべて正直にしてください。何かあったら、私のせいにしていいから」
父への言い訳を考えるのは、後だ。
「そんなわけにはいきませんよぉ」
「いいえ。ニアは、私に強引に連れて行かれただけ。――こうやって…!」
「あっ!ちょっ…お嬢様ぁっ」
リリアンヌはニアの手を強引に引っ張ると、客間とは反対方向へ足を進めた。
とにかく今は、早くここから去りたい。
客間の前にいる使用人たちにまで呼び止められてしまったら、どうすることもできない。
せめて、精霊がいないということを確かめなければ。
そうしたらきっと、“物語”の通りには進まないのだから。
だけど、万が一精霊がいたら――
“デューゼの森の悪夢”が起こる可能性が、一気に高くなる。
マドカがいないのなら、誰も異形の存在の侵攻を止められない。
そうなったら、国の半壊では済まない。
国が――
いや、世界が壊滅するかもしれない。
だから、この目で直接確かめなくてはいけない。
どうしても、聖樹のもとへ行かなくてはいけない。




