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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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“仲間”との出会い⑤

リリアンヌ視点



霊拝師(オランス)様、いらっしゃいませんね~」



「…あ」


頭の上から聞こえた声に、はっと思考を止めた。



「もう、通る人も減ってきてしまいましたね」


いつの間にか上からニアが屈んで、同じように覗き込んでいた。



「…そうだね。もう、中に入ってしまったのかな」

リリアンヌは再び支柱から顔を覗かせ、一階へ視線を落とした。



今、気にするべきはアランフォースではなく、マドカだ。


先ほど見かけた霊拝師たちが、そのままの格好でいるならすぐ見つけられるはずだ。


ドレスの中に聖職者の格好をした人たちがいれば、騎士より目立つだろう。



「…いないね」


そもそも、祝宴に参加しているのだろうか。


アイラという人は参加しているかもしれないけれど、


それ以外の人たちは、ブライアンへ祝いの挨拶だけをしに来たのかもしれない。



それなら、客間のどこかにいるのだろうか。


それとももうマドカは、抜け道から聖樹へ向かってしまったのだろうか。



「誰かをお探しですか?」


後ろから、凛とした声が届いた。



「…えっ」


リリアンヌは振り向き――そのまま、固まった。



立っていたのは、白の長衣に、薄絹の外套を重ねた姿の女性二人だった。


外套と同じ色合いの被りものには、金糸の刺繍が控えめに施されている。



――霊拝師だ。



「迷子…かしら」


手前の霊拝師が一歩近づき、再び口を開いた。



薄い桃色の前髪が、被りものから溢れている。


透き通るような茶色い瞳が、綺麗だ。



少し吊り上がった眉も、


つんと上がった小鼻も、


まるで、作られた人形のように整っている。



すごく、目を引く人だった。




「…大丈夫?」



「…大変失礼しました」


リリアンヌはそっと立ち上がり、二人の霊拝師へ体を向けた。


三度も声をかけさせてしまった。



「初めまして、霊拝師様。私は、ロデオ・エラドリオールの娘、リリアンヌと申します」


いつものようにドレスの裾を軽く摘まみ、膝を曲げて挨拶した。



「迷子ではなく、人を探していました。ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません」



「…!ロデオ総長のご息女様でしたか」


手前の女性が、はっと姿勢を正した。



「私は、上級(フロース)霊拝師のアイラと申します。お会いできて、大変光栄でございます」



「…!」


その名を、何度も聞いた。


彼女が、国一番の白の使い手だ。




「人探しですか…何か、お役に立てればいいのですが」



「あ…いいえ。実は、霊拝師様を探していたのです」



「私たちを…?どうしてでしょう?」

アイラが、きょとんと目を瞬いた。



「え…ええと…アイラ様は、これから祝宴へ参加されるのでしょうか?」


しまった。


理由も考えずに、霊拝師を探していると言ってしまった。



「いいえ。これから、大聖堂へ戻るところです」



「えっ?」


思わず、声が漏れた。



「え?」


合わせて、アイラも声を上げた。



「あの…父から、アイラ様は祝宴に参加されると聞いていたものですから」


いけない。


霊拝師を、困らせてしまっている。



「ああ…私が参加していたものは、授与式の方です」


アイラは、気にしている様子もなく答えた。



「ブライアン殿下へのご挨拶も終わりましたので、これから帰るところなのです」



「…霊拝師様は、全員帰られるのですか?」



「ええ。私たち二人が、最後です」



「そう…ですか」


ということは――


マドカは、もう抜け出しているはずだ。



だけどアイラも、その後ろの霊拝師も、特に慌てている様子はない。


まだ、気付いていないのだろうか…。



「…申し訳ありません、リリアンヌ殿下。人を待たせておりますので、この辺りで失礼させていただきます」

アイラが、控えめに口を開いた。



「あっ…呼び止めてしまって、申し訳ありませんでした」


考えるのは、後だ。



「私は、客間に戻ります。アイラ様、お声を掛けていただいて嬉しかったです」



「とんでもございません。それでは、失礼します」


アイラともうひとりの霊拝師が、リリアンヌに向かい、丁寧にお辞儀した。



「行きましょう、マコ」



「…あ、はい…!」


アイラに呼ばれた霊拝師は、慌ててリリアンヌから目を逸らした。


二人は廊下を進み、入り口に繋がる階段を下りていった。




「――あの…!」



「…え?」


アイラとマコはすぐに足を止め、ゆっくり振り返った。



「お嬢様ぁっ…」



「あのっ…もうひとつ、聞きたいことがあるの」


リリアンヌは止めるニアを無視して、立ち止まった二人のもとまで駆け寄った。



「はい、何でしょうか」



「少女の霊拝師様を、探しているのだけれど」


せっかく霊拝師に会えたのだから、


やっぱり、どうしてもマドカについて聞きたい。



「少女の霊拝師…?」

アイラは、不思議そうに首を傾げた。



「…はい。十歳くらいの…」


私より三歳上だから、十一歳のはずだ。



「…リリアンヌ殿下」



「はいっ…」


リリアンヌは、びくりと姿勢を正した。


どこか、アイラの表情が硬い。




「少女の霊拝師は――いません」



「…え?」


言葉の意味が、呑み込めなかった。



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