表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
84/223

“仲間”との出会い④

リリアンヌ視点



「もう…仕方ないですねぇ」


ニアが、重い腰を上げた。



「ですが、霊拝師(オランス)様が通るかまでは私も分かりませんよ?」



「うん。それでも大丈夫」

リリアンヌはソファの上に本を置き、扉に向かうニアに続いた。



「…!リリアンヌ殿下、どうされました?」


扉から二人で出ると、先ほどの年かさの使用人が振り向いた。



「あの…少しだけ、そこから王城の入り口を見てみたいの」



「なるほど…祝宴に参加される方々が、よく見えますからね」

使用人は、納得するように頷いた。



「お気を付けて行ってらっしゃいませ」



「ありがとう…!行ってきます」


リリアンヌは使用人に返しながら、廊下を小さく駆けた。



「お嬢様~。お城で走っちゃ駄目ですよぉ」



「うん…!」


すぐに目当ての場所へ辿り着いた。



王城の入り口をくぐると、まず、大きな中央階段が現れる。


その階段の先は、王城で一番大きな広間だ。


今日の祝宴は、その大広間で行われる。



大広間に入る扉の手前には、さらに左右に分かれる階段があり、二階へ繋がっている。


案内された客間は、この二階にある。


二階の吹き抜けになっている廊下からは、大広間へ続く中央階段が見渡せた。



リリアンヌはつま先立ちになり、手すりの上から一階を覗き込んだ。



「うわっ…」


慌てて、すぐに顔を引っ込めた。



思った以上に客人が多くいる。


覗いていたら、見つかってしまいそうだ。



「……」


今度はしゃがみ込み、支柱の隙間から覗いた。


これならきっと、目立たない。



「私は、ここから見てますね」


ニアは、少し離れたところにある大きな花瓶の横に、隠れるように立った。



「…ごめんね」

リリアンヌは小さく謝ると、再び中央階段へ視線を落とした。



綺麗に着飾った男女が階段を上がり、続々と大広間へ吸い込まれていく。


自分もなかなか着飾ったと思ったけれど、大人たちは、もっとすごい。



令嬢や貴婦人たちは、誰もが華やかなドレスを身にまとっている。


豪奢な髪飾りが、光を反射して眩しい。



男性陣も負けじと、派手な上衣やコートを身につけていた。


胸元に着いている大きなブローチや、いくつもの飾りがついた上衣がよく目立つ。


まるで、お互いどれだけ豪奢に飾りつけられるか、張り合っているようだ。



開け放たれている大広間の扉の中から、明るめの曲調の音楽が聴こえている。


どこもかしこも、豪華だ。




その時――階下が、ざわっ…と騒めき立った。



「…?」


支柱に両手を付いて、さらに覗き込んだ。


みんな、入り口から入ってくる団体を見ている。



「…っ!」


その団体を見た瞬間、リリアンヌは大きく息を呑んだ。



入り口から入ってきたのは、数人の男性たちだった。


全員、正装姿だ。


着飾っている貴族たちに比べ質素で、装飾品は帯剣くらい。



それでも、すごく目立つ。


体格も雰囲気も、周囲の人たちとまるで違う。


あの人たちは、騎士だ。



その中でも――一番背の高い男性。


陽に灼けたような褐色肌に、燃えるような真っ赤な髪。


その特徴的な髪を後ろに掻き上げ、ひとつに結んでいる。



周囲の女性たちが、ちらちらと彼に目を向けている。


当の本人は、ただまっすぐ前だけを見て、


他の騎士たちと共に、中央階段を進んでいった。



アランフォース・ユーレンス――


“仲間”の、ひとりだ。



なんて格好いいのだろう。


まだ二十歳を過ぎたばかりのはずなのに、年齢以上に大人びて見える。




ふいに――アランフォースの視線が、上を向いた。



「え」


ぱちりと、目が合った。



アランフォースはすぐに目を逸らすと、


騎士たちと大広間の扉をくぐり、見えなくなった。



「うわわ…」

リリアンヌは顔を引っ込め、赤くなった頬を両手で隠した。



一瞬でも、目が合った。


なんたる幸運。


まさかこんなところで、アランフォースに会えると思わなかった。



“物語”通りなら、今、彼は国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の副団長のはずだ。


騎士だけで結成された、最強の集団。



先ほど一緒にいた騎士たちの中で、もうひとり、見覚えのある橙色の髪の男性がいた。


エドガー――国王直属騎士団の団長だ。


彼もまた、“物語”の序章で登場する。



騎士たちも、こういう場に参加するなんて知らなかった。



「あ…そっか」


そういえば今日は、褒賞授与式も兼ねていると父と兄が言っていた。


エドガーもアランフォースも、討伐に貢献して招かれたのかもしれない。



アランフォースはまだ若いのに、最強騎士団の副団長なんて。


きっと普段から、いろいろと功績を挙げてきたのだろう。



さすが――


未来の総長だ。



“アランフォース”は、父ロデオの亡き後、総長となる。


“デューゼの森の悪夢”で、異形の存在(ゼノプーパ)の大群に挑んだ王国軍は壊滅し、


彼だけがエドガーのちからによって、ひとり王都へ帰還する。



“リリアンヌ”と同じく――悲しい運命を背負うひとりだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ