序章Ⅱ(リリアンヌの秘密)③
リリアンヌ視点
ここは――
【セスランディア王国物語】の世界で間違いない。
霊拝師のマドカ、黒の騎士リリアンヌ――二人の主人公と、
五人の仲間と共に旅するゲーム。
壊滅状態となったセスランディアを復興していく物語で、内容は終始暗く、重い。
最後まで明かされない謎も多く、すっきりしない終わり方だった。
【セスランディア王国物語】では、魔法が存在しない。
代わりに、“特別なちから”を使って戦っていく。
敵は、“異形の存在”という黒い化け物だった。
その“物語”では、五年後――
異形の存在の大群が王都レイセントを襲い、壊滅の危機に陥る。
父ロデオは、討伐戦で死亡。
兄サイラスは、王都でリリアンヌとアヴェリーンを庇い、死亡。
母アヴェリーンは、悲しみに心身を蝕まれ、やがて命を落とす。
家族を失ったリリアンヌは、憎しみと悲しみから、異形の存在の殲滅を誓う。
父と兄の跡を継いで騎士となり、物語の主人公として旅に出る。
そして――
…とにかく、この先には絶望しか待っていない。
今があまりに平穏で、まったく実感が湧かない。
ただ、まだこの世界が物語通りに進んでいくかは分からない。
まだまだ、この世界について知らないことだらけだから。
だけど教師の話で、特別なちからも、他の種族も存在することは分かった。
そして…異形の存在がいて、被害を出していることも間違いない。
それなら、本当に五年後に、王都は襲われるかもしれない。
もしそうなったら、異形の存在の大群は、もうひとりの主人公マドカが消し去るはずだ。
だけどそれを待っていたら、家族は死んでしまう。
何か――
私にも、できるだろうか。
特別なちからを持つ者として。
何か、今のうちにできることはあるのだろうか。




