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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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久しぶりの登城①

リリアンヌ視点



「お嬢様、とっても可愛らしいです!」


ニアが、今にも拍手しそうな勢いで言った。



「まるで、花の精霊が現れてしまったようですよ」



「ありがとう、ニア。このドレス、とても素敵」

リリアンヌは、その場でくるりと回った。



ふわりと広がる、橙色のドレス。


裾には、白い花の刺繍が散りばめられている。


肩の下から広がる透けた袖が、動くたびにひらひらして、とても可愛い。



「髪も、なんだか大人っぽい」


ドレスの色に合わせて、髪飾りには黄色や白色の小花が付いている。


すとんと落ちる自分の髪が、今日は、緩く波打っていた。


耳飾りも指輪もして、なんだか不思議な感じだ。



「今日は、随分と気合が入っていたね?」


準備から含めて、二時間近くかかった。



「もちろんですよぉ。久々の登城ですからね」



「でも、私は祝宴には出ないわ」



「関係ありませんよ。王子たちには、お会いするのですから」



「う~ん…多分、ブライアン王太子だけだと思うけれど」



「そこら辺は私には分かりませんが、とにかく、初めての行事です。

私たちの可愛いお嬢様の初お目見えなのですから、気合も入るというものです」


ニアはリリアンヌの前から立ち上がると、扉へ向かった。



「さ、ご主人様たちのもとへ行きましょう」



「ええ」

リリアンヌは姿勢を正し、ニアの開ける扉から廊下へ進み出た。



今日は――ブライアン王太子の誕生日だ。


私は、式典と祝宴の間に行われる挨拶にだけ参加する。



ブライアンは、九歳の時に特別なちからを持つ者(アニマソムニア)だということが判明した。


初代セスランディア王と同じ“光のちから”を持つブライアンは、その年に王子から王太子となった。


そこまでは、“物語”と同じだ。



王太子となってからは、ブライアンと一度も会っていない。


その前までは、よく兄と三人で遊んでいた。



遊んでいたというか…


兄とブライアンが何かしているのを見ていたというか…


…懐かしい。



私が二歳の時には、兄が屋敷から出て行き、三人で遊ぶこともなくなってしまった。


その翌年にはブライアンも王太子となり、会うこともなくなった。



…どうしてブライアンは、今回、私を誘ったのだろう。


従兄妹だから、おかしくはないけれど…


自分のことを思い出してくれたことが、嬉しくもあり、意外でもあった。




「おい、リリィ…!そんな可愛らしい格好で王城へ向かう気か!?」


前室に入るなり――


ロデオが、ソファから勢いよく立ち上がった。



「あなた、落ち着いて」

隣に座るアヴェリーンが、冷静に言った。



「リリアンヌ、とても可愛いわ」



「ありがとうございます。お母様も、大変お綺麗です」


母は、両脇に深く切れ込みの入った、紺青色のドレスを身にまとっている。


切れ込みの隙間からは、繊細で上品なレースが覗いていた。



「あら、ありがとう」


微笑む表情は、相変わらず綺麗だ。



「リリィ、本当にお前は可愛いな」



「!お兄様、すごく格好いいです」


リリアンヌは、サイラスを見上げながら額へのキスを受け取った。



父も兄も、今日は軍服ではなく正装だ。


白を基調とした上衣に、金色の刺繍を施したマントを肩から掛けている。


腰には、装飾の美しい鞘の剣が差してある。


兄はいつも無造作に垂らしている前髪を、今日は、後ろへ掻き上げて整えていた。



なんて絵になる一家なのだろう。


服装も、佇まいも、表情も。


まさに、王族そのものだ。



「はぁ…先行きが不安だな」

ロデオは小さく溜息をつくと、アヴェリーンに手を差し出した。



「そろそろ行こうか」



「ええ、そうね」



「リリィ、おいで」



「はい」


リリアンヌはサイラスと手を繋ぎ、腕を組んで歩く両親の背に続いた。



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