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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第二章/“仲間”と精霊
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父との和解③

リリアンヌ視点



「お父様、失礼します」



「リリィ!わざわざ、すまないな」


父は、すでに扉のすぐ前で待っていた。



「…!」



「さあ、おいで。ココアでも飲むか?」


ロデオはリリアンヌをひょいと抱き上げると、そのままソファの方へ向かった。



「い、いいえ…大丈夫です」



「なら、葡萄の果汁にするか?それとも、お前なら紅茶がいいか」



「いいえ…もうすぐお夕食の時間ですから、大丈夫です」


まだ、夕食まで時間があったけれど、


今は、何か喉を通る気がしなかった。



「そうか、分かった」


ロデオが視線を送ると、壁際で控えていた使用人たちが扉から出ていった。



「あの…それより、お父様。お話って何でしょうか?」


まさかまた、何か隠しているものが見つかってしまったのだろうか。



「用がなければ、お前を呼んではいけないか?」


父の声が、わずかに強張った。



「えっ…い、いいえ…!」



「まあ、用はあるのだがな。…それ以外にも、お前と話をしたかった」


ロデオはリリアンヌを膝の上に抱えたまま、ソファにどっかりと腰掛けた。



「……」


このまま、話をするのだろうか。



「明日がどういった日か、お前は知っているか?」



「えっ…ええと…いいえ」

リリアンヌは、戸惑いながら首を振った。



明日は、九の月の、三十日だ。


何か引っかかる気もしたけれど、すぐには思い出せない。



「明日はな、ブライアン殿下の誕生日だ」



「あ…!」


そうだ。


ブライアンの誕生日だ。


私と六歳違いだから、十四歳になる。



「…?」


何か、まだ引っかかる。



「ブライアン殿下の誕生日には毎年式典が開催され、その後には祝宴もある」

ロデオは構わず続けた。



「…?はい」


それは、そうだろう。


王太子の誕生日なのだから、規模も相当大きいはずだ。



「お前にも…参加してほしいとのことだ」



「えっ…?」

リリアンヌは、きょとんと目を瞬いた。



「ブライアン殿下たっての希望だ。お前に、王城へ来てほしいとおっしゃっている」

ロデオは、不満げに言った。



「…ええ?」


それは、とても光栄な話だけれど。



「だって…宴には、まだ行けないのでしょう?」


勝手に、そうだと思っていた。



「行けないわけではないが…まあ、だいたいが成人してから正式に社交へ出る」



「それなら、私はまだ行けません」



「だがな、王族は別だ。ブライアン殿下やサイラスは、とっくに社交の場へ出ている」



「わぁ…大変ですね」


思わず、他人事のような言葉が出た。



「…祝宴に行きたいか?」

ロデオは、そっとリリアンヌに顔を近づけた。



「……」

リリアンヌは、静かに目を伏せた。



…どうだろう。


ブライアンとは、五年くらい会っていない。



それに――彼は、“物語”で一緒に旅する仲間のひとりだ。


仲間の少年時代の姿なんて、見たいに決まっている。



けれど…今は、登城したいとは思えない。


そんなことより、調べものをしていたい。


もっと、知っておきたいことがある。




「…私のせいだな」



「…え?」


静かな声に、ぱっと伏せていた目を上げた。



「リリィ。まだ、どこにも行く気にならないか?」

ロデオは眉を寄せ、じっと娘を見やった。



「…あの、お父様――」



「式典と祝宴の間に、ブライアン殿下へ祝辞を述べに行く時間がある」



「…あ、はい」



「それに、お前も行くか。挨拶だけはしておこう」



「それでもいいのですか?」



「構わない。お前を、貴族どもの前に出すよりはまだいいだろう」



「ええと…挨拶が終わったら、私は帰っていいのですか?」



「…すまないな。お前を、ひとりで先に帰らせる気はない」

ロデオは、リリアンヌの背中をそっとさすった。



「祝宴が終わるまで、城で待っていてほしい」



「分かりました」

リリアンヌは素直に頷いた。



時間があるのなら、本を読んで待っていればいい。


ニアに頼んで、何冊か持ってきてもらおう。



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