とある国の新たな物語
セスランディアの王が、帰っていく。
整然と家々が並ぶコウランの大通りを、騎馬の一団がゆっくりと進んでいた。
屈強な黒い騎士たちの中に、異彩を放つ者たちがいた。
金色の長い髪をなびかせるのは、セスランディアの王。
鋭い目で、辺りをゆっくりと見渡している。
数多の命を奪ってきた、“残虐王”。
その腕の間には、精霊を肩に乗せた少女が座っていた。
後ろで結んだ黒髪を揺らし、まっすぐ前を見据えている。
華奢な姿からは想像もつかないほどのちからを持つ、白の使い手。
精霊の申し子だ。
精霊の申し子が、残虐王へ何かを話しかける。
すると王は、彼女にだけは優しく微笑んだ。
あの残虐王が、タッセントを同盟国とした。
国は奪われず、タッセントの名も残る。
精霊の申し子が、残虐王を説得した。
彼女は、神々しい姿となった白い鳥を空へ羽ばたかせ、町中に白い光を舞わせた。
その光が、蔓延していた病を消し去った。
それだけではない。
つい先日まで、この国の王子たちと共に町を駆け回っていた。
民を助け、王子たちと共に、惜しみなく白のちからを使った。
死にかけていた町は、少しずつ息を吹き返していった。
「先生ー!ありがとうございました!」
「精霊の申し子様!町を救ってくれて、ありがとう!」
町のあちこちから声が上がると、精霊の申し子は驚いたように民へ顔を向けた。
混乱の中では、気付く余裕さえなかった。
けれど、タッセントの未来が決まり、ようやく気付いた。
彼女は、コウランの――タッセントの救世主だ。
「また、来てください!」
「待っていますから!」
精霊の申し子は、にっこりと笑って歓声に応えた。
精霊の申し子、リリアンヌ・エラドリオール――
その名は国中へ広まり、やがてタッセントの歴史に刻まれることとなった。
第十七章・完




