残虐王の出した答え①
とある視点
「わっ、私は、何も知らない…!」
大勢に囲まれたホーレイが、地面にへばりつき、絞り出すように叫んだ。
「なぜ、このようなことをなさるのです…!」
城の片隅にある、殺風景な広場。
ホーレイの叫び声だけが、辺りに響き渡っていた。
「給仕が、死ぬ前に白状した。お前から毒を渡されたとな」
広場の中央で、ゆったりと座る大国の王が答えた。
その後ろに並ぶ黒の騎士たちは、ぴくりとも動かない。
「俺を殺そうとすれば、どうなるか――想像もできなかったのか」
大国の王は、鋭い目をホーレイへ向けた。
「ですから私は、何も――」
「それはもういい。最期に言いたいことがあれば、聞いてやる」
「濡れ衣です!此奴らのことは調べたのですか!」
ホーレイが、端に立つ者たちを睨みつけた。
「ひっ…!」
「か、関係ない!」
「私たちは、何も知らない!」
視線を向けられた大臣たちが、一斉に顔を背けた。
「最期の言葉は、それでいいのか」
「ショウレン陛下が、あなた様を狙ったのでは!」
「……」
ショウレンは何も言わずに、じっとホーレイを見下ろした。
「俺を狙った毒を、自分で飲んだのか?それは、随分と間抜けな話だな」
大国の王が、はっと馬鹿にしたように笑った。
「…じ、自分で、飲んだ?」
ホーレイの目が、大きく見開かれた。
「早くしてくれないか。俺の可愛い姪が、そろそろ支度を済ませて部屋から出てきてしまう」
飽きたように、頬杖をつく。
「…!」
ホーレイが、弾かれたように顔を上げた。
「リリアンヌ殿は、こんな非道な行いを許すはずがない!」
ここぞとばかりに、言葉を続ける。
「あの方がこのようなことを知れば、どれほど胸を痛められることか――」
「安心しろ」
低い声が、ホーレイの言葉を断ち切った。
「リリアンヌは、二度とお前のことなど思い出さない」
大国の王の冷たい目が、さらに細められた。
「お前ごときのために、胸を痛めたりしない」
広場の空気が、一瞬にして冷え切る。
大国の王が片手を上げると、背後に並ぶ黒の騎士の中から、ひとりが進み出た。
「ひっ…ひぃぃぃっ…!」
ホーレイは地面を這い、迫る騎士から必死に逃げた。
「たっ、助けてくれ…!」
端に身を潜めていた女と青年へ、縋るように近づいた。
「い、いやぁぁ…!」
「く、来るな…!」
ユンファとオウワンが、真っ青になって後ずさった。
「そもそも、お前が余計なことをっ…!」
「わたくしは、何も知りません…!」
ユンファは逃げるように振り返り、背後に立つ武官の胸元へぶつかった。
「お、おどきなさい…!」
「……」
武官が、静かに首を振った。
その間も、騎士はホーレイに迫っていく。
その手には、すでに大剣が握られていた。
「そいつは、早く姪の護衛に戻りたいらしくてな」
大国の王が、迫る騎士を指さした。
「すまないが、時間だ」
上げていた手が、ゆっくりと振り下ろされた。
「こんなこと、リリアンヌ殿がっ」
――ドッ…!
ホーレイの声は、鈍い音に掻き消された。
「…ひぃぃぃぃっ!」
「ぎゃあああっ…!」
ユンファとオウワンの悲鳴が、広場に響き渡る。
「……」
騎士は大剣をひと振りすると、何事もなかったかのように王のもとへ戻っていった。
風が吹き抜け、その赤い髪を揺らした。
「ほ、ホーレイが…」
「うっ…」
「ひぃぃ…」
「ああ、安心しろ」
大国の王が、震える大臣たちへ視線を向けた。
「お前らのことは――公に処刑する気はない」
その口元が、わずかに吊り上がった。




