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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十七章/隣国タッセント
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三人の企み

ルイージ視点



「驚くほど、ぬるいな…」

ルイージは、ぽつりと呟いた。



「僕なんて、自ら罰を求めにいってしまいましたよ」

ネウロが、困ったように笑った。



「戦争を止めた働きを、多少は買ってくれたのですかねぇ」



「ぬるいと言うが…ルイージ宰相、あなたは少なくとも一年はセスランディアに戻れない」

ブライアンが、眉を寄せた。



「そもそも、戦争になっていれば、戦後は私がこの国へ派遣されていたでしょう。罰というより…当然の成り行きです」


罰でも何でもない。


ただの仕事だ。



「それなのに…あんなに意気消沈してしまって」

先ほどのやり取りを思い出し、思わず苦笑が漏れた。



リリアンヌは、目に見えて落ち込んでいた。


レックスの手前、これはただの仕事ですとは言ってやれなかった。


それに、反省してほしい気持ちも強くある。


可哀想だが、誤解を解かせる気はない。



「陛下は、明日からの会議も参加しないつもりなのでしょうかねぇ」

ネウロは、自分で淹れた茶を静かにすすった。


ここの茶を、相当気に入ったようだ。



毎日、三人で俺の部屋に集まって一杯飲む。


いつの間にか、それが習慣になっていた。


セスランディア軍が来た今日も、当たり前のように三人で集まっている。


レックスは今頃、ひとり酒でも飲んで寛いでいるのだろう。



「父上は、何を考えているのだろうな…」



「処刑の件ですか?」

ネウロがすぐに尋ねた。



「それもだが。明らかにリリアンヌを使っていただろう」

ブライアンが、不満げに言った。



レックスは、わざとショウレンの前でリリアンヌを抱きしめにいった。


タッセント側に、彼女がどれだけ大切な存在かを見せつけた。


確かに、リリアンヌが使われたことを面白くは思っていないはずだ。


だが、勝手にここへ来たのは、彼女自身だ。



『伯父上は、誰を試しているのですか?』


試しているのは――誰だ?



「大臣たちは…怖かったでしょうねぇ」

ネウロが思い出すように、ふっと笑った。



「あいつら、俺たちのことは散々舐めていたくせに…」

思わず、声に苛立ちが滲んだ。



「本当に殺されるかもと思ったら、彼らも黙るでしょう」

ネウロは小さく肩をすくめた。



「…一人くらい、逃げ出す奴がいると思ったが」

ブライアンは呟くと、くいっとグラスを傾けた。



「刑が決まってからか…?」



「コウランは今、敵味方の兵に囲まれています。逃げるつもりなら、もう手遅れでしょう」

その呟きに、ルイージは静かに返した。



「逃げようとしているかは分かりませんが…ひとり、悪巧みをしている者がいますねぇ」



「悪巧み?」


ネウロの不穏な言葉に、眉をひそめた。



「ええ。それも…かなり大胆なものをね」



「焦らすなよ」



「ブライアン殿下。ショウレン陛下が処刑される可能性は、どれくらい高いのでしょうか?」

ネウロは答えず、ブライアンに問いかけた。



「…かなり高いだろうな」


ブライアンの言う通りだろう。


あのレックスが、何度も喧嘩を売ってきたタッセントの王を許すとは思えない。



ただ――ショウレンが処刑されるとなれば。


…また、彼女の心に、傷がひとつ増えることになるだろう。


前のように感情が昂ってしまえば、それだけでは済まない。


レックスも、そのことは知っているはずだが――



「…まだ、別の道はあるかもしれません」



「どういうことだ?」

今度はブライアンが尋ねた。



「僕はね、陛下の企みが分かる気がするんですよ」

ネウロが、ふっと目を細めた。



「陛下は――生贄を欲しがっている」


絶対に、リリアンヌの前でしないような表情で笑った。



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