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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十七章/隣国タッセント
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潜む企み



「…私はもう、あいつらと関わりたくない…!」


薄暗い部屋で、男が強く首を振った。



「怖気づいている場合ですか。貴方は、処刑されるかもしれないのですよ」

女が、男を窘める。



「嫌だ…!死にたくない!私は、何もしていない!」



「ですから、動くべきでしょう。第二王妃の王子たちは、城下町で精霊の申し子と共に顔を売っています。貴方も行くべきです」



「なんで私が、そんなことをしなくてはいけないんだ…!」


――ガンッ…!


男が、傍にあった座椅子を蹴り倒した。



「とにかく、私は動きたくないし、死にたくない!母上がなんとかしてくれ!」


座椅子を倒したまま、どすどすと部屋から出ていった。


やがて足音が聞こえなくなると、女は深い溜息をついた。



「…まったく」



「あれは、駄目だな」

傍で様子を見ていた老人も、同じように溜息を漏らした。



「私の役に立ちそうもない」



「父上…どうしましょうか。逃げますか?」

女は顔色ひとつ変えず、老人へ尋ねた。



「わたくしはこの生活を気に入っていましたが…命をとられるかもしれないなら、別ですわ」



「お前とルオラは大丈夫だろう。だが…私は、このままでは間違いなく処刑される」



「どうしてでしょう。父上は、国に貢献してきたでしょう?」



「先代王の御代の話だ。この病が広まった責任は、私に負わされるだろう」



「まあ…少しばかり、第三王妃が苦しんだだけでしょう?父上も病に罹り、おつらい思いをしたわ」



「あれは…あそこまで事が広がるとは思わなかった」

老人のこめかみを、冷たい汗が伝った。



「本当に…精霊の申し子がああいう娘でなければ、私は死んでいたかもしれん」



「そうですわね…確かに、自分では何の判断もできないような子でしたわ」

女が、くすりと笑った。



「…?違う。何の判断もできないどころか、周りが彼女の言いなりだ」



「あら…そうは見えませんでしたけれど」



「だから、精霊の申し子に情けをかけてもらえれば、まだ…」



「ですが、その精霊の申し子に近づかせてもらえないのでしょう?」



「そうだ…もう、あと数日しかない」

老人は、苛立たしげに爪を噛んだ。



「頼みの毒も、ほとんど処分された。あとは、ここにあるわずかばかりしか残っていない…」



「…それなら、この毒を使えばよいのではありませんか?」

女は、さらりと言ってのけた。



「使ったところで、すぐに精霊の申し子に治されてしまうだろう」

老人も、淡々と返す。



「この毒は、すぐに命を奪うのでしょう?精霊の申し子が白のちからを使う暇もないはずです」



「一体、誰に使う気だ?ショウレンを消したところで、何も変わらんぞ」



「王違い――ですわ」



「王違い…?」



「狙うのは、我が国の王ではありません」



「…まさか」

老人が、はっと息を呑んだ。



「うまくいけば――まだ、セスランディアを負かすことだってできるかもしれませんわ」

女は、薄暗い部屋でひっそりと笑った。



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