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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十六章/護りたいもの
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精霊の申し子の本気③

ルイージ視点



「…もう、ひとりで行くとは言わないのですね」



「…!」


ルイージの言葉に、リリアンヌは、はっと口元を押さえた。


今さら気付いたように、辺りを見渡している。



「か、勝手に、ごめんなさい。あの、そういうつもりでは」



「ここまで来て、謝りますか?」

ネウロが、横からリリアンヌの顔を覗き込んだ。



「とても格好良かったのに、今ので台無しですよ」



「そうじゃなくて…コウランまでついてきてほしいだなんて、私――」



「言っただろう。君が何を選ぼうとも、味方でいると」

ブライアンはリリアンヌの肩にそっと手を添え、再び椅子へ座らせた。



「私も行く。戦わずに済む可能性が残っているのなら、試す価値はある」



「…ブライアン殿下。まず、あなたたちが王都から出ることは、絶対に許しませんよ」

ルイージは、すかさず釘を刺した。



「お前が許さなくとも出ることは可能だ」

窓辺から、淡々とした声が飛んできた。



「……」



「あの…でも、できればルイージ宰相にも分かってもらいたいです」

キリを睨みつけるルイージに、リリアンヌが慌てて割って入った。



「お話ししてくださったルイージ宰相に、賛同してもらいたいです」



「…どうやってコウランまで向かうというのですか」

ルイージは、静かに視線を戻した。



「アッシカル領一帯には、すでに我が軍の目が行き届いています。あなたが川を渡れば、すぐに見つかりますよ」


そうして、そのままレックスのもとへ連れて行かれるだろう。



「…伯父上を説得します」



「絶対に無理です。全兵力を使ってもあなたたちを止めるでしょう」



「行くなら内密に…ですか」



「…その前にまず、私はここに大量の兵を呼びますけどね」


それでも、この一行を止められる気はしなかったが。



「…アッシカル領の北側には、ホウレンベルク領がある」

ブライアンが口元に手を当てて呟いた。



「国境となるガーデラ川は、一部がホウレンベルク領にも掛かっている。…そちら側なら、まだアッシカル領より手薄だ」



「ホウレンベルク領…?どこかで…」

リリアンヌが、首を傾げながらブライアンを見上げた。



「…あなたが監獄塔から解放した、ブルックの故郷です」



「…!」

ぱっと、こちらを振り返った。



「ブルックは、どこにいるのでしょうか?」



「騎士の身分を剥奪され、王都も追放されましたから、恐らくホウレンベルク領にいるでしょう」


…どこまでも甘い処罰だ。


結局ホウレンベルク家自体は、何の咎めも受けなかった。



「もし会えたら、協力してくれるかな…」



「見つけて、脅せばいい」


リリアンヌの呟きに、キリがすぐに答えた。



「それに僕の目があれば、我が軍の抜け穴を探すことは容易です」

ネウロが、右目を青く光らせた。



「…アッシカル領は、すごいことになっていますねぇ」



「ネウロ、すごいことって?」



「…ああ、失礼しました。国境の川を挟んで、両国の兵が大勢集まっているということです」



「まだ…動きはない?」



「ええ。今のところは」



「……」

ルイージは、苦々しげに二人を見比べた。



千里眼のちから――


本当に、とんでもないちからだ。



「…そのお前のちからで、タッセントの王の目的を探ることはできないのか?」

ふと気になり、尋ねた。


王の動向を追えれば、何か分かるかもしれない。



「僕の体力が持ちませんよ」

ネウロは小さく肩をすくめて答えた。



「せいぜい、セスランディア内を十分ほど見ることが精いっぱいです。まして、隣国にいる王を探るとなれば…僕は、しばらく使い物にならなくなるでしょうね」



「……」


それだけでも、かなりのものだが。



「…タッセントへ潜入したとして――問題は、そこからです」


いつの間にか自分まで、行くことを前提に話している。



「タッセント内で兵に見つかれば、望まぬ戦いを避けられなくなりますよ」



「事前に、タッセントの王へ行くことを知らせるのはどうでしょう」

リリアンヌはすぐに返した。



「…今、国境は我が軍が見張っていると言ったばかりでしょう」

ルイージは、呆れ混じりに答えた。



「早馬や使者を出したところで、すぐに止められますよ」


ましてや、リリアンヌからタッセントの王への使いだと分かれば、すぐにレックスの耳にも入るだろう。



「鷹を使う?」

ずっと黙っていたビッケが、ぽつりと口を開いた。



「空なら、止められないでしょ?」



「た、鷹…?」

思わず、聞き返した。



「でも、ここからタッセントまで飛ばしたら、何時間もかかるでしょう?ビッケの体力が持たないよ」

リリアンヌが振り返って尋ねた。



「一羽を飛ばすだけなら、なんとかなるよ」



「それなら、先にタッセントへ近づくべきだ。ここで返事を待っていては遅い」

キリが素早く言った。



「じゃあ、ホウレンベルク領に入ってからかな?」



「それでは、ぎりぎりだな…せめて、ザンビア山脈を越えたくらいか」

ブライアンまで会話に加わった。


勝手に、話がどんどん進んでいく。



「待ってください…鷹を使うとは一体、何ですか?」

ルイージは困惑気味に口を挟んだ。



「ビッケのちからで、動物に協力してもらうことができるのです」

リリアンヌが、あっさりと答えた。



「鷹に書状を運んでもらって、王の許可が下りれば、堂々とタッセントを歩くことができますよね?」



「……」

思わず、頭を抱えた。


ただの獣人族の子だと思っていたのに…彼もまた、ちからを持っている。



これでは、本当にコウランへ行けてしまう。



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