↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十五章/大好きな人たちと大切な時間を
430/562

久しぶりの大聖堂

リリアンヌ視点



「リリアンヌ殿下、お初にお目にかかります」


聖職者の格好をした壮年の男性が、穏やかに笑ってお辞儀した。



「大教主を務めております、ゴーシュ・パルミアと申します。お会いできて、大変光栄です」



「ゴーシュ大教主、お初にお目にかかります。こちらこそ、お会いできたことを嬉しく思いますわ」

リリアンヌは、その場で丁寧にお辞儀した。



「甥のネウロが世話になっていると聞いています。どうか、これからも仲良くしてやってくれませんか」



「いいえ。ネウロには、こちらがお世話になっているのです」



「そうなのですか?甥は、あまり自分のことを話す方ではありませんので。リリアンヌ殿下に失礼なことはしていないか――」



「…ゴーシュ大教主。今日は、私のことよりも」

リリアンヌは、困ったように微笑んだ。



「本日の主役は、私の兄とガブリエルお義姉様です。式では、どうぞよろしくお願いします」



「ああ、いや、とんでもない!本日の祝福の言葉は、アイラが述べるのですよ。殿下は確か、アイラと知り合いでしたでしょう」



「はい。式前にできればご挨拶をと思っているのですが…可能でしょうか?」


そのために、今日は早めにやってきた。



「ええ、ええ、もちろんです。それでは、霊拝師(オランス)たちの控えの間へご案内いたしましょう」

ゴーシュ自ら、建物の中へと先導した。



「えっ…ゴーシュ大教主が案内してくださるのですか?」



「ええ、こんな名誉な役を務められて、嬉しく思います」



「ありがとうございます…」

リリアンヌはゴーシュの隣に並び、アランフォースも後ろに続いた。


長い廊下の突き当たりに、今日式を行う本堂の大きな扉が見える。


その手前で廊下を曲がっていく。



「リリアンヌ殿下…もしよろしければ、もっと大聖堂に訪れてください」

その辺りでゴーシュが口を開いた。



「…お仕事の邪魔ではないでしょうか?」


許されるなら、霊拝師たちに会いに来たいけれど。



「とんでもない!あなた様がいらしてくだされば、彼女たちも喜びます。特に若い子たちは、リリアンヌ殿下のことをいつも話しておりますから」



「それは…光栄です」


どんな話をしているのだろう。



「無理に、ちからを使わなくて結構です。それでも、彼女たちのために会いに来てやってはくれませんか」



「本当に…いいのでしょうか?」



「ええ!いつでも出入りできるようにしておきます」



「…ありがとうございます」

リリアンヌは、戸惑うように礼を言った。



スワハマの時と、あまりにも対応が違いすぎる。


許可がなければ絶対にここへ入れなかったし、あまり…歓迎されていなかった。


これは、社交辞令じゃないと思ってもいいのだろうか。


ネウロは、ゴーシュ大教主のことを、親戚の中ではだいぶましだと言っていた。


ましって…なんだろう。



「さあ、どうぞ」


考えているうちに、控えの間に着いてしまった。



「リリアンヌ殿下!」


「お久しぶりです!」


扉をくぐると、霊拝師たちが、わっと周りに集まった。



「ミュラ、ハンナ、ソフィ、ルノーラ。久しぶりね」



「な、名前を覚えていてくださっているなんて…!」

ソフィが、感極まる声を上げた。



「当たり前でしょう。ここで、どれほどみんなにお世話になったと思っているの」

リリアンヌは、おかしそうに笑った。



「一段とお綺麗になられて…」

ミュラが、感嘆の息を漏らした。



「リリアンヌ殿下、また大聖堂にいらっしゃってください」

ルノーラが、にっこりと言った。



「そうですよ!この四年間、とても寂しかったです」

すぐにハンナが続いた。



「…本当?」



「本当です!」


「目の保養…じゃなかった、殿下がいてくださったら、やる気も出ますから!」


「私、リリアンヌ殿下が来る日が、楽しみで楽しみで」


霊拝師たちが一斉に返した。



「ふふっ…」


このやり取りが、懐かしい。


心なしか、前より距離も近づいた気がする。



「最近は、何をなさっているのですか?」


「村へ行かれたと、噂で聞きました」


それからも、四人から次々と質問が飛んできた。


ひとつずつ、答えていく。



「…そろそろ、私にも譲ってくださるかしら?」


ふいに、周りを囲む霊拝師たちの後ろから声がした。



「…!アイラ様!」

リリアンヌは、ぱっと顔を綻ばせた。



「リリアンヌ殿下、お久しぶりです。…ますますお綺麗になられました」

アイラは一礼すると、優しく微笑んだ。



「アイラ様も…相変わらず、お綺麗です」


式用なのか、いつもの格好より豪華だ。


白と金の華やかな衣装に、美しい桃色の髪がよく映えていた。


目を奪われるほど綺麗だ。



「あれから…お体の具合は、いかがでしょうか」

アイラは顔を寄せ、そっと囁いた。



「おかげさまで、とても元気です」



「…痛みませんか?」



「…はい、大丈夫です。アイラ様、今日は兄たちのために、祝福の言葉をくださると伺いました」

リリアンヌは、それとなく話題を変えた。



「ええ。とても光栄な話です。精いっぱい、務めさせていただきますね」



「アイラ様の祝福の言葉、楽しみにしています」



「り、り、リリアンヌ殿下ぁ!」



「!」

不意に横から腕を引かれた。



「マコ!」



「もお~…!本当に、会いたかったぁ」

半泣きのマコが、腕にしがみついていた。



「マコ…!リリアンヌ殿下が驚いているでしょう」



「アイラ様、大丈夫です」

リリアンヌはそっと返すと、マコに顔を向けた。



「マコ、久しぶりだね」


つい、いつものような喋り方になってしまう。



「久しぶり、じゃないですよ!」

マコは腕にしがみついたまま、小声で囁いた。



「どれだけ心配したことか…」



「ごめんね…もっと早く会いに来れば良かった」


マコとは、ザンビア砦以来だ。


最後に見た時は、青褪めた顔をしていた。



「これからは、もっと大聖堂へいらしてくださいますね!?」



「…うん、分かった」


みんなに、ここまで言ってもらえるならば。



「あ…ごめんなさい。私、王族の方になんてことを」

マコが、はっと手を離した。



「それは、いまさらじゃない?」

思わず、くすっと笑った。



「そんな素敵なドレスに、皺をつけるところでした。リリアンヌ殿下、とってもお綺麗です」



「ありがとう。マコも、式の間は何かするのかな?」


結婚式の流れを、よく分かっていない。



「祝福の言葉を読むアイラ様の傍らで、祈りを捧げる役です」

マコが胸の前で両手を組んだ。



「立派にお役目を務めてみせます」



「じっくり見させてもらうね」

リリアンヌは、くすっと笑って返した。



ふと扉の方を見ると、ゴーシュがにこにこと微笑みながら立っていた。


まさか、待ってくれていたなんて。


それに、いつまでもここにいては霊拝師たちの邪魔になってしまう。



「アラン…」

リリアンヌは後ろへくるりと振り返り――



「…あ」

言葉を止めた。



「…お仕事中に失礼いたしました。アランフォース様、また今度」

アイラがリリアンヌに気付き、アランフォースから一歩下がった。



「ええ…また」

アランフォースもアイラに一礼して、再び護衛の姿勢に戻った。



「リリアンヌ殿下…もう行かれるのですね」

アイラが再びこちらに歩み寄った。



「…あ、はい」

リリアンヌは、こくりと頷いた。



「…アイラ様。またあとで、よろしくお願いします」

最後に深々とお辞儀して、控えの間をあとにした。



扉の方へ向かうと、ゴーシュが「こちらへ」とさらに廊下を進んでいった。


こんな奥まで来るのは、初めてだ。



「式までは、まだ少し時間があります。どうぞあちらの客間で、ごゆっくりお過ごしください」

ゴーシュの視線の先に、開け放たれた扉があった。



扉の前には、国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の騎士が四人も立っている。


あそこが王族用の客間なのだろう。



室内には、まだ誰もいなかった。


寛げそうなソファが並び、テーブルの上には軽食がずらりと用意されている。



「それでは、私はそろそろ戻るといたします。のちほど、お目にかかりましょう」

ゴーシュは穏やかに言って一礼すると、客間をあとにした。



「……」

ゴーシュを見送ると、リリアンヌは部屋の奥にある大きな窓へ向かった。


じっと、外を眺める。


ここは、大聖堂の端にある部屋みたいだ。


昔、アランフォースに抱えられて登った坂が遠く見えた。



「リリアンヌ殿下」



「はいっ…」


すぐ近くから聞こえた声に、びくりと振り返った。


真後ろに、アランフォースが立っていた。



「え…ど、どうしたの?」


てっきり、扉の前で立っていると思ったのに。



「…何か怒っていますか?」

アランフォースは、わずかに目を細めた。



「…どうして?」

リリアンヌは、目を丸くして尋ねた。



「何が気に障ったのです」



「何も、気に障ってない」

すぐに首を振った。



「控えの間を出た時から、変です」

アランフォースは目を逸らさないまま、一歩近づいた。



「…でも、何も怒ってない…」

思わず、じりっと後ろへ下がった。



「では、なぜ私を避けるのです」



「さ、避けてない…」



「言っていただかなければ、分かりません。何が引っかかったのです」

アランフォースは、さらに一歩近づいた。



「……」

リリアンヌは目を伏せ、泣きそうになるのを堪えた。



嫌だ。


何が引っかかったかなんて、絶対に言いたくない――



「…何をしている」



――ドゴォッ…!



低い声が聞こえたと同時に、鈍い音がすぐ傍で響いた。



「わっ…!」

咄嗟に、ぎゅっと目を瞑った。



目を開けると、そこにいたはずのアランフォースがいなくなり、


代わりに、片足を上げたサイラスが立っていた。



「おっ…お兄様…!?」


どこから現れたのだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。