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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十五章/大好きな人たちと大切な時間を
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兄の結婚相手②

リリアンヌ視点



「ああ、ガブリエル嬢とお会いしましたか」


翌日、予想外のところからガブリエルの話が聞けた。



「ネウロ、ガブリエルお義姉様を知っているの?」



「おお…そうか、あなたのお義姉様になるのですねぇ」

ネウロが、どこか面白そうに呟いた。



「知り合いではありませんが、ヒュージライ家と我が一族パルミア家は、仲が悪いですからね。自然と、彼女の噂は耳にしていました」



「え、そうなの?」



「ヒュージライ家は、一代前から力をつけてきた新興貴族です。優秀な方たちも多くいらっしゃり、我が古き良きパルミア一族は、それが面白くない」

ネウロは、ふっと嘲笑を浮かべた。



「ですから正確には、勝手にパルミア家がヒュージライ家を目の敵にしているだけです」



「なるほど…」


やっぱり、派閥関係は複雑だ。



「まあ…僕個人は、彼女を大いに買っていますけどね」



「優秀な方なのかな」


兄も、とても優秀だと言っていた。



「というよりは、男ばかりの場で孤軍奮闘している、その姿勢を評価しています。男たちの中には、彼女を面白く思わない者も多いでしょうからね」



「どうして?」

リリアンヌは、きゅっと眉を寄せた。



「男は、嫉妬心が強いものです。自分より女性が評価されることが、気に入らない」

ネウロは、軽く肩をすくめた。



「全然…意味が分からない」


女性が評価されたら、何が嫌なのだろう。



「だからこそ、サイラス殿下はガブリエル嬢をお選びになったのかもしれませんね」



「どういうこと?」



「閉鎖的な文官たちを変えるかもしれないと、噂されています」



「…!それは、すごいわ」

リリアンヌは、ぱっと目を輝かせた。



「そんなに期待されているの?」



「女性が文官として認められるには、現王のもととはいえ、相当な努力が必要だったでしょうから」



「そうなのね…」


六塔の薬療院の件で、各部の文官たちがうまく連携を取れていないことは身に染みて分かった。


それに文官は大半が保守派だと、ずっと前にルイージから聞いている。


そんな中で…ガブリエルは働いている。



「…ネウロは、文官になる気はないの?」

ふと、気になった。



「…どうして、急にそんなことを?」

ネウロは、苦笑を浮かべて尋ねた。



「ネウロみたいな考えの人が文官にいたらいいなって、思ったから」



「僕みたいな考え、ですか?」



「派閥とか、身分とか、性別とかに縛られないで、きちんと相手を見ることができる人」



「…それを貴族の間では、変わり者と言うのですよ」

ネウロは、困ったように微笑んだ。



「…難しいね」


この世界では、ネウロの考えの方が珍しい。


その価値観を変えることは、きっと私にはできない。



ガブリエルは…すごい。


一体、どれほど窮屈な思いをしているのだろう。



「リリアンヌ、待たせたな」


「!」


扉から、ブライアンが入ってきた。



「すまない…今日は十二塔に行くから、もっと早く来たかったのだが」



「ブライアン、大丈夫ですよ。今日は、買った薬草の苗を渡しに行くだけですから」



「苗は、馬車の中か?」



「はい」

リリアンヌは、返事をしながらソファから立ち上がった。



「今日もデートですか。羨ましい」



「だから、デートじゃないってば」

くすっと苦笑が漏れた。



「ネウロ、今日も診てくれてありがとう。お仕事、頑張ってね」

手を振り、ブライアン、アランフォースと一緒に客間をあとにした。



町民のような格好のまま、王城の廊下を進んでいく。


馬車に乗り込むなり、ブライアンが尋ねた。



「昨日、サイラスの婚約者が挨拶に来たのだろう?」



「はい、お会いしました。真面目で、とても聡明な方でした」



「そうだな。ガブリエル嬢は、実際に優秀だ」



「!ブライアンも、ガブリエルお義姉様を知っているのですか?」



「社交の場でよく顔を合わせるからな。彼女は…いつも、淡々と最低限の挨拶だけをしてくる」

思い出したのか、ブライアンは小さく苦笑した。



「社交の場…」

リリアンヌは、ぽつりと繰り返した。



「君もあと一年と少しで、嫌というほど行くことになる」



「…やはり、出なくてはいけないのでしょうか?」



「王族としての仕事のひとつだ」

ブライアンは再び苦笑を浮かべた。



「それに、社交に慣れるために、最近は令嬢たちとの茶会にも出ているのだろう」



「…はい」


月に何度か、母が令嬢たちとのお茶会を予定に入れている。



「君は、町の女性たちとは喜んで話しているだろう?」

ブライアンは、わずかに首を傾げた。



「全然…違うもの」

リリアンヌは小さく呟き、そっと目を伏せた。



町の女性たちは、緊張していることはあっても、裏表なく話してくれる。


令嬢たちは…どうしても私に気を遣ってしまう。


どこまでがお世辞で、どこからが本気なのか、さっぱり分からない。


無表情で淡々と返してくれるガブリエルの方が、よほど気が楽だ。



できれば、文官としてどんな仕事をしているのか、もっと聞いてみたい。


でも…あまり踏み込んでほしくなさそうにも見えた。



二人の結婚式が終われば、私は、エラドリオール邸を出る。


だけどそのあとも、授業がある間は週に何度か通う予定だ。


やっぱり…家を出たあとまで何度も顔を出したら、気を遣わせてしまうだろうか――



けれど、食事会から一か月後、


ガブリエルは、意外な形でこちらに接触してきた。



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